(レポ&写真) [全日本キック] 8.22 後楽園:小林、窓際からの再始動
全日本キックボクシング連盟 "SUPER FIGHT - LIGHTNING -" 2004年8月22日(日) 東京・後楽園ホール 観衆:1,857人(超満員)
レポート:井原芳徳、永田遼太郎(山本元気戦のみ) 写真:米山真一 【→大会前のカード紹介記事】 [→掲示板スレッド]
第8試合 日本vs世界・大将戦 63kg契約 3分5R ○小林 聡(藤原ジム/WKA&WPKC世界ムエタイライト級王者) ×アンディ・ドナルドソン(ニュージーランド/WKA南太平洋ライト級王者) 4R 2'20" KO (3ダウン:右ローキック)
小林は左右のローを効かせるいつもの試合運び。1R終了間際、左ボディのカウンターで左フックをもらってしまうが、大きなダメージは無し。2Rも右ロー主体で攻め続け、時おりバックキックを出す余裕も。3Rもローで攻めるが、ガードの甘くなったところでドナルドソンのパンチを浴びる場面も。ドナルドソンは果敢に前に出て声を出しながら蹴りとパンチを出し、しぶとさを発揮する。だが4R、小林は左フックでドナルドソンをのけぞらせると、右ローの連打でようやくダウンを奪取することに成功。あとは右ローの集中攻撃でドナルドソンをマットに沈めた。 復帰戦を勝利で飾るも、思いのほか手こずった感のある小林はマイクを持たず、そのままリングを降りていった。
◆小林「うーん、ダメですね。勝っても負けてもハッスルしようと思ったんですけど(笑)。(どこがダメだった?)どこがっていうか、鈍臭い試合しちゃダメでしょ。まぁ…(少し考えて)まぁいいや。今日は究極のプラス指向でいよう。好きなように書いて下さい。 (相手の印象は?)色白いなぁと。地味だなぁ、華のネぇ奴だなぁと。つかみ所無かったですよ。これと言ってないです。(特に目立ったところはない?)無いです。僕も無かったですけど。地味なモン同士の試合で、地味に終ったと思ってもらって(笑)。たまにはサブい空気の中でやんのもいいかなって。(試合は作戦どおり?)作戦にしては能が無さ過ぎるでしょう。 (今後の予定は?)予定つったって…。スポンサーの人に『4Rまでやってくれ』って言われるから、恐いっすね。最近、予知能力があって恐いです。いやぁ、腹式呼吸ばかりしてたら、2R目ぐらいからトイレ行きたくなってきちゃって、腹圧トレーニングが逆の結果になっちゃった。誰も笑ってねえよ(笑)。(初めて始めた呼吸?)前からやってたけど、本格的に始めたのは今回から。慣れないことやったらダメですね。近藤(有己)選手みたいなキャラじゃないですよ(笑)。もう思いつきでやるしかありません。
(改めて再浮上になる?)というかスタート。過ぎ去ったことを追い掛けてもしょうがないし。引きずっていい事あればいいけど、無いからね。一回誰かにブン殴ってもらって記憶喪失になろうかと思ったぐらい、過去忘れたくて、新たなスタート切りたかったんですけど、…ちょっと(今日は)過去引きずってたかもしんないっすね。 (今日で吹っ切れた感じは?)どうでしょう? まぁ、吹っ切れたことにしといてください。そうすりゃ周り期待してくれるでしょ? …だんだん今、窓際に来てますからね、格闘技界では僕(笑)。『ヒーローは忘れた頃にやってくる』って言おうとしたんですけど、まだ忘れられてていいですよ。 (あんまり今日はスタートして納得していない?)スタート切っただけで、あんまりいいスタートじゃなかった。ちょっとコケたかな。まぁいいや。コケたなりにまた走り始めたんで。またよろしかったら応援してください。そんな感じですね。ありがとうございました」
第7試合 日本vs世界・副将戦 58.5kg契約 3分5R ○山本元気(REX JAPAN/全日本フェザー級王者) ×クリスト・ディミトラカキス(ベルギー/プーマジム/WFCAムエタイ欧州ライト級王者) 1R 1'45" KO (右フック)
「全日本キックに元気を与える男」この日の山本元気の試合ぶりはまさにそれだった。五輪開催期間で日の丸への関心が高い世相も手伝ってか、満員に膨れ上がった後楽園の観衆のボルテージは先鋒戦から最高調に達していた。しかし、その先鋒戦に出場した吉本光志は試合の前半に頭部を肘でカットされ、不完全燃焼気味のTKO負けに終わり、続く藤原あらしも、春に小林聡に勝ち期待されたサトルヴァシコバも、日本勢の勝利を期待する声に応えることが出来なかった。 そんな嫌なムードを一掃したのが山本元気だった。ムエタイ欧州王者の肩書きがあるディミトラカキスを相手に開始早々からエンジン全快。得意の左右のパンチのコンビネーションでコーナーに追いつめると、あとは山本の独壇場。逃げ惑うディミトラカキスを強烈な右フックでマットに沈めた。
試合後「少々強引だったかな」と苦笑いを浮かべながら試合を振り返った山本だが、その表情から、はっきり対戦相手との力量差を窺い知ることができた。今後についても「昨年、フェザー級の王座になったことで僕なりの目標は達成してしまったので」と言葉を濁したが、遠慮するように「あえて言うなら他団体ですけど新日本の菊地選手」と答えた。 現在6連続KO勝ちの山本にその期待を抱くのはファンも同じ。現時点では実現困難ではあるが、この両者が同じリングに立つことがあれば、ファンだけでなく日本のキック界全体に山本元気は元気を与えてくれるに違いない。
第6試合 日本vs世界・中堅戦 60kg契約 3分5R ×サトルヴァシコバ(勇心館/全日本フェザー級4位) ○リアム・ハリソン(イギリス/バッドカンパニー/WAKO-PRO英国Sフェザー級王者) 判定0-2 (豊永50-50/朝武48-50/和田49-50)
互いに単発の打ち合いが続くが、ハリソンの右ローが3Rあたりから効き始め、ヴァシコバは前に出られなくなる。4Rからはハリソンが右ミドル、パンチの手数で優勢。決定打は無かったものの、18歳の若きイギリス王者が30歳のヴァシコバに5Rの戦い方を教えるような内容になった。
第5試合 日本vs世界・次鋒戦 バンタム級 3分5R △藤原あらし(S.V.G./全日本バンタム級1位) △ダーウサウィン・ギャットラタポン(タイ/イングラムジム/元ルンピニー・フライ&ミニフライ級王者) 判定1-0 (野口49-49/朝武50-49/大成49-49)
AJジムのトレーナー・ダーウサウィンは、タイに帰国し調整してから再来日。31歳とは思えぬ引き締まった肉体を披露し、観客に期待を抱かせる。だが、久々の試合でなおかつ慣れない場所で戦うという緊張と、年齢も相まってか、全体的に動きが硬くスピードも遅い。ミドルに威力はあり、随所でテクニックを発揮するも、藤原を痛めつけるほどにはならず。逆に藤原の右ストレートで左目を腫れ上がらせてしまう。だが藤原も攻めが単発で、ダーウサウィンの老かいさに付き合ってしまい、結果はドロー。見ごたえのある試合だったが、両者とも課題を残す内容となった。
第4試合 日本vs世界・先鋒戦 62kg契約 3分5R ×吉本光志(AJジム/全日本ライト級3位) ○ムラッド・ティアルティ(オランダ/ムシドジム/IMTFオランダSライト級王者) 1R 1'44" TKO (レフェリーストップ:右肘打ちによる頭部の出血)
開始1分足らずで、ムラッドが右肘の連打で吉本の頭頂部をカット。ドクターチェック後再開するも、ムラッドの肘の連打で吉本の顔面が真っ赤に染まるようになり、レフェリーが試合をストップした。フィクリの弟・ムラッドが強かったというより、吉本の肘対策の甘かったといえる内容だった。
第3試合 フェザー級 サドンデスマッチ ○前田尚紀(藤原ジム/1位) ×ラビット関(山木ジム/MA日本Sフェザー級王者) 1R 2'31" KO (3ダウン:右ローキック)
しばらく様子見が続いたが、前田の右ロー一発で関はあっさりと失速。前田はパンチと右ローの連打で立て続けにダウンを奪い完勝した。関はこれで昨年3月の藤原あらし戦から4連続KO負け。キャリア9年・43戦で、ダメージの蓄積はかなりのようだ。
第2試合 フェザー級 サドンデスマッチ ○山本真弘(藤原ジム/2位) ×平谷法之(BOOCH BEAT/前全日本バンタム級王者) 2R 0'27" TKO (レフェリーストップ:右肘打ちによる頭部の出血)
山本がサウスポーの体勢で細かく動き、平谷が重い右ミドルを放つ展開が続くが、接近戦で山本の右肘が平谷の頭部に炸裂しカット。ドクターチェックが入る。なんとか続行となったが、2R序盤に山本が再び右肘を平谷の頭に打ち降ろした直後にレフェリーストップ。平谷は5月の前田尚紀に続き藤原ジム勢に2連敗を喫してしまった。
第1試合 ライト級 サドンデスマッチ ○凱斗亮羽(S.V.G./6位) ×長谷川誠(青春塾) 3R 2'26" KO (3ダウン:バックスピンキック)
2R、凱斗(かいと)が肘打ちでダウンを先制するが、終盤、長谷川が肘一発で反撃。3Rも凱斗がバックスピンキックでダウンを奪うが、長谷川が膝蹴りで反撃し、波乱の展開に。しかし凱斗は今度は回転しての肘打ちでダウンを奪うと、長谷川は余力を失う。最後は長谷川をコーナーに追い詰めてのバックスピンキック。まるでライダーキックのように命中し、大喝采。凱斗のテコンドー技がフルに発揮される好勝負となった。
【以下オープニングファイト】
第4試合 フェザー級 3分3R ○正巳(勇心館) ×清水英樹(月心会) 2R 1'32" KO
第3試合 ライト級 3分3R ○村山トモキ(AJジム) ×宿波 明(はまっこムエタイジム) 2R 2'59" TKO
第2試合 ウェルター級 3分3R ○森 卓(勇心館) ×HIROAKI(峯心会) 判定2-0 (29-29/30-29/30-29)
第1試合 バンタム級 3分3R ×塩谷 洋(超越塾) ○前田浩喜(JMC横浜GYM) 2R 1'17" KO
Last Update : 08/27
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