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(レポ&写真) [K-1 MAX] 2.24 代々木:コヒ、悲願の初優勝。KID、村浜をKO

FEG "エステティック TBC K-1 WORLD MAX 2004 〜日本代表決定トーナメント〜"
2004年2月24日(火) 東京・国立代々木競技場第二体育館  観衆:4860人(超満員札止め)

  レポ:石動龍&井原芳徳 写真:井原芳徳  【→大会前のカード紹介記事】  [→掲示板スレッド]

リザーブファイト 3分3R
×松本哉朗(日本/新日本キックボクシング協会・藤本ジム)
○TOMO(日本/正道会館)
3R 2'39" KO (左フック)


 2R開始早々、松本が左フックでダウンを奪うが、TOMOもパンチや変則的な左ハイを当て続け松本の鼻から出血を誘う。鼻を気にする素振りを見せるようになった松本に対し、TOMOは左フック。厳しい減量で圧倒的不利と思われたが、見事逆転勝ちをおさめ、第1リザーブ権を獲得した。

第1試合 一回戦(1) 3分3R
○小比類巻貴之(日本/チーム・ドラゴン)
×HAYATO(日本/FUTURE_TRIBE)
判定3-0 (中川30-28/黒住30-29/朝武30-29)


 パンチで積極的に前に出るHAYATOを、小比類巻はローとヒザで迎えうつ。HAYATOはかまわず距離を詰めるが、パンチの間合いになると小比類巻は首相撲からの膝を仕掛け、打ち合いを避ける。1R中盤、小比類巻の左ハイがHAYATOの首筋をとらえるが、HAYATOは効いたそぶりを見せずに反撃。逆にバックブローで小比類巻をぐらつかせる。
 2R以降も前に出るHAYATOだが、小比類巻はリズムを覚えたかボディへのヒザ、ローキックをカウンターで的確にあわせる。3Rには左フックが度々HAYATOの顔面をとらえ、小比類巻が完全に試合をコントロール。そのまま判定勝ちを収め、復活の第一歩を記した。だが敗れたHAYATOも健闘も光り、小比類巻も大会後「強かった。倒れてくれなかった。気持ちが強かった」とHAYATOを讃えた。

第2試合 一回戦(2) 3分3R
○武田幸三(日本/新日本キックボクシング協会・治政館)
×緒形健一(日本/シュートボクシング協会・シーザージム)
1R 終了後 TKO (タオル投入)


 最初から武田が軽いステップからロー・ミドル・ワンツーと攻勢。30秒過ぎまで全く手を出さなかった緒形だが、左ジャブでガードをこじあけると、拳を縦にした右アッパーを滑り込ませて武田のアゴをとらえ、追撃の左フックで先制のダウンを奪う。カウント8で立ち上がった武田だが、ダメージは明らか。試合を決めようと緒形はコーナーに詰めてパンチのラッシュを仕掛け、武田は顔面のガードを固めて防戦一方となる。パンチをもらう度に足がふらつき、鼻からは大量に出血した武田だが、再び倒されることはなく1R終了のゴング。
 2Rも武田にとって苦しい展開が続くかに思われたが、再開直前に緒形の師匠・シーザー武志SB協会会長がタオルを投入。まさかの結末に武田陣営や観客だけでなく、レフェリーもドクターもあっけに取られる。緒形はシュートボクシング2.1後楽園の試合で左膝を負傷。MAX出場を決めてから血腫が悪化し、ふくらはぎも肉離れを起こし、4、5日しか練習できない状態でリングに上がっていたという。武田からダウンを奪った時の踏み込みで再び足を痛めため、パンチも手打ちになり、武田を仕留めきれなかったことを明かした。

第3試合 一回戦(3) 3分3R
×安廣一哉(日本/正道会館)
○セルカン・イルマッツ(トルコ/チーム・ソラック)
2R 1'33" KO (2ダウン:右ストレート)


 「トルコの鳥人」というニックネームと回転系の大技を多用するファイトスタイルからダークホース的な扱いを受けていたイルマッツ。回転技を多用しつつも、空手の突きのような押し出すパンチを中心に攻撃を組み立て、安廣を圧倒。1R終了間際に左フックでダウンを奪うと、2Rもパワフルなパンチで安廣を2度マットに這わせ、準決勝に駒を進めた。

第4試合 一回戦(4) 3分3R
×村浜武洋(日本/大阪プロレス)
○山本“KID”徳郁(日本/PUREBRED東京)
2R 2'38" KO (2ダウン:パンチ連打)


 KIDは左右のフックで飛び込み、組み付いては村浜を投げ捨てる反則を犯しレフェリーから注意1を受ける。それでもふてぶてしくノーガードで挑発するKIDに対し、村浜はいつものような距離を詰めてのラッシュを繰り出せない。2分過ぎ、KIDの右フックがアゴをかすめ、村浜の腰が落ちる。KIDは右アッパーで追撃し、先制のダウンを奪う。それでも攻撃を続けるKID。カウントが数えられる中、KIDは再開が待ちきれないといった様子で、目を輝かせて笑みを浮かべる。
 2R、ゴングと同時にKIDが飛び膝で突進するが、村浜は冷静にさばく。KIDは村浜を場外に投げようとしたり、投げて背中を向けさせた後にパンチを放ったりと、ラフファイトは止まらず。再びレフェリーは注意1を出したが、本来ならイエローカードが妥当だろう。鼻血を出し焦りの表情の村浜。数度右フックを当てペースを掴みかけるが、飛込んで右ストレートを放ったところにKIDの右アッパーがカウンターで炸裂。大の字でダウンした村浜はカウント8で何とか立ち上がるが、KIDは好機を逃さずに再開直後にパンチラッシュ。レフェリーが試合を止めた。
 村浜には土曜のプロレス「スーパーJ CUP」トーナメント3試合の疲れやダメージもあったが、それ以上にKIDのハートの強さ、パワーとスピード、動態視力の高さといった、天性の格闘センスが光った。リングサイドで観戦していた魔裟斗もKIDの強さを認めていた。

 だが準決勝の前、角田信朗K-1競技統括プロデューサーがリングインし、KIDが一回戦で右手第2中指骨(人差し指の拳部分)を骨折したため棄権し、代わって第1リザーバーのTOMOが出場すると説明した。KIDの負傷箇所は昨年12月の試合を欠場した時と同じ。練習でも痛みがあり、完治していなかったという。かつては一回戦の勝者が棄権した場合、敗者が勝ち上がっていたが、02年のK-1 WORLD GPでホーストがサップに一回戦で敗れながらも優勝したことが問題となり、03年から第1リザーバーが1位に繰り上げられた。思えばサップの負傷箇所はKIDと同じ。野獣系ファイトといい、大物食いといい、KIDはわずか1試合で「MAX版サップ」の地位を得たといえるかもしれない。ちなみにセコンドが宮本正明というのも同じだった。

◆KID「拳は100%の状態ではなかったです。練習中も痛かったし。1回戦やってみて、拳さえ壊れなければいけると思った。ケガがわかって、俺は左だけでもやるって言ったんだけど、エンセンがダメダメって。医者も次があるからって言うし。トーナメントはキツイですね。体が丈夫じゃないと。決勝まで行くような人はスゴい。
 キックは初めてだったけど、まあイケるなって。勝ててちょっと自信は付いた。ただ納得はしてないです。体が思うように動いてくれなかったんで。出したい時にパンチが出せなくて歯痒かった」

◆村浜「(KIDの印象は?)よーわかりません。先手必勝をやられた。相手の(ラフな)戦法はある程度わかってたんですけど、全部付き合ってしまいました。今考えたらやれることは色々あった。スケジュールは言い訳になりません。自分で決めたことですから。(試合前『納得する結果を残せたらK-1から足を洗っても良い』と言っていたが?)このままでは納得できない。出たい気持ちはすごくあります」

第6試合 準決勝(1) 3分3R
○小比類巻貴之(日本/チーム・ドラゴン)
×武田幸三(日本/新日本キックボクシング協会・治政館)
2R 1'05" KO (右飛び膝蹴り)


 武田が一回戦同様、左右のロー、右フックで攻勢。様子見のつもりか?小比類巻は武田の攻撃を下がりながら受け続けるばかり。武田のローでスリップする場面も。終盤には小比類巻の右ハイが武田の額をかすめるが、1Rは武田のラウンドに。2Rも武田がローで攻める展開。だが小比類巻のセコンドの前田憲作から「コヒ!ジャブからテンカオ(飛び膝)」というカン高い声が響くと、小比類巻はアゴを突き出し、ステップを止める。これで武田の左右のワンツーを誘い出すと、数歩下がって距離を作り、軽く助走を付け一気に飛び膝。見事武田のアゴを撃ち抜き、真後ろに倒れた武田は鼻血を出して立ち上がれず。コヒはガッツポーズで大喜び。会場は割れんばかりの黄色い歓声に包まれた。

◆武田「緒形選手にはローが効いたのかな?小比類巻選手にもローが効いてるのがわかって、倒そうと思って力を入れてしまった。最後のヒザは見えませんでした。倒れてから、立とう、立とうって思ったけど体が言うこと聞かなかった。(初戦のダウンの影響は?) 全くありませんでした。すぐに意識が戻ったし、ダメージも小さかったので。今日は本当に調子が良かったです。自分としては勝ちたかった。持ち味は出せたと思います。大会への思いを込めてローを蹴りました。
(元旦に遺書を書いたことについて)格闘家である以上、リングに上がったらどちらかが死んでも恨みっこなしじゃないですか。その思いを形にしました。別に死にに行った訳では無いです。(今後は?)自分の引退はお客さんが決めることです。お疲れ様、ということならリングを降りる。自分としてはもっとやりたい気持ちです。」

第7試合 準決勝(2) 3分3R
○セルカン・イルマッツ(トルコ/チーム・ソラック)
×TOMO(日本/正道会館)
1R 2'13" KO (2ダウン:右ストレート)


 TOMOが右ローを効かせるが、イルマッツが左ストレートを当てるとじわじわと攻勢。TOMOをコーナーに詰めるとパンチの連打を仕掛け、強烈な右でダウンを奪取。TOMOは9カウントでなんとか立ち上がるも、足元はふらついており、イルマッツにコーナーに詰められ、膝を放った所で自ら崩れ落ちる。それでも試合は再開され、最後はTOMOの左とイルマッツの右がクロスしたところで、TOMOがまたも自ら崩れ落ち試合終了。TOMOはしばらく立ち上がることができなかった。公式記録では右ストレートがフィニッシュブローとなっているが、選手の安全を考えれば、最初のダウンの時点で試合を終らせるべきだろう。

第9試合 決勝 3分3R
○小比類巻貴之(日本/チーム・ドラゴン)
×セルカン・イルマッツ(トルコ/チーム・ソラック)
判定3-0 (中川30-28/御座岡30-28/大成30-28)

※小比類巻が優勝。MAX世界大会開幕戦(4.7 代々木第1)出場権獲得

 1R、小比類巻は顔面のガードを固め、愚直にローキックを繰り返す。ローがヒットするたびにイルマッツの足が流れ、ダメージが蓄積していくことを伺わせる。イルマッツはワンツー・左ハイ・バックスピンキックを組み合わせて嵐のような連続攻撃を仕掛けるが、小比類巻は完璧にガード。課題とされていたディフェンス技術の向上を見せる。
 2R以降も同様の展開が続く。小比類巻のローがヒットするたびにイルマッツの動きは鈍くなっていく。イルマッツもパワフルな反撃を繰り返すが、クリーンヒットさせることができない。小比類巻はダウンこそ奪えなかったものの、優勝のための手堅い戦法は「作戦通り」。トーナメントの優勝を決めるとともに日本代表の座を掴み取ることに成功。マイクを持つと「ホントの復活が今日できました。今日は俺の日でした」と安堵の表情で語った。

◆小比類巻「とりあえず今日がスタート。次は世界でこれからですね。HAYATO選手は強かった。倒れてくれなかった。気持ちが強かった。武田選手はスピードがあって動きが良かった。飛び膝は狙ってました。イルマッツ戦は作戦通りでした。今日は膝蹴り以外は良くなかった。これでは世界の選手に恐怖を与えられないですね。ここまで来れたのも、黒崎先生の所での修行も含めての成果です。今回は運も良かった。まだ油断できないですね。(亡くなったお父さんには何と伝えた?)『今からだぞ』って」

◆谷川貞治・K-1イベントプロデューサー「何が起きるかわからないという、K-1の原点に戻るような大会でした。今日はトーナメントで5試合もKOがあった。ヘビー級のような怪物的な選手のダウンじゃないので、リアル感がありますね。魔裟斗選手と元気選手抜きで不安はあったのですが、立見券が凄い売れましたし、コヒが優勝してくれたことで、MAX自体の安定を感じました。MVPはKIDですね。総合が逆にK-1に通用することを見せつけられた。世界大会の開幕戦は4.7代々木第一で、武田選手とKID選手が推薦枠候補です。KID選手には拳が治ればオファーを出したいですね」


第5試合 スーパーファイト 3分3R
○アルバート・クラウス(オランダ/ブーリーズジム)
×大野 崇(日本/inspirit)
1R 2'31" KO (右フック)


 序盤様子見のクラウスだったが、2分過ぎに右ハイでダウンを奪うと、さらに猛攻を仕掛け大野を右フックで粉砕。大野はしばらく立ち上がれなかった。

第8試合 スーパーファイト 3分3R
○フジ・チャルムサック(タイ/新日本キックボクシング協会・伊原道場)
×アースラン・マゴメドフ(ロシア/チヌックジム)
1R 2'27" KO (右フック)


 マゴメドフの素早いパンチが冴えたが、チャルムサックが強烈な右フック一撃で逆転勝利。ダウン直後のマゴメドフは痙攣していたほどで、しばらく立ち上がれず。この日は9試合中KOが7回。リングドクター泣かせの大荒れの大会だった。

Last Update : 02/25

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