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(レポ&写真) [ユーフォリア] 2.26 アメリカ:阿部兄ら日本勢4名全敗

ユーフォリアMFC(Euphoria Mixed Fighting Championship)"USA vs the WORLD"
2005年2月26日(土) 米国ニュージャージー州アトランティックシティ:トランプ・タージ・マハール・カジノ

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BoutReview USAに英文レポートが掲載。
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第13試合
○イーブス・エドワース(アメリカ/サード・コラム)
×エルメス・フランカ(ブラジル/ブラジリアン・トップチーム)
判定2-1 (29-28/28-29/29-28)

ハンセンの故障によって中座のやむなきに至った、「ユーフォリアライト級トーナメント」の実質上の決勝戦的なカード。ライト級の充実に力を入れるユーフォリアにとっては、切り札的なカードでもある。

序盤から短躯を思い切り跳ね上げるハイキックを中心に打撃で攻め込んで行くエルメス。対するイーブスは、早いパンチとミドルのコンビネーションをぶち込んで、ちょこまかと動くエルメスを封じ込めにかかる。

打撃→タックルのパターンを繰り返すエルメスを、ガブっての膝で迎撃し、リーチ差で有利なパンチでの攻防に戻して行くイーブス。パンチの早さ、的確さでも勝るだけに、この展開ではエルメスに勝機が見えない。

3R、ようやく早い片足タックルからのテイクダウンに成功したエルメスだったが、逆にバックを奪われてカメ状態に。執拗に首を狙ってくるイーブスを前に落として、足関節狙いに行ったが、ここは立たれて不発。ここまでの2Rフル回転で撃ち合った両者に若干疲れが見え始める。

胴タックルからコーナーに押し込んだエルメスを、抱え上げてパイルドライバー気味に落とすイーブス。そのまま組んで膝をぶち込む。押し込んだエルメスがテイクダウンから、再度足関節を狙い、両者足の取り合いへ。イーブスの頭を抱え込んでフロントチョークに取ったエルメスだったが、抜かれて逆にパウンドを浴びる。

ブレイクが掛り、再度スタンドに戻った両者だが後半は、若干スピードの落ちた単発の攻防で大きく戦局が変化する事は無いままゴング。終了と同時に大きく手を上げ、自らの勝利をアピールしたエルメスだが、ジャッジ二名が終止確実にパンチでポイントを稼いだイーブスを支持。

ユーフォリアライト級の、最初の頂点決戦はイーブスに軍配があがった。

第12試合
○ジェレミー・ホーン(アメリカ/チーム・エクストリーム)
×大久保一樹(日本/U-FILE CAMP.com)
1R 3'19" TKO (レフェリーストップ:右パンチ)

大会二週間前の緊急オファーで参戦が決まった大久保。このところ、新日本キック伊原ジムでの出稽古を重ねており、打撃で勝負したいと語っていた通り、序盤から果敢にパンチで攻め込む。しかし、ベテランの強みで、不用意な大久保のローに、早いジャブ連打で切り返してくるホーン。その勢いに押されて下がってしまう大久保に鋭いアッパーを浴びせる。

タックルでなんとか流れを変えようとした大久保だが、確実に裁かれ、再度パンチを浴びてしまう。ガードを上げた大久保の腹部に、早いボディブロー一閃。悶絶した大久保はダウン。そのままカウントアウトとなってしまった。

第11試合
○リッチ・クレメンティ(アメリカ/チーム・エクストリーム)
×花澤大介13(日本/総合格闘技道場コブラ会)
判定3-0 (30-27/29-28/29-28)

阿部がまさかのKOを食らい、後の無くなった日本陣営。総崩れの気配が漂う悪いムードのなか、終止明るい態度で日本人選手団のペースメーカーとなっていた花沢が登場。

青の柔術着におもちゃの刀を差し、なぜか顔面には、当日、近郊のおもちゃ屋で購入したというホラー映画「13日の金曜日」の怪人ジェイソンのマスクを被って、同僚の三島☆ド根性之助譲りの“いちびりパフォーマンス”で入場。これにはアンチJAPANの客席もおおいに湧いた。

対するリッチは幻におわったライト級トーナメントの勝ち上がり組であり、ユーフォリア側のメインアクトの一人。「USA VS WORLD」の対抗戦コンセプトを受けて、アメリカ国旗をまとって入場したこともあり、当然のように会場の歓声は「USAコール」となり、リッチ支持一色に染められた。

だがゴングが鳴るや、この「USAコール」がシーンとなる。
オーバハンドのパンチを打ち込んで組み付いた花沢が、外掛けでテイクダウン。倒されながらふんばるリッチが、諸手をあげて派手にグラウンドに倒れ込む度に、ため息とも付かない悲鳴があがり、客席のボリュームがさがるのである。この変化ぶりは、客席後方で見ていて面白いぐらいの依怙贔屓ぶりだった。

早いブレイクが掛り、再び花沢が同じパターンでテイクダウン。だが今度は勢いあまって上下が逆転。リッチが上になった途端、ラジオのボリュームを上げたかのような大歓声があがる。

しかしこの優勢も、花沢が横転して上下を入れ替えたために続かない。
2Rになってもこの展開は続く。テイクダウンされては、必死に横転して上を取りかえすリッチ。密着する花沢の後頭部に反則のパンチが入ってもレフェリーのチェックは無く、花沢が上をキープすれば早いブレイクが掛る。この「ホームタウン逆風」の中、なんと花沢はハーフの状態で捉えた足を、“二重絡み”で締め上げ、リッチの膝関節を破壊していたのである。

「バキッと鳴ったの判りましたからね。2R終わってもう出て来ないかなと思ったんですけどね」と試合後明かした花沢。一方、リッチもこれは認めており「もうやりたくないと言ったんだけど、マネージャーのモンテ・コックスが“とにかく行って上に乗ってこい。判定ならお前の勝ちだ”と言って聞かなかったんだ」と内情を明かす。

事実、最終ラウンド遮二無二アッパーを振ってくるリッチは、組み付かれると自分から崩れてしまう状態。ただ、花沢もそこから単調な攻めしかなく、せっかく壊した膝の怪我につけ込めなかったのは事実。パウンドも、リッチの密着によって決定だとなるパンチを打ち込めないまま試合を終わった。

「最後は向こうも気持ちが折れてたのは判ってたんですけど、僕ももう早く試合終わりたいなと思ってしまって。根性はありましたよ。敵地なんで、一本とらなきゃ勝てないって判ってたんで、これは当然僕の負けです」とコメントしている花沢だが、スタンドでもグラウンドでもこれといった攻撃のなかったリッチに、30-27という考えられないスコアをつけたジャッジもおり、ホームタウンディシジョンの犠牲となってしまった観は否めない。

インターナショナルなメジャー展開を目指しながら、現段階ではPPV放映がなく、ハウスショーで収益を固めざるをえないユーフォリアは、「USA VS ○○」というカード編成が最大の武器となっている。そのため客席の「USA絶対支持」の空気が
生まれやすい。MMAの評価にはあまり信頼の置けないニュージャージー州のアスレチックコミッションのジャッジが、その空気に飲まれたとしたら、「我々の武器は“競技性”だ」と豪語するユーフォリア側の姿勢に背く結果になってしまったと言えなくはないだろうか?

現在、花沢陣営はこのジャッジメントに正式な抗議を入れているが、裁定が覆る可能性は低い。ただ「今後もアメリカで試合をしていきたい」と語る花沢にとって、その舞台が“日本でなら完勝”という内容でも、決して勝たせてくれないのだという現実を実感することが出来たのではないだろうか。研究熱心な彼のこと、今後彼なりのスタイルで「アメリカでの勝ち方」を編み出してくれることを期待したい。

ちなみに、リッチ・クレメンティは、この膝の故障で六ヶ月の休場が決まったという。


第10試合
○ライアン・シュルツ(アメリカ/チーム・クエスト)
×阿部裕幸(日本/AACC)
2R 0'42" TKO (レフェリーストップ:右ハイキックでダウン後のパウンド)

「USA vs WORLD」というこの大会の括りの中でも、ここ第10試合からの三連戦は「USA vs JAPAN」のミニ対抗戦の形になった観がある。(ただ、アメリカ選手の格にしたがっての試合編成もあって、日本側からみると大将格の阿部がトップに闘うあたりはご愛嬌だが。)

大会冒頭部の「チャレンジマッチ」では池本が壮絶なKO負けの影響を喫し、控え室の空気は一瞬厳しい雰囲気となったが、この流れを断ち切る意味でベテラン阿部に勝利の期待が集まる。

過去、阿部はヘンゾ道場などNYでの練習経験も豊富で、主催するAACCの支部も持つほどNY東海岸に馴染みが深い。宇野の海外でのセコンドも数戦努めており、選手としても昨年12月にはKOTCでの対戦を経験している。したがって、大会前の調整段階で、海外経験の浅い他の三人の若手とは一線を画す落ち着いた表情を見せていた。

試合でも阿部にはうわずった所が無く、遮二無二左右の大振りなパンチを振ってくるだけのライアンの攻撃を、着実に捌いていく。ただリーチの違いは歴然で、振り回されただけのライアンの右の拳が、阿部のガードを越えて顔面を捉えてしまう。

対する阿部は負けん気を見せて、ノーガードで顔を突き出し、手招きで挑発。客席からは歓声が沸き起こる。

テクニックの違いを見せ付けるように、左右の早いパンチを打ち込んで、さあ来いとばかりに再度ノーガードでプレッシャーをかける阿部に、ライアンは焦りの色を隠せない。組んでの膝、そして強烈なぶん回しのフックで阿部のガードを突き破るような攻撃に出てくる。こうなってくると通常体重が4〜5キロ重いライアンのパワーが効いてくる。阿倍の顔面には、右眉の上のカットに鼻血が見える。

「パンチが思った以上に“堅かった”ですね。グローブが新しかったこともあるんだろうけど、彼のグローブはみんなに支給されてた白い奴じゃなかったでしょ。(ユーフォリア側が準備したSサイズの新品が一部ライト級選手には合わなかったため、窮余の措置として)多分あれの影響もあるんだと思いますけど。ちょっと熱くなりすぎましたね。本当は倒して、足とかを狙う作戦だったんだけど、当てられっぱなしじゃ悔しかったんで付き合ってしまった」と試合後はスタンドに徹した理由を説明している。

そして、勝負を決めたのは、一発のハイキックだった。2R開始から、ガードを下げじわじわとプレッシャーを掛けて行く阿部に対し、ライアンの右がヒット。腰も回っていない、振り上げただけの一発だったが、逆にフォームの悪さが反応の遅れにつながったのだろう。側頭部を撃たれて、ガクンと腰の落ちた阿部。一瞬、呆然とその姿を見守ったライアンだが、急いで覆いかぶさりパウンドを浴びせ、試合終了。

「阿倍のプレッシャーは堪えた。すごく辛かったんで、何か打開する武器はないかとずっと考えていたんだが、ハイキックはほとんど反射的に出したんだ。キック? ほとんど練習していない。ぶっつけ本番、生涯初めての一発だよ。当たって良かった」と振り返ったライアン。阿倍の“格”を見せつける戦法が裏目に出た、皮肉なフィニッシュだった。


第3試合
○エディ・アルバレス(アメリカ/ファイト・ファクトリー)
×池本誠知(日本/ライルーツ・コナン)
2R 4'25" TKO (レフェリーストップ:スタンドパンチ)

四人出場した日本人選手団の先頭を切って登場となった、“先鋒”の池本。一ヶ月前から治らないという風邪の咳が気になったが、試合直前には大分コンディションを戻していた様子で、特に連戦や移動の疲れも感じさせない仕上がりだった。

ただ相手のアルバレスは21歳、デビューからの三連勝中のホープ。スタンドでのパンチが武器で、突進力のある選手。既に地元ニュージャージー州のローカル大会「RING OF COMBAT」での痛快な勝ちっぷりもあり、今回もファンが400人も詰めかけるという状況。会場は試合前から、その熱狂的なファンの「エディ」コールが響き渡る。

池本は日本の試合でも見せているように、まず前蹴りで相手との距離をキープに掛るが、これがアルバレスにはつけ込む余地になってしまった。キャッチされ、パンチを合わせられてしまう。タックルはつぶされ、アリ猪木状態の攻防で誘っても乗って来ない。単発の飛び膝、ハイも空を切り打開点が見えない。

「結構効きましたね。いきなり頭が揺れちゃって。タックルでなんとか凌ごうとしてたんですけど、パンチもラッシュで来られてビビって下を向いてしまいました」と戦後敗因を振り返った池本。

コメント通り、スタンドでの不利を感じた池本は組みついて劣勢の流れを変えようとするが、フロントチョークに取ろうとした所にアッパーを食らうなど、状況はどんどん泥沼化して2Rへ。既に池本の顔面はエディの右フック集中砲火で、赤く腫れている。

逆境で、池本が唯一勝機を見いだしたのは、エディのガラ空きの足へのローだった。エディの右モモ上に何発かいい左ローをぶち込み、動きを止めたに見えたが、次第にタイミングを読み始めたエディが、カウンターからの連打を浴びせ、アッパーにつなぐ強烈なコンビネーションで、池本を泳がせる。

苦し紛れに組み付いて、なんとかアリ猪木状態を作るがこれはブレイクに。顔面の腫れが悪化したためにドクターチェックが入り、再開。

ハイを振ってまだ戦意の落ちていない所を見せようとした池本だが、やはりローへのカウンターをもらい、連打からアッパーへ繋がれてダウン。グラウンドパンチの連打でとどめを刺された。

エディ・アルバレスはこれで四連勝。エネルギー感のある試合ぶりで、今後の伸びしろを感じさせる圧勝劇だった。

第9試合
○トラビス・ウィウフ(アメリカ/チーム・エクストリーム)
×アントワン・ジャウジ(ブラジル/ファス・バーリトゥード)
判定3-0 (30-27/30-27/30-27)

第8試合
×ベン・ロスウェル(アメリカ/ミレティッチ・マーシャルアーツ)
○ダン・クリスチャンセン(メキシコ/フリー)
3R 0'57" アームロック

※当初の結果速報でロズウェル勝利となっていたのは誤りです。お詫びして訂正させていただきます。

Last Update : 02/28 10:53

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