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(レポ&写真) [修斗] 5.4 後楽園:植松TKO負け。中蔵・大沢が金星

サステイン "クリムゾン・プレゼンツ プロフェッショナル修斗公式戦"
2005年5月4日(水/祝) 東京・後楽園ホール
認定:インターナショナル修斗コミッション

  レポート:若葉り子  写真:小林秀貴  【→カード紹介記事】 【→掲示板スレッド】

第7試合 メインイベント ライト級 5分3R
○ギルバート・メレンデス(アメリカ/シーザー・グレイシーアカデミー/世界2位・環太平洋1位)
×植松直哉(クロスポイント吉祥寺/世界8位・環太平洋6位)
2R 4'30" TKO (レフェリーストップ:左眉のカット)


 昨年末の代々木大会で飛ぶ鳥落とす勢いの高谷を下し、衝撃の修斗デビューを飾ったメレンデス。とは言え目の肥えた修斗ファンを納得させる為には、今回の実力査定試合でのインパクトある勝利が期待される。一見ウェルター級では?と思わせるその体躯を迎え撃つ小さな実力者、植松。しかし身長差をモノともしない彼の戦術は知られたところ。ハイレベルな戦いへの期待が膨らむ中でゴング。

 1R、メレンデスが勢い良くパンチで突進。ダウンを余儀なくされる植松。いきなりの展開にどよめく客席。なんとか蘇生した植松に容赦無いパンチを見舞うメレンデス。かいくぐるように片足タックルを慣行した植松を捕まえるとリフトしながら強引にテイクダウンする。下からの仕掛けも見て見ぬふりか、パワーで圧倒するメレンデス。みるみる植松の顔面が赤く染まり、鼻からは出血する。
 なんとか活路を見出したい植松はオモプラッタ狙いで右腕にしがみつくとがっちり両足でフック。右腕を獲られたまま左腕を植松の首に回して背負う格好になったメレンデス。だが五味の大ファンで彼のスタイルに近づこうと努力していると語るこのグレイシー系新世代ファイターは、パワーリフティングのように一度立ち上がると、植松を自分の体重で潰すように背中からマットに叩きつけ、どっかと植松の腹に座って重たいパンチを落とし続ける。それでもフックを解かない植松に、会場からは声援が飛ぶ。
 残り1分程で、なんとか回転して脱出したメレンデスが猪木アリ状態からクローズガードの植松にパンチを振り落とす。パンチの豪雨の中で足関節を狙う植松だがここでゴング。顔面を赤く腫らし、鼻血が滲む植松のダメージが見て取れる。

 2R、またしてもメレンデスのパンチが炸裂。植松もかいくぐりながら胴タックルを放つが、メレンデスは倒れずに強引にスタンドに戻す。今度は片足タックルからギロチンを狙いながら引き込む植松。だが逆にメレンデスは植松をコーナーに押し込んで、クローズガードの状態ながらも打撃を落とし続ける。リング中央で、メレンデス上、植松下での攻防が続く。
 聞いているこちらが苦しくなるような破壊音を伴うパンチの中にありながら、パスを許さずに次の展開を狙う植松だったが、左の眉をカットしたため、ドクターチェックが入る。リングドクターが慎重に傷口を診る間も植松は「アタマでしょ?アタマでしょ?」と“打撃に よるカット”ではなく“頭部やヒジが当たったことによるバッティング”を主張し、まだ闘える意志をアピールする。しかしダメージが大きいと判断され、ゴングが鳴らされた。

 次々と選手の怪我によりカードが変更になり、開始時間も45分押しとなった今回の大会。空席の目立つ会場からは「早く始めろ!金、払ってんだぞ!」の怒号も飛び出した。試合開始前、坂本一弘サステイン代表がリング上から観客及び関係者に向けて、開始時刻の遅れ、カード変更に関する謝罪をした。呪われているのでは?と思うほどの厳しい状況の中ではあったが、結果的には試合内容に助けられた格好となった。メレンデスという逸材、バンタム、フェザー級、女子部門における新展開の予感・・・。苦境の中で萌芽した数々の可能性を今後の大会へと繋げて行くこと、それが選手・観客への恩返しになるはずだ。

第6試合 セミファイナル 58kg契約 5分3R
○マモル(シューティングジム横浜/バンタム級世界王者)
×ストニー・デニス(アメリカ/フォーシーズンズMMA/フェザー級米大陸6位)
1R 1'36" TKO (レフェリーストップ:ハイキック)


 漆谷がヒザの負傷により急遽欠場。このところキレのある白星が見当たらないマモルが、急遽オファーを受けアメリカから参戦のストニー・デニスと対戦。いつもより巻きはキツめに、ボリュームは大きめにキメたアフロのマモル。対するデニスは星条旗柄のトランクスがベタで少々野暮ったい印象だが・・・。
 1R、開始早々仕掛けたのはデニス。アグレッシブに鋭いパンチを見せる。様子見のマモルに微笑みながら舌を出し、カモ〜ン!と挑発してみせると、ボクサースタイルで素早く様々な角度からのパンチを繰り出しマモルを翻弄する。まさかアップセットか?と予期せぬ展開に会場もざわつく。
 だがフェイントのハイを散らしながらマモルが組み付くと、なんとフロントチョークを狙って飛びついてみせるデニスだったが、見せ場はここまで。フックが解けてスタンドでのさし合いからの離れ際、一瞬の隙を突いたマモルの左ハイが側頭部にクリーンヒット。デニスは衝撃音とともに撃沈。文句なしの失神KOでマモルが久々にスッキリ白星で会場を沸かせた。
 ちょうどこの日、マモルに対戦要求していた井口摂のプロ修斗デビューと、7月後楽園大会での久保山誉戦が発表されたばかり。試合後の勝利者インタビュー中、井口の件に話が及ぶと「井口? 誰? それ?」とかわすマモル。それを客席から虎視眈々と見つめる井口。観客から煽られてマイクを手にすると「オイ、コラ、ハゲ!オレが井口だ、覚えとけ!」と挨拶する。「挨拶するなら菓子折りくらい持って来い」と王者の余裕で答えるマモルだった。

第5試合 ウェルター級 5分3R
×レイ・クーパー(アメリカ/ジーザス・イズ・ロード/世界5位・環太平洋2位)
○中蔵隆志(シューティングジム大阪/環太平洋10位)
2R 1'14" TKO (レフェリーストップ:右まぶたのカット)


 打撃でのフェイントで出方を見る両者。中蔵が組付いてコーナーへ押し込み、さらに豪快な投げでテイクダウンを奪う。しかし素早くスタンドに戻し、離れながらヒザとパンチを放つクーパー。その際、中蔵にローブローが入りタイムストップ〜スタンドでの再開。再び組付くと今度はクーパーがテイクダウン、猛烈なプレッシャーをかける。隙をかいくぐり右手を獲ろうとする中蔵だが、クーパーはあれよあれよとハーフからオープンに移行し、容赦無くパンチを落とす。なんとかスタンドに戻した中蔵だったが、またしてもクーパーがグラウンドに引きずり込んでハーフに。中蔵は下からアームロックを狙うが、クーパーが中腰から片手で的確なパンチを落とす中でゴング。
 2R、中蔵が積極的に打って出る。ローからのワンツーが、クーパーの顔面にヒット。右まぶたをカットしたクーパーにドクターチェックが入る。スタンドでの再開。打撃に勝機を見出した中蔵がクーパーの首を捉えると渾身の力を込めてヒザを叩き込む。更に肩パンチでラッシュをかけるとクーパーの顔面から赤い飛沫が。ここで再びドクターチェックが入り、試合続行不可能と判断。中蔵が初の国際戦を衝撃のTKOで飾った。
 「初めまして。なかくらたかしです。ボクの名前を覚えてください。押忍。」と大金星を手土産に後楽園ホールのファンにアピールした。

第4試合 修斗グラップリング・スペシャルマッチ 5分1R
ー中井祐樹(パレストラ東京/元ウェルター級王者)
ー佐藤ルミナ(K'zファクトリー/ライト級世界3位・環太平洋王者)
勝敗無し


 マッチメイクで難航した大会が産んだ副産物とも言うべき豪華マッチ。中井は柔術着の上のみ着用。対するルミナは通常のスタイル。柔術黒帯VS環太平洋チャンプ、二人のカリスマの対決に観客は前のめり。5分間ランニングルール、フリータップ、判定無し、と事実上はエキシビジョンであったが、その内容は緊迫したものとなった。
 中井がルミナの両足を取って引き込むと、するりとかわして飛び込みながらパスを狙うルミナ。中井の上をクルクルと水平に回転する華麗 なムーブに会場からは溜息混じりの歓声。バック〜サイドを奪うと中井の左腕を取り、足でフックし横三角を狙う。中井もがっちりガードし団子虫のように噛み合う両者。ブレイクがかかると拍手が起こる。
 中井が右足を狙って引き込んで下になるが素早く逃れるルミナ。残り僅か。ルミナがクローズガードの中井を抱え上げるとバスターのようにマットに降ろし、離れ際に左足首を取るとアンクルホールドを極めにかかる中でゴング。ハイレベルな攻防を見せた両者に、会場からは惜しみない拍手と歓声が送られた。

第3試合 フェザー級 5分2R
×秋本じん(秋本道場JUNGLE JUNCTION/世界5位・環太平洋4位)
○大沢ケンジ(和術慧舟會A-3)
判定0-2 (二瓶20-20/若林19-20/鈴木18-20)


 まだクラスBだったの?といった印象すらある大沢ケンジ。上位ランカーの秋本に挑むチャレンジマッチ。
 1R、大沢が積極的に打って出る。それに合わせて胴タックルでぶつかって行く秋本。しかし大沢はテイクダウンを許さず、ロープ際〜コーナーでのスタンドの挿し合いに。お互いボディにヒザを叩き込む。ブレイクから同じ展開が続いたところで秋本がひねりの効いた投げでテイクダウンを奪い、 ハーフガードから登りながらパンチを落とす。対する大沢も下から足を効かせて阻止する中でゴング。
 2Rも1Rと同様の展開に。大沢の打撃に秋本が合わせてタックル〜投げを放つ。しかしすぐに立ち上がる大沢。しつこくタックルに来る秋本の戦法を見て取った大沢が、効果的にヒザを出し、秋本の顔面にヒットさせる。残り2分、片足タックルでしがみつく秋本を潰して怒涛のパンチを降らせる大沢。秋本が下から仕掛けようとするがグラウンドには付き合わず必死の打撃で振り払う。ブレイク〜スタンドでの再開から秋本が力を振り絞り組み付いて行く中でゴング。判定2−0で大沢が念願のチャレンジマッチをものにした。
 常に上に対して吠え続けながらコンスタントに試合をこなして実績を上げてきた大沢。「次に修斗に上がる時には、マルコ・ロウロをぶっ飛ばしたいと思います!」とリング上でアピールした。彼に異議を唱える者はいないだろう。膠着状態にあったフェザー級戦線に風穴をぶちあけた試合であった。

第2試合 バンタム級(新人王決定トーナメント一回戦) 5分2R
○赤木敏倫(総合格闘技道場コブラ会)
×菅原雅顕(和術慧舟會千葉支部)
1R 0'36" 一本 (ヒールホールド)


 ゴングと共に、リングに体育座りを決め込む赤木。!?。更に寝転がって、グラウンドへと誘う。菅原が打撃でかぶさると、待ってましたと左足を掴んで極めに行く。激しくパンチで抵抗する菅原だったが堪らずタップアウト。36秒で赤木が新人王トーナメント初戦を突破した。
 勝者にしては余りにも控え目なファイティングポーズ、 フェミ男風なルックス。一方で東京での出稽古先の中井祐樹に「天才」と言わしめる。そのキャラクター、実力は未知数だ。

第1試合 女子ミニマム級 5分2R
○しなしさとこ(フリー)
×パメラ・ヴィッツ(オランダ/リンホージム)
1R 2'14" 一本 (腕ひしぎ十字固め)


 念願の修斗デビュー戦、赤のムエタイトランクスで臨むしなし。苦手な打撃を克服するために、タイ修行まで敢行した。スタンドでの見合いから試合開始。ワンツーローのパメラの打撃に上手く合わせたしなしがタックルでテイクダウン。すかさず左足を獲るとサンボ仕込みのムーブでアンクルホールドを狙う。しかしパメラはしなしの顔面めがけてパンチを振り落とす。女性ならではの関節の柔らかさ、部位の小ささも手伝ってか、なかなか極め切れないしなしだったが、脱出して隙を見せたパメラから速攻マウントを奪うとパンチを落とす。後はしなしの独壇場。パメラの左腕を捉えて腕十字へ。一本勝ちで修斗デビュー戦を飾った。
 「顔を殴られるのはイヤ」と打撃を敬遠していたしなしはもういない。赤く腫らそうとも鼻血を滲ませようとも、苦手なものを克服して得た勝利に喜ぶ笑顔はいつにもまして輝いていた。対戦相手選びには依然苦労しそうであるが「ジョシカク」の括りの外で、男子選手と肩を並べる「修斗女子部」を発展させるべく、藤井恵とともにレギュラー参戦が期待される。

Last Update : 05/05 00:43

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