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(レポ&写真) [コンバットレスリング] 3.20 町田:出場者減少の理由は?

日本コンバットレスリング協会 "第10回全日本コンバットレスリング選手権大会"
2004年3月20日(土/祝) 東京・町田市総合体育館メインアリーナ

  レポート&写真:井原芳徳
  【→大会前のカード紹介記事】
  【→掲示板・組技スレッド】

▼ 毎年、五味隆典や佐藤ルミナといったプロのスター選手が出場費を払ってまで出場し、話題を呼んでいた春の選手権大会。だが今年はこの2人を始めとした有名選手は出場せず、ある程度名前が知れ渡っている選手といえば、竹内出、花井岳文、志田幹ぐらい。「あのスターと試合ができるかも」という無名の選手たちのモチベーションが、これまでの大量エントリーの原動力となっていたが、今年はそれが無くなったせいもあり、参加人数が昨年の86人から、3分の2の58人に減少した。-80kg、+80kgは若干増えたが、毎年30人近くエントリーしていた60〜75kgあたりの各階級は、10人前後しかいなくなってしまった。

 そのためベスト8以下の試合も今年は2面のマットを駆使せず、マット1面のみでスタートした。第8回大会まで町田市総合体育館のサブアリーナを使用していたが、去年から約2倍の広さのメインアリーナに移動。去年はその広さがちょうどいいぐらいだったが、今年は異様に広く感じる。見物客・マスコミの数も少ない。季節が1ヶ月逆戻りしたような寒さと雨天も影響したのだろう。筆者は5年連続取材しているが、こんなに寂しい春の選手権は初めてだ。

 いきなりネガティブな話題から始まってしまったが、試合自体は例年と変わらず十分見ごたえがあった。レスリングに限らず、柔道、柔術、サンボ、あるいは総合主体の選手など、参加選手のスタイルの幅広さが、コンバットの試合パターンの多彩さを生んでいる。結果は下記一覧のとおりで、4大会連続5度目の優勝を果たした竹内出を除いては、各階級で有力選手が初戦で敗退するなど、波乱も多かった。例年スター選手の動向ばかりに目が行きがちだったが、今年は逆に「コンバットレスリング」という競技の素(す)の姿をシンプルに楽しむことができた。
 
 だが素の部分をじっくり見たことで、問題点も見えてくる。コンバットレスリングのルールは、その名の通りレスリングのルールを基礎としている。サブミッションによる一本決着は他のグラップリングルールと一緒だが、マウント、バック、キャッチではそれぞれ1点ずつしか入らず、逆に押さえ込みと投げでは最大4点が加算される。押さえ込みの4点は1試合1回しか有効にならない事を差し引いても、柔術的なポジショニングがさほど重視されていないことは明らかだ。ちなみにアブダビルール、それをベースにした修斗グラップリングルールでは、コンバットレスリング同様ポイント制が有るが、ポジショニングの点数の方が高い。

 柔術の技術はそのまま総合格闘技で勝つための技術に直結しており、総合でも有効な技術ほど点数が高い。その点、30秒押さえ込むか、豪快なバック投げをするかで最大ポイントが入るコンバットレスリングのルールは、総合の技術に直結しているとは言いがたい。グレイシー一族、ノゲイラの活躍で柔術は競技人口を増やし、大会も多数行われるようになった。コンバットレスリングも、大会で実績を残した選手が多数プロでも活躍している点では柔術と似ているが、今大会では参加者が3分の2に減少。必ずしも、スター選手不在だけが原因とは思えない。

 試合は楽しい。だが「総合格闘技で勝てる技術」としての説得力が足りない。そのことがコンバットレスリングの出場者減少の原因の一つのような気がする。柔術のポジショニングの点数の比重を増やすと、オリジナリティに欠く。だが、レスラーの総合格闘技での勝ちパターンを改めて洗い直し、そこで有効な技術をポイントに反映させるようなルール改正をするのが、一つの策ではないだろうか。

 スター選手不在の今大会は、逆にコンバットレスリングという競技そのものを見詰め直す良い機会となった。第10回大会を節目に、コンバットレスリングは大きな転換点を迎えたのかもしれない。



◆ 最優秀選手賞  山崎昭博(和術慧舟會駿河道場)-73kg級優勝
◆ 最多一本勝ち賞 山崎昭博(和術慧舟會駿河道場) 4試合(全試合)
◆ 最短一本勝ち賞 花井岳文(Twist) 12秒 アンクルホールド(-80kg級2回戦(初戦)vs. 潮田健志)

◆ -58kg級(10名エントリー/10名出場)
優勝 畑 武彦(TIGER PLACE/プロ修斗1戦1勝)
2位 細谷健二(和術慧舟會東京本部/03年オープン-58kg級準優勝)
3位 伊藤彰男(養正館/ビギナーズ1位)
3位 藤田成保(T-Pleasure/03年選手権-60kg級3位)
※高橋拓次郎(GUTSMAN修斗道場/03年選手権-60kg級3位)は初戦で畑武彦に0-6で敗退

◆ -62kg級(9名エントリー/8名出場)
優勝 村田卓実(A-3/03年選手権-60kg級準優勝)
2位 三浦昌明(何気/柔術3年)
3位 鈴木賀久(養正館/柔道初段)
3位 田中淳平(総合格闘技練成塾/03年オープン-62kg級3位・最短&最多一本勝ち賞)
※中村 浩(パレストラ東京&ロデオスタイル/03年選手権-60kg級優勝)は初戦で三浦昌明に0'43" 腕ひしぎ三角固めで敗退

◆ -67kg級(9名エントリー/9名出場)
優勝 中村浩士(東京イエローマンズ/03年オープン-67kg級優勝)
2位 佐々幸範(パレストラ東京/03年オープン-67kg級2位)
3位 風間 奨(パレストラ東京/ビギナーズ2位)
3位 志田 幹(P's LAB東京/パンクラス5勝1敗1分)
※尾藤広光(京都東山レスリング/03年選手権-66kg級2位)は初戦で風間奨に1'40" ヒールホールドで敗退

◆ -73kg級(13名エントリー/13名出場)
優勝 山崎昭博(和術慧舟會駿河道場/04年全日本修斗グラップリングミドル級優勝)
2位 高屋祐規(SKアブソリュート/03年オープン-73kg級優勝)
3位 鈴木康浩(SKアブソリュート/全日本サンボ3位)
3位 高津十樹(木口道場サンボ教室/03年オープン-73kg級準優勝)
※松永茂文(佐世保中央高校/99・00年選手権-69kg級3位)は初戦で鈴木康浩に0-1で敗退

◆ -80kg級(11名エントリー/11名出場)
優勝 鈴木琢也(秋本道場Jungle Junction/柔道三段15年)
2位 中島 亮(SDファイトクラブ/オープン3位)
3位 花井岳文(Twist/00年選手権-76kg級3位)
3位 米澤重隆(ストライプル/99年選手権-85kg級優勝)

◆ +80kg(8名エントリー/7名出場)
優勝 竹内 出(SKアブソリュート/98・01・02・03年選手権優勝)
2位 山本高行(TEAM KAZE/03年オープン+80kg級準優勝)
3位 石田晃一(フリー/柔道三段・インターハイ団体8位)
3位 増田裕介(AACC/大学レスリング新人戦3位)
※竹内は4大会連続5度目の優勝
※甲斐俊光(養正館/03年選手権-84kg級準優勝)は初戦で石田晃一に延長0-4で敗退
※奈良谷洋一郎(RODEO STYLE/03年オープン+80kg級優勝)は初戦で増田裕介に1-9で敗退



※コンバットレスリング・ビギナーズ選手権大会(4月25日(日) 町田市総合体育館サブアリーナ)も選手募集中です。[→詳細]

Last Update : 04/01

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