(レポ&写真) [シュートボクシング] 7.7 横浜文体 :S-CUPにヤバい強豪続出
シュートボクシング "World Tournament S-cup 2002" 2002年7月7日(日)神奈川・横浜文化体育館
レポート&写真:井原芳徳
※大会の模様はJスカイスポーツにて8月から放送されます(初回は1日(木)22:00〜24:00 Jスカイ3にて。以降リピート放送あり)
【大会概要,選手紹介,大会前の会見記事】 掲示板スレッド・[→キック] [→リングス]
■リングス復活の記事はこのページ後半に掲載しています
<S-cupトーナメント>
▼大会発表記者会見で、シュートボクシング(SB)協会のシーザー武志会長が「正直『ヤバいな』と思うぐらい強い選手ばかりが揃った」と語った今回のS-CUP。何人かの選手は変更となってしまったが、最初からラインナップされていたオランダのキックボクサー・アンディ・サワー、中国散打のジョン・イーゴがまさに『ヤバい』実力の高さを発揮し決勝進出。サワーがジョンのトリッキーな技を封じ込め、延長戦の末優勝をものにした。 優勝を期待されていた日本の土井広之、オーストラリアのダニエル・ドーソンが揃って一回戦で膝のじん帯を負傷してしまった影響もあった。とはいえ、ジョンとサワーの技術と身体能力の高さは「立ち技世界最強」という大会趣旨にふさわしいものだった。大会後、サワーとドーソンの所属ジムがSBの海外支部となることが決定。サワーは9月22日の後楽園大会に参戦が内定した。S-CUP効果で、SBマットはますます元気になりそうだ。
第3試合 一回戦 (1) 3分3R ○ダニエル・ドーソン(オーストラリア/ブンチュウジム/WMTA世界Sウェルター級王者) ×後藤龍治(日本/STEARTH/SB日本Sミドル級1位) 判定3-0 (30-27,29-27,29-28)
後藤がロー主体の作戦で攻めるが、ドーソンがパンチを効かせ、2R右左のコンビネーションでダウンを奪う。後藤はロー戦法を変えず終盤ドーソンを苦しめたが、ポイントでばん回できず惜しくも初戦で敗退となった。
第4試合 一回戦 (2) 3分3R ○ジョン・イーゴー[Jhon Igo:郭 裕蒿](中国/中国武術協会/散打70kg級世界王者) ×ユーリ・グディマ(ロシア/ボブチャンチン軍団/DRAKA世界ミドル級王者) 2R 1'08" TKO(レフェリーストップ:パンチ)
映画「スパルタンX」のテーマで入場したジョンは、散打流の回し蹴りや、ロープ越しにリング外に落とさんばかりの投げを放つなど、SBルールに適合した動きを見せ観客を惹き付ける。1Rには左ローのダウンポイントと投げのシュートポイントを獲得し、2Rには相手のお株を奪うような豪快なフックでダウンを奪い完勝した。
第5試合 一回戦 (3) 3分3R ×マヌエル・フォンセカ(ブラジル/シュートボクセ/ストームムエタイ王者) ○アンディ・サワー(オランダ/リンホージム/WKA世界Sウェルター級王者) 2R 2'58" KO(2ノックダウン)
フォンセカがパンチとミドルでパワフルに突進するが、ディフェンスがいまいちなのはシュートボクセの選手の欠点。サワーの重たいローと膝に苦しめられる。2R、サワーがボディパンチで2連続ダウンを奪い勝利。「K-1ワールドMAXを制したアルバート・クラウス以上」と評される実力の片鱗を見せつけた。
第6試合 一回戦 (4) 3分3R ○土井広之(日本/シーザージム/SB世界ウェルター級王者) ×タリック・ベンフキー(フランス/オートテンション/WPKA世界Sウェルター級王者) 延長判定 3-0 (10-9,10-8,10-8) 本戦判定 1-1 (29-30,30-30,29-28)
土井が得意の「キラーロー」で攻める。だが1R、左ミドルをベンフキーにキャッチされひねられ膝のじん帯を痛めてしまう。その後も土井は左ローで攻めるがダウンを奪えず、逆にベンフキーの大振りのパンチで追い詰められる場面もあり、本戦の判定はドロー。延長にもつれこみ、土井が首投げでシュートポイントを奪いなんとか勝利をおさめた。
第9試合 準決勝 (1) 3分3R ○ジョン・イーゴー(中国/中国武術協会/散打70kg級世界王者) ×ダニエル・ドーソン(オーストラリア/ブンチュウジム/WMTA世界Sウェルター級王者) 1R 1'04" TKO(タオル投入:ジョンのローでドーソンがダウンした後)
ドーソンは一回戦で後藤に右足を捻られ膝のじん帯を負傷。なおかつローのダメージの蓄積も大きく、ジョンのローを右足でカットしたところで膝を悪化させる。悲鳴を上げマットにうずくまるドーソンを見たセコンドがタオルを投入し、ジョンの決勝進出があっさりと決まった。
第10試合 準決勝 (2) 3分3R ×土井広之(日本/シーザージム/SB世界ウェルター級王者) ○アンディ・サワー(オランダ/リンホージム/WKA世界Sウェルター級王者) 1R 0'59" KO(パンチ)
土井は一回戦で左膝のじん帯を切断していたことが判明。テーピングして準決勝に臨んだが、負傷した左足で蹴ったところをサワーに腕でガードされ、余計に痛みを悪化させてしまう。サワーにコーナーに詰められ右ミドルとボディの連打を浴びダウンし、そのまま立ち上がれず。SBのエース・土井が、準決勝で散ってしまった。
第13試合 決勝 3分3R ○アンディ・サワー(オランダ/リンホージム/WKA世界Sウェルター級王者) ×ジョン・イーゴー(中国/中国武術協会/散打70kg級世界王者) 延長判定 2-0 (10-9,10-10,10-9) 本戦判定 0-1 (29-29,28-29,29-29)
日本の土井が敗退した今、観客の期待がかかるのは中国人のジョン。手拍子でリングに迎え入れられると、いきなりタックルからの投げでシュートポイントを奪取し期待に答える。サワーはこれで距離をつかみかねた様子だったが、2R中盤から組んでの膝蹴りと顔面パンチを当てるようになりばん回。本戦では差がつかず延長戦が決まったが、インターバル中もサワーは立ったまま余裕なのに対し、ジョンは目の下を青く腫らし、椅子に座って苦しそうだ。実はジョンは前日に来日し、シーザージムでストーブにあたり夜中12時頃まで減量していたことが判明。体力差は明白で、延長になってサワーがパンチ、膝を効かせて僅差ながら判定勝ちをおさめ、S-CUP王座を獲得した。サワーは弱冠19歳。師匠のジョン・デ・リン氏の「(オランダのキック界の英雄の)ロブ・カーマンとラモン・デッカーを足したような実力だ」という評価もうなずける。サワーは「怪我のない状態の土井ともう一度戦いたい」と語った。S-CUP王座をバネに、サワーが今後も伝説を築き上げていくことは間違いなさそうだ。
<リングスKOKルール等ワンマッチ> ▼リングスKOKルール2試合の前に、前田日明リングス代表が挨拶。「第2部(リングス)に向けて着々と準備しています」と語った。試合ではリングスのテーマ曲や古田リングアナウンサーによるコールが流れ、レフェリーは和田良覚、平直行が務めるなど、2月に活動休止した第1次リングスのスタイルがそのまま再現された。
第12試合 リングスKOKルール 5分3R △緒形健一(日本/シーザージム/SB日本Sウェルター級チャンピオン) △ナーコウ・スパイン(オーストラリア/ブンチュウジム/SPARTANミドル級王者) 判定0-0 (29-29,29-29,29-29)
昨年10月にリングスKOKルールに初挑戦しながらも、チョークで秒殺されてしまった緒形が、一夜限りの復活を果たしたリングスマットでの雪辱戦に臨む。セコンドには佐藤ルミナ、小林聡、阿部裕幸が付く。試合はスパインがスリーパーを狙えば、緒形もおんぶの状態で乗っかるルミナ風のスリーパーを見せるなど、一進一退の展開。緒形はアームロック、腕十字を狙うなど昨年よりも格段の進化を見せ観客を驚かせたものの、勝ち星を奪い取ることはできなかった。緒形は「勝ちたかった。寝技は面白いし、シーザー会長にこれからも総合をやれと言われたらやりますが、僕の気持ちの上ではこれからSBを極めていきたい」と話した。
第11試合 リングスKOKルール 5分3R ○ヴォルク・アターエフ(ロシア/リングス・ロシア) ×クリス・ブランコ(カナダ/カナディアン柔術王者) 1R 2'31" ネックロック
「破壊神」アターエフが重いパンチでブランコを攻める。ブランコも足関節を狙うが、アターエフはディフェンス。最後はブランコのタックルをネックロックに捕まえ完勝した。
第8試合 SB公式戦エキスパートクラスルール 3分5R ○宍戸大樹(日本/シーザージム/SB日本Sライト級チャンピオン) ×ロナルド・ウルフス(オランダ/リンホージム/WPKLライト級ヨーロッパ王者) 1R 2'24" TKO(3ノックダウン)
宍戸が素早いコンビネーションでウルフスを詰め、左ハイでダウンを奪うと、さらに2度のダウンを続けて奪い完勝。
第7試合 SB公式戦エキスパートクラスルール 3分5R ×雷暗 暴(日本/フリー/修斗ウェルター級2位) ○阿部 勝(日本/クロスポイント) 判定0-3 (28-29,28-29,28-29)
阿部のセコンドには山口元気が付く。阿部は前蹴りやミドルを主体としたムエタイスタイルでペースをつかむ。SB初参戦の雷暗も得意の膝蹴りで阿部を苦しめるが、2R終了間際、阿部の左ハイでダウン。かろうじてゴングに救われる。3R雷暗はパンチ主体で攻めるが、阿部が逃げ切った。
第2試合 SB公式戦エキスパートルール 3分5R ×YU IKEDA(日本/湘南ジム/SB日本ヘビー級5位) ○ネイサン・コーベット(オーストラリア/IAMTFライトヘビー級欧州王者) 2R 1'07" KO(右ストレート)
第1試合 オープニングマッチ ミックスドルール 5分3R △しなしさとこ(日本/Girl Fight AACC) △吉住絹代(日本/東京元気大学格闘部GGG2nd) 判定1-0 (20-19,20-20,20-20)
この日唯一の女子の試合。レフェリーは元SBの平直行。詳細は不明だが、グラウンドで膠着すればブレイクのかかる、KOKルールに近い総合ルールが採用された。吉住は高田道場でサブミッションレスリングを2年経験し、最近元気大学入りした選手。実力は未知数だったが、寝技のスペシャリストのしなしの素早い動きにも対応し、1R中盤には腕を狙うなどほぼ互角に渡り合う。テイクダウンではしなしが上回ったが、吉住も二度ほどバックを取る場面もあり、判定はドロー。両者の決着は8月4日のスマックガールに持ち越されることとなった。
Last Update : 08/04
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