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(レポ&写真) [ZST] 5.3 お台場:日本組、前田の目前でレミーガから一本

ZST事務局 "ZST.7"
2005年5月3日(火/祝) 東京・Zepp Tokyo

Text & Photo 井田英登

 

第7試合 メインイベント フェザー級 タッグマッチ 15分3本勝負
○所 英男(STAND)&勝村周一朗(K'z FACTORY)
×レミギウス・モリカビュチス&エリカス・ペトライティス(リトアニア)
13'30" 三角締め(勝者:勝村/敗者:レミギウス)


昨年11月のGP一回戦で激突した所と勝村がコンビを結成。今回は同じコーナーで華を争った。先発の所はノーグローブで登場。先日、ネットワーク視察でリトアニアを訪れた前田日明がリングサイドに陣取る。この視察で前田の一押し選手とされたレミーガに、今回新たに主催者が付けたキャッチフレーズは、“前田日明の小さな恋人”。そんな“相思相愛”を引き裂くように、 ZST日本チームが前田の目の前で、大仕事をやってのけた。

まず先発の所は、「前から一度使ってみたかった」という掌底攻撃で打って出る。リトアニア先発のペトライティスは、これをパンチで迎撃。いきなりロープに押し返される所。このいきなりのピンチに、飛びつき十字の速攻をみせる。ペトライティスはこれを楽々と持ち上げてコーナーに運び、タッチプレーで切り抜けるという、まさにタッグならではのシーンが現れる。

リトニアチームがレミーガに交代すると、日本チームも勝村に。距離を測り合う両者だが、レミーガが強烈な飛びヒザで勝村を強襲。受け止めた勝村は、これをキャッチして上のポジションを奪う。…このように、ちょっと流れを書いただけでもかなりの分量になってしまうようなスピード感のある攻防が序盤から展開、それまでおとなしめだった客席も一気にヒートアップしていった。

基本的には敵のリズムをよく知り抜いた所が、ひたすら打撃で押し込んでくるリトアニアチームの攻撃を受け流し、いよいよヤバくなってくると勝村に繋ぐ展開。

前回ZST初出撃の所戦では秒殺という結果で終わってしまった勝村だが、今回はいい意味での居直りが見え、堅さが取れた早い動きで初めてのタッグルールにも適応。鋭い打撃を売りにしたリトアニアチームともパンチで渡り合い、確実にテイクダウンを重ねて、リトアニア組にペースを握らせない。時にピンチに相手に背を向けて逃げ出すといった、かつてのイリホリコンビを思わせるユーモラスなタッチプレーを見せるが、それも“沈黙の半年の間“に自ら選び取ったプロらしさなのかもしれない。

一方、リトアニアチームもこのタッグスタイルにはすっかり慣れっこになっており、こちらはスポーティブな形でチェンジワークを上手く利用してくる。特にリーダー格のレミーガは、中盤、下になった所に足関を取られても、コーナーまで所の身体を引きずってタッチ。まったく寝技に付き合わなくてもタッチで逃げられる、このルールを完全に味方につけている。

だが、最大の見せ場を作ったのは“シューター”勝村。リングサイドで見守る前田日明を意識したのか、修斗のリングではまずありえなかったニールキックという大技を繰り出す。これは空を切り、逆にグラウンドの勝村の顔面に危険なレミーガのミドルが飛ぶ。しかし間一髪で躱すと、組み付いてテイクダウン。起き上がろうとするレミーガをフロントチョークに捉え、低空の飛び付き、そのまま三角締めへ移行する。

なんと、ZST参戦決定以来「あんな化け物、死んでも闘いたくない」と忌避していたはずのレミーガから、殊勲のタップを奪ってみせた。こうなるとイケイケムードで、完全勝利を狙った日本チームは、所の奮闘を期待することになる。しかし残ったペトラディスもタフで、所の掌底を浴びてぐらつきつつも、逆にパンチで押し返してくる。残り時間二分足らずを、所→勝村→所とめまぐるしく入れ替わりつつ攻撃した日本チームだったが、仕留めきれず終了のゴングを聞いた。

この日のヒーローとなった勝村は試合後マイクを取り「レミギウスが目当てで見に来たお客さんも多いと思いますけど…ごめんなさい、一本とっちゃいました!でも、僕は基本的に60キロの選手なんで70キロは無理です、ごめんなさい(笑)理想的な勝ち方は二人で一本づつとるのが良かったんですけど、誰かさんが取りきれなかったんで(笑)今日はチームという事で、コーナーに居てこんな頼りなる相棒は居ないと思いました。でも僕も格闘家ですからこんな強い選手とは同じコーナーに居るより、違うコーナーでまた闘いたいと思います」

前回の“失策”を補って余りある試合内容を見せた勝村だけに、この発言も十本「資格アリ」といったところだろう。昨年の本誌のFlash Interviewではあくまで“Wanna Shooto”を貫くためのZST参戦だと語っていたが、“アウェイ”での惨敗で「このままでは帰れない」と表情を硬くし、敗者がラウンドガールとの撮影に応じる事に逡巡していた、あの試合後の様子を、筆者は思い出さずにはいられない。

そんな勝村にとって、「競技の場ではなくバトルエンターテイメント」と断言するZSTに100%適応してしまう事には抵抗が残るかもしれない。だが、プロファイターとしてはまず生き残って行く事。リングに上がり、ファンにその存在を焼き付けて行く事が、その最低限の条件だ。前回、勝村は保育士の仕事を捨て、あえて修斗以外のリングに上がることで「退路を断った」。その結果、持つ技量の100分の1も発揮できず黒星に泣いた姿は、まだ“アマチュアイズムのシッポ”を残した、彼の限界を意味していた気がする。

その意味で言えば、この日見せた“プロレスマインド”溢れる戦いぶりは、彼のファイターとしてのポテンシャルとしぶとさを覗かせ、「プロ第一戦」として十分及第点の付けられる物になっていたと思う。いや、むしろ、そうした“余裕”のなさが、前回のシビアな戦いでの敗北を呼んだわけで、心理的な意味も加味すれば、確実に勝村は“強くなった自分”をファンに見せたのではないか。

その“しぶとさ”が、シャイな勝村をして、こんな大胆な台詞を吐かせたのかもしれない。「せっかく今日リングサイドに前田さんもいらっしゃるんで…所君とRINGSルールで闘わせてください」と。

これを受けて“アキラコール”が巻き起こる中、前田もリングイン。両者の健闘を称え「自分が沈黙中の三年間 リングスルールを継承するZSTのリングを見守ってくださったみなさん。本当に感謝します。ありがとうございました。ここに来て、レベルの高い中量級の選手も揃って来たので、これからはHero'sとZSTをリンクさせて、ZSTから育って行く選手も含めてドンドンこの輪を大きくして行きたい」と語った。

試合後のインタビュールームでも「今後、ZSTとHERO'sで選手が行き来するような循環形式でやっていきたい。選手を引き上げるだけじゃなくて、Hero'sでちょっと調子の出ない選手がZSTに来て試合するとかね。一緒に居たブラジルのプロモーター(K-1ブラジルのセルジオ・バッタレリ氏)も、一瞬も止まらなくて面白いと言っていたし、ネットワークのなかでいろんなルールなども試して行きたい」と、リングでも話した、ZSTを下部構造に取り込んだ交流についての構想を語っていた。一方で、リトアニア遠征での“夜の大冒険”を繰り広げたという所を、ご機嫌の“オトナトーク”でおちょくるなど、このリングの“父祖”としての存在感を振りまいていた。

すっかりそんな“前田フィーバー”に飲まれてしまった形の「ZST7」だったが、Hero's行きをアピールする小谷、そしてすっかり前田のお気に入りリストに載った感のある所、レミーガらに対して、“プロファイター”勝村が、どう居場所を作って行くのか(あるいは、あえて“作らない”のか)が、今後ZSTリングの大きな軸となっていく気がする。


第6試合 セミファイナル ウェルター級 5分3R
ー小谷直之(ロデオスタイル)
ー野沢洋之(STAND)


※野沢は前回パンクラスでKO負けがあったのだが、当日のドクターチェックの際、ダメージに関するチェック書類を準備していなかったため、ドクターの反対で試合中止が決まった。

突如の試合中止で煽りを食った形の小谷は、リングでマイクを取り「今日、会場に来て、アップを済ました後に試合の中止を聞いたんで、今日来てくださったお客さんには残念な思いをさせてすみませんでした。7月は試合が出来る準備はしてあるので、前田さん、お願いします」と、休場の挨拶のはずが、いつの間にかリングサイドの前田にむけて、ちゃっかりHero's出撃を直訴していた。

第5試合 フェザー級 5分3R
△大石真丈(K'z FACTORY)
△植村“JACK”龍介(パンクラスP's LAB東京)
3R時間切れドロー


寝技巧者の大石が、ジェネシストーナメント覇者・植村を面白いようにコントロールして行った試合。格の違いに臆する事無く、積極的にタックルを仕掛けていった植村だが、グラウンドでは、常に二手先三手先に大石が居る印象が残る。

植村はスタンドでのよく伸びるパンチに勝負を託すが、それも確実に見切られて決定打はなし。逆にショートレンジでアッパーを浴びるなど、この局面でも及ばず。ただマウントを奪われても、バックに張り付かれても、執念の逃げでタップだけは奪われない植村。判定があれば、と思わずには居られなかった横綱相撲だった。



第4試合 ライト級 5分2R
△奥出雅之(ゴールドジムサウス東京)
△セルゲイ・グレイチコ(リトアニア)
2R時間切れドロー

第3試合 ヘビー級 5分2R
○渡辺悠太(A-スクエア)
×増田裕介(AACC)
1R 1'35"KO

第2試合 ウェルター級 5分2R
○佐東伸哉(パンクラスP's LAB東京)
×高屋祐規(SKアブソリュート)
1R 0'24" 裸締め

第1試合 フェザー級 5分2R
×宮川武明(パンクラスP'sLAB横浜)
○矢島雄一郎(禅道会世田谷道場)
1R 3'29"裸締め

◆ジェネシスバウト

第6試合 フェザー級 5分1R
△西 哲也(バトラーツB-CLUB)
△片山 伸(T-Pleasure)
時間切れ

第5試合 ライト級 5分1R
△相馬幸生(高田道場)
△坂上 広(総合格闘技武蔵村山道場)
時間切れ

第4試合 フェザー級 5分1R
△大島信哉(GRABAKAジム)
△清水俊一(宇留野道場)
時間切れ

第3試合 フェザー級 5分1R
○高橋基希(高田道場)
×井田 悟(ストライプルイースト東京)
0'41" TKO

第2試合 ミドル級 5分1R
○大類宗次郎(SKアブソリュート)
×樋山 久(ロデオスタイル)
2'55" 腕ひしぎ十字固め

第1試合 バンタム級 5分1R
○川名蘭輝(ロデオスタイル)
×福田正人(勝村道場)
3'24" 腕ひしぎ十字固め

Last Update : 05/04 11:31

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