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(レポ&写真) [K-1 MAX] 4.7 代々木:魔裟斗・クラウス・コヒ、薄氷の開幕戦

FEG "エステティックTBC K-1 WORLD MAX 2004 〜世界一決定トーナメント開幕戦〜"
2004年4月7日(水) 東京・国立代々木競技場第一体育館

  レポート:井田英登,井原芳徳(第3・5試合・前座)  写真:井原芳徳
  【→大会前のカード紹介記事】 [→掲示板スレッド]

第8試合 3分3R(最大延長2R)
○魔裟斗(日本/シルバーウルフ)
×セルカン・イルマッツ(トルコ/チーム・ソラック)
判定3-0 (中川30-27/御座岡30-29/大成30-29)

[1R] 中川10-9/御座岡10-10/大成10-10
[2R] 中川10-9/御座岡10-9/大成10-9
[3R] 中川10-9/御座岡10-9.5/大成10-9.5

 五ヶ月ぶりのリングとなった魔裟斗。連覇を義務付けられた世界王者の気負いか、上半身の動きが必要以上にせわしなく、ぎこちない印象が残る。距離も中間距離の中途半端なものでプレッシャーが掛け切れていない。それに乗じたイルマッツが序盤からソバット系のキックを魔裟斗のボディに打ち込んでコーナーに吹き飛ばし、ファンの悲鳴が会場に沸き起こった。

 強力なローでイルマッツの動きを封じにいく魔裟斗だが、イルマッツにも長いパンチがある。距離が詰めきれないところで、再びイルマッツのソバットが襲い掛かる展開となり、序盤戦は予想外の苦戦に見える。

 2Rも距離が詰めきれないままローを多用する魔裟斗。イルマッツのモモの内外に的確にダメージが重ねられ、バランスを崩すシーンが増える。果敢にパンチを打ち返していくイルマッツだが、徐々に魔裟斗は蹴りの感覚を取り戻したか、肩口へのハイ、ミドルといいものが入り、動き自体にもリズムが刻まれ始めた。

 最終ラウンド、回転系の蹴りを捨てて左右のストレートで倒しに出てきたイルマッツに対し、魔裟斗は前後の動きでローのヒットアンドラン。右ハイから左のストレートとロングレンジの飛び道具を惜しみなく繰り出すイルマッツ。しかし、そのイルマッツ焦りを逆手に取った魔裟斗は、パンチにカウンターをあわせ着実にポイントを稼いでいく。

 結局、判定では大差がついたものの、試合内容は決して圧倒したとはいえない。むしろ、これまでのどっしりした存在感が消え、魔裟斗の危うさが目立った試合。二連覇に黄信号点灯といってもいいかも知れない。

◆魔裟斗「(試合について)サイアク。つまんない試合して、来てくれたお客さんに申し訳ない。(なぜ?)集中しきれなかった。消化不良ですっきりしない。昨日の計量の時から『いつもと違うな』という感じがした。体が動いていても地面に足が付いていない感じだった。
(判定について)負けるかなとは思わなかったけど、3ポイント差はないと思った。セコンドと2R目は取ったなと確認したら、3R目は取れなくてもいいやと思ってしまった。
(イルマッツについて)攻撃は見えていたけど、ガードの上からでもキックを当てられた。本当に集中していればスウェーでかわせるけど、『効かないからいいや』と思ってしまった。
(7月は誰と戦いたい?)誰でも…よくねえな(笑)今は考えたくない。
(声援は聞こえた?)今日はあんなに盛り上がるような試合じゃない。いつもオレが批判しているような人たちと同じような試合をやってる自分に腹が立つ。MAXがこんなもんだと思われたくない」

◆イルマッツ「(魔裟斗について)勝っておめでとうと言いたい。試合前からテクニックのあるファイターだと思っていたが、その通りだった。その中で怪我無く試合を終えてうれしく思う。(ローキックを蹴られていたが)ダメージを受けたのは2Rだけ。3Rにはすぐに戦術を変えたので、スピンキックやパンチを出すことができた。(再戦は?)もちろんしたい。今でも負けたとは思っていない」

◆谷川貞治K-1イベントプロデューサーの総括「なるべく世界中から強くてキャラクターのある選手を集めたつもりだが、その結果KOの試合が少なくなってしまったのが残念。オープニングファイトからものすごくレベルの高いいい試合だったが、そこに楽しみを求めるお客さんはまだまだ少ない。決勝大会はある程度盛り上がる確信を持ったが、開幕戦の試合の方式は来年また考えないといけない。
 魔裟斗は完勝だな、強い、と思った。でも今日の試合について『不完全燃焼だった』と言ってくれたのが一番うれしい。
 決勝トーナメントの推薦枠は、今日出ていない選手でいえばボクシングのランカー、今日出た選手でいえばナラントンガラグとイルマッツ。KIDや武田が出る可能性はゼロではないが、開幕戦に出ていないので可能性は低い。ファンの声を聞いてなるべく早く決めたい。」




第7試合 3分3R(最大延長2R)
○アルバート・クラウス(オランダ/ブーリーズジム)
×ジャダンバ・ナラントンガラグ(モンゴル/モンゴリアンレスリング連合)
延長判定3-0 (中川10-9/御座岡10-9/大成10-9)
※本戦判定1-0 (中川28-28/御座岡29-28/大成28-28)

[1R] 中川10-10/御座岡10-10/大成10-10
[2R] 中川8-10/御座岡9-10/大成8-10 ※クラウス1ダウン
[3R] 中川10-8/御座岡10-8/大成10-8 ※ナラントンガラグ減点1

 モンゴル相撲のほか、極真カラテも習得しているとの触れ込みで登場したジャダンバ・ナラントンガラグ。確かに早い突き蹴りに踵落しまで披露、様になった動きを見せる。未知の対戦相手に慎重を期したのか、クラウスは時折早い左右のワンツーを放つものの、踏み込んだ攻撃は見せない。だが、曲者のナラントンガラグは1R終了直前に縦回転の胴回し蹴りを繰り出し、クラウスの頭頂にヒットさせる。

 この一発のダメージがあったのか、精神的ショックゆえかコーナーに下がったクラウスは多少目つきが怪しい。その懸念はモロに的中する。2R開始早々、クラウスは大きな左のフック放つが、ナラントンガラグのクロスカウンターを浴び、ダウンを喫してしまう。ダメージを受けたらしいクラウスは動きが鈍くなり、コーナーに詰められて膝を浴びるなど元王者とは思えない局面も。

 最終ラウンド、劣勢を意識したかクラウスは積極的に左右のフックで追いうちを掛ける。右のストレートをクリーンヒットさせるクラウス。しかしナラントンガラグも異様な打たれ強さをみせて耐える。スタミナ切れもあってクリンチとダッキングで逃げきりを狙うナラントンガラグ。この消極姿勢に二回の警告が累積しレッドカードが与えられる。ジャッジの下した判定は、クラウスの1-0 (28-28,28-29,28-28) で二票差がつかずドローでの延長というものだった。

 相手のホールディングに救われた形のクラウスは、最終ラウンド同様必死の追い討ちを見せる。再三右のストレートをクリーンヒットさせるクラウスだが、ナラントンガラグも肩口から放つ空手スタイルのショートパンチを打ち返し、対等に近い打ち合いを演じる。結局、的確なパンチの数が評価された形で僅差の判定を勝ち取ったクラウスだが、ナラントンガラグの健闘もあって極めて危なっかしい勝利だった。

◆クラウス「(ダウンについて)ダメージはなかった。すぐに戦い続けたかった。(焦りは?)全くなかった。(延長ラウンドに入ると思ったか?)思わなかった。(相手の印象)試合前にビデオも見られなかったので準備ができなかった。今日のファイトには満足していない」

◆ナラントンガラグ「すごくいい相手だった。ベストを尽くしたので満足している。ダウンを奪って気持ちがよかった。(判定について)自分が消極的だったからと思うしかない。(同じモンゴル人のスミヤバザルからのアドバイスは?)『待ってはいけない。自分の形でやりなさい』と言われた」



第6試合 K-1 MMAルール 5分3R
○山本“KID”徳郁(日本/PUREBRED東京/65.6kg)
×トニー・バレント(米国/ブラックコブラ・ラスベガス/73.5kg)
1R 0'58" チョークスリーパー


 バックステップで大きくリングを回るKID。そのまま打撃戦を挑むのかと思われたが、タイミングを盗んで早い片足タックルを決め、マウント〜バックマウントとす早く自分の形に追い込み、そのままスリーパーを決めて一発のパンチも放たないまま秒殺勝利を飾った。

◆KID「(拳の状態について)思い切り殴る場面がなかったのでわかりません。今までチョークや関節技を試合で使おうとは一回も思ったことがなかったんですけど、次(5月のK-1 MMA)のことを考えて、拳を壊さないようにと思いました。(MMAルールについて)やりやすかった。(久しぶりの総合の試合だが)オープンフィンガーグローブをつけて、『ああ、戻ってきたなあ』と思った。
(今後は)オファーがあれば総合もK-1ルールも考えます。(戦いたい相手は)名前があって、注目されている人。総合では、尊敬しているグレイシーファミリーの誰かと戦いたい。ホイラーとは体重も近いのでやってみたい」

◆バレント「ファンの人がまたMMAの試合を見たいと言ってくれれば、準備をしてくる。もしKIDとK-1ルールで再戦するとすれば、私は千葉真一の映画もたくさん見ているので、新しい技を出せると思う」


第5試合 3分3R(最大延長2R)
○ブアカーオ・ポー・プラムック(タイ/ポー・プラムックジム/猪木事務所推薦)
×ジョーダン・タイ(ニュージーランド/レイ・セフォー・ファイトアカデミー)
判定3-0 (後川30-28/御座岡30-28/大成29-28)


 ブアカーオが右ローを効かせ、タイを首相撲で捕まえたまま巧みにコントロールし、膝を何発も叩き込む。タイはセフォー仕込みの大振りフックを振り回すばかりで、攻め手なし。1、2Rでポイント差を付けたブアカーオは、3Rは流し気味のファイトで余裕の勝利だった。


第4試合 3分3R(最大延長2R)
×ドゥエイン・ラドウィック(米国/3-Dマーシャルアーツ)
○ジョン・ウェイン・パー(オーストラリア/ブンチュウジム)
判定3-0 (黒住30-25/朝武30-25/大成30-25)


 減量ミスで72.1kgまでしか落ちなかったラドウィックは、通常の8オンスではなく10オンスのグローブを付けて試合をすることに。強豪ウェイン相手に、このハンデは大きい。
 ウェインがショートジャブのような右をクリーンヒットさせて、1Rに1度、2Rに2度ダウンを奪取する。これまでもマニア筋には高い評価を受けてきたウェインだが、実力差は明らか。回転の速いパンチを重ねラドウィックにまったく付け入る隙を与えない。十分にポイント差を付けたウェインは3R、ブアカーオ同様相手の攻めを受け流すような戦い方に移行。終了間際にはラドウィックのお株を奪うようなカラテキッドポーズを披露するほどの余裕ぶりだった。


第3試合 3分3R(最大延長2R)
○シャミール・ガイダルベコフ(ロシア/スコーピオンジム)
×マルフィオ・カノレッティ(ブラジル/シッチ・マスター・ロニー)
判定2-0 (後川30-29/朝武30-28/武井30-30)


 背中にK-1 MAXのロゴマークのタトゥを入れ、覚悟たっぷりのカノレッティだが、ハイキックは空を切るばかり。ガイダルベコフの着実なパンチ、ロー、膝に劣勢なまま完敗した。


第2試合 3分3R(最大延長2R)
○小比類巻貴之(日本/チーム・ドラゴン)
×パウロ・バリッシャ(スイス/ダイヤモンドジム・バーゼル)
判定3-0 (中川30-28/後川30-28/朝武30-28)


 右の強烈なフックとソバットを武器に気力横溢した攻撃を見せるバリッシャに対し、スロースターターの小比類巻はローを重ねてじわじわとチャンスを探っていく。最終ラウンドに入って徐々にそのダメージの蓄積が効果を見せ始め、バリッシャのプレッシャーが弱まり始める。
 3ラウンド終了直前にようやくエンジンのかかった小比類巻はコーナーに押し込んで強烈なヒザの連打をぶち込む。スタンド状態ながら上半身を折り、戦闘意志の見えなくなったバリッシャにレフェリーのチェックが入る。そしてゴング。一瞬、TKOかと大喜びする小比類巻陣営だったが、これはラウンド終了のゴング。だが最後のヒザ連打のダメージは明らかで、判定は小比類巻のフルマーク。リングサイドで試合を見守った魔裟斗もこの結果にニヤリと笑みを浮かべる。小比類巻も一時の脆さは完全に払拭した模様で、日本代表の沽券を守りきった。


第1試合 3分3R(最大延長2R)
○マイク・ザンビディス(ギリシャ/メガジム)
×HAYATO(日本/FUTURE_TRIBE)
判定3-0 (御座岡30-27/朝武30-27/武井30-27)


 序盤からプレッシャーを掛けて自分から前に出るHAYATO。しかし、ザンビディスは老獪なフットワークで距離を支配。スピードのあるボディ打ちを重ね、HAYATOの前のめりな気持ちを翻弄する。最終ラウンドに入っても気力の途切れないHAYATOは、得意の右をリードブローにクリンチからのヒザと攻め手を緩めない。
 だが押され気味に見えたザンビディスは、HAYATOの逸る気持ちを読みきっていた。ラウンド終盤パンチ勝負に出てきたHAYATOの右を、頭を沈めたカウンターのオーバーハンドフックで迎撃。モロにアゴを打ち抜かれたHAYATOはここでダウンを喫してしまう。何とか立ち上がったものの形勢は完全にザンビディスに傾き、試合終了のゴング。ただ、HAYATOは今回の大抜擢に答える潜在能力を十分発揮したといえるだろう。


オープニングファイト第2試合 リザーブマッチ 3分3R
×フジ・チャルムサック(タイ/伊原道場)
○ジャン・スカボロスキー(フランス/ジョッキージム/猪木事務所推薦)
再延長判定0-3 (中川9-10/後川9-10/武井9-10)
※延長判定1-0 (中川10-10/後川10-9/武井10-10)
※本戦判定1-1 (中川30-28/後川29-30/武井29-29)


 キックファン垂涎のカードだが、扱いは前座。正式の大会スタートの6時前の早い時間の試合ということもあり、客席はまばら。非常にハイレベルな攻防が繰り広げられたにも関わらず、ほとんど観客が感心を示さなかったのは残念な限りだ。
 1、2Rはチャルムサックが重みのある左フックの手数とクリーンヒットで上回る。だがスカボロスキーも2Rから序々に右のパンチと左ミドルを当てるように。ジャッジ3者の判定は割れ延長戦に突入。チャルムサックがストレートを当てる場面もあったが、スカボロスキーのパンチの有効打が上回る。結局それでも決着がつかず(後川ジャッジの採点が妥当な気がしたが)、再延長に突入。消耗戦となり、互いにほどんど蹴りを使わないラフな内容となったが、体力に勝ったスカボロスキーが有効打で上回り、なんとか勝利をもぎ取った。


オープニングファイト第1試合 リザーブマッチ 3分3R
○DAVID(米国/真樹ジムオキナワ)
×康恩[カンエン](中国/北京盛華武術箔搏撃ジム)
3R 2'20" KO (3ダウン:右ロー)


 DAVIDがロー主体のオーソドックスな攻めなのに対し、散打の康は投げを多用。結局DAVIDが右ローで3連続ダウンを奪い完勝した。


Last Update : 04/21

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