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(レポ&写真) [DEMOLITION] 9.8 横浜:新たな舞台誕生に気鋭溌剌。メインは熾烈な秒殺戦

GCMコミュニケーション "DEMOLITION"
2002年9月8日(日) 神奈川・横浜赤れんが倉庫1号館

レポート:井田英登  写真:水野嘉之(GCM提供)

 【→大会前のカード&ルール紹介記事】 [→掲示板・プロ総合全般スレッド]

テレビ放映:スカイパーフェクTV サムライTV(Ch.301)
10/2(水)22:00-24:00・26:00-28:00,
10/3(木)18:00-20:00,10/5(土)13:00-15:00


「夏の終わりの破壊者達」

 プロキャリアの浅い選手に活躍の場を、というコンセプトでGCMが新しい総合イベント「DEMOLITION(デモリション)」を旗揚げした。会場の横浜赤れんが倉庫は清潔感があり、少し薄暗い照明も、逆にこれから始まる新イベントに対する期待感をあおるのにふさわしい。試合前のビデオ上映で、選手相互にコメントや自己アピールをぶつけあわせたり、安易な膠着を許さない細かいルール上の工夫なども見られ、選手の顔ぶれから想像する以上の面白さとなった。観客側からすると、選手のバックグラウンドを“予習”していなくても楽しめるようになっているわけだ。

 大会コンセプトである「(既成の業界に対する)破壊者」というコンセプトを、ぶっちがい骸骨の海賊旗のビジュアルに象徴させ、グッズ、ラウンドガールのコスチュームなどに至るまで一貫させているのも、観客に取っては非常にわかりやすい。例えばラウンドガールが海賊のようにラウンドボード代わりの旗をリング中央で降る演出もその一つ。これまでの格闘技イベントがとかく様々な要素をてんこ盛りにして、その“総量”で客に満足感を与えようとしてきたのとは正反対である。モノトーンだが、主張は明解。これは、これからの格闘技興行の一つのトレンドになるかもしれない。これまでGCMがコンテンダーズやORGで積み重ねてきた興行ノウハウの備蓄が、細かいところまで生かされているという印象をうけた。

 しかし、大会自体の価値を高めたのは、本来まだまだ無名と呼ばれ、他の大会ではアンダーカードクラスで切磋琢磨している選手達の、「この大会は俺たちのもの」という自覚だった思う。オープニングマッチからそれぞれの選手が持てる個性を十全に発揮したこの大会には、選手の知名度などより、やる気と競技に向かうモチベーションの高さで、まだまだいくらでも面白い興行は作っていけるのだというコンセプトの新しさを感じた。選手有名選手を集め、大宣伝で浮動層観客を取り込もうとした巨大プロモーションが、いくつも興行を行ったこの夏の格闘技界にたいして「サンショは小粒でぴりりと辛い」とばかり、ライトなフットワークでアンチテーゼを突き付けたこの大会の意義は、決して小さくない。事実、この日活躍した“ホーム”である慧舟会所属の選手の充実ぶりは、ひとつ大きな脅威として浮上したはずだ。

 すでに10月13日(日)お台場メディアージュでの第2回大会の開催が決定。誰もがスターになれる可能性を秘めた小粒な宝石箱たちの熱気が、今後格闘技界にいかなる侵略ぶりを見せるか、たのしみに見守りたい。

第9試合 -70kg契約 5分2R
×芹沢健一(RJW/CENTRAL)
○小谷直之(RODEO STYLE)
1R 0'20" TKO(レフェリーストップ:パンチ連打)

 芹沢が先にハイを振って飛び出すが、小谷が逆にパンチ連打で迎撃。一気にコーナーに詰めて、ラッシュ。たまらず崩れ落ちたところにさらに追い込みを掛け、一気に勝負を制した。
 試合後、小谷は「まだ絶対立ってくると思って構えてたんですけど、そのまま決まってしまって」と物足りなさも語ったものの、アウェイのメインイベントでインパクト十分の勝利を奪えた事には満足げだった。
 今後、DEMOLITIONをベースにするのか?という質問には「僕はリングスルールが一番自分を活かせる場所だったので、本当はあれが一番やりたいんですけど、そうもいかないので…」と言葉を濁したが、DEMOLITIONは、そうした“さまよえる格闘家”にこそ一番ふさわしい舞台であることは間違えない。芹沢もこのところ連戦が続いているだけに、体調は決して万全では無かったはず。本拠地のメインで、結果を残せなかった芹沢がどう雪辱を果たすかも、今後の注目点かもしれない。

第8試合 -89kg契約 5分2R
○久松勇二(TIGER PLACE)
×佐藤光芳(パンクラスGRABAKA)
判定3-0

 久松は1Rにタックルのカウンターのローからパンチを浴びせ、ダウンを奪取。その後、佐藤がタックルでテイクダウンを奪っては、なんとか逆転を狙ったが、久松はおちついたガードでなかなかパスを許さず最後までしのぎ判定勝ちをもぎ取った。

第7試合 -67kg契約 5分2R
×滝田J太郎(和術慧舟會東京本部)
○所英男(POD)
1R 1'41 TKO (ドクターストップ)
(試合中のアクシデントで滝田が頭部、頭がい骨に達するような裂傷を負ったため)

 オープニングのビデオで、所に「試合内容は地味な選手」と言われた事に反発してか、滝田は黄色のふんどし姿で統一したセコンド陣と、モーニング娘。の「ザ・ピース」の曲にあわせ入場し場内を湧かせる。
 試合でもいきなり早いタックルを仕掛け、下から所が腕十字で切り返すと、ゴロゴロと前転してこれを逃れる。さらに逆に足を取りかえすといった素早い動きを見せ、好試合を予感させる。
 しかしその直後、滝田の後頭部がぱっくりと割れ流血したため、試合は「危険試合」として休止。「俺は棄権してないけどな!」と捨て台詞を残して去ろうとした滝田だが、退場扉があかず、またもや場内の爆笑を買ってしまった。

第6試合 -78kg契約 5分2R
○平山貴一(和術慧舟會千葉支部)
×鈴木雅史(U.W.F.スネークピットジャパン)
判定 2-0

 リーチに勝る鈴木が打撃で攻め込むが、平山はヒット数ではむしろ鈴木を上回り、コンパクトで正確なパンチで迎撃。鈴木がバックを取ると、今度は腕をとって背負い投げでグラウンドに持ち込み、マウントをうばうなど、技術面での正確さと対応力を見せる。しかし、序盤のキックの交錯時に足を痛めたハンデもあり、最終的に詰めきれず、判定にまでもつれこんだ。

第5試合 -84kg契約 5分2R
○小島正也(和術慧舟會千葉支部)
×金井一朗(パンクラスism)
判定 3-0

 キック、パンチ共に切れのいい小島が試合を優勢に進めていくと、金井がタックルで上になりポイントを奪い返そうとする。しかし小島が下から腕を取ってアームロックを極めようとするなど、切り返しにあって思うように攻め込めない。2Rには小島がハイキックで2カウントのダウンを奪い、いよいよ優勢に。グラウンドでもこのルールの特徴である顔面への膝を有効に使いのびのびと試合を進め、最後のゴングが鳴るまで腕十字を取りにいくなど積極的な戦いっぷりで、文句無しの判定勝利をもぎ取った。

第4試合 -62kg契約 5分2R
○実原隆浩(チーム品川)
×和知正仁(Team ROKEN)
判定 3-0

 ベテラン和知を、ひたすらタックルで倒してはパンチを降らせ続けた実原が手堅く判定で勝利を奪った。

第3試合 -79kg契約 5分2R
○太田洋平(A3)
×加藤泰貴(RODEO STYLE)
1R 4'00" KO(パンチ連打)

 森素行の休場でブッキングされた加藤は、リーチの長い太田に積極的にパンチ合戦を仕掛けていくが、逆にパンチ連打を浴びて先にダウンを喫してしまう。なんとか5カウントでしのいで、鼻血を流しながら再度打ち合いを挑んだものの、パンチに正確さを欠いたせいか、返り打ちの2度めのダウンで力つきた。

第2試合 -83kg契約 5分2R
○岡見勇信(和術慧舟會東京本部)
×佐々木恭介(U-FILE CAMP)
判定 3-0

 岡見186、佐々木170という異例の身長差対決。岡見は佐々木のタックルを受けてはコーナーに運び、ターンバックルを背に着実に膝を浴びせ、足払いでテイクダウンを奪う。2Rも着実に試合をリードしていく岡見に対して、佐々木はスタンドのバックを奪われた状態から、前転しての足取りを仕掛けるなどU-FILEらしい側面を見せた。ポイント差はあったものの、両者の気持ちが切れないまま。一定の緊張を維持した好試合となった。

第1試合 -64kg契約 5分2R
×石原利生(ストライプル)
○出見世雅之(RJW/CENTRAL)
判定 2-1

 GCMの新しいホームグラウンドの記念すべきオープニングマッチを任された事もあってか、出見世が積極的に仕掛けて試合をリード。逆にその積極性ゆえに、タックルをフロントネックで捕まえられてしまう展開もみられたが、石原のキックを受け止めて抱き着いたり、タックルを受け止めて、グラウンドに同体でダイブして叩き付けるという大業を何度も見せ、威勢の良さを印象づけた。特に終盤、相手を抱え上げたまま回転して見せた反り投げなどは、プロ興行らしく華もあり、オープニングマッチにふさわしい熱をリングにもたらした。


Last Update : 10/02

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