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(レポ&写真) [DEMOLITION] 1.18 横浜:佐藤光留、無差別王者ジョシュに宣戦布告

GCMコミュニケーション "DEMOLITION 040118"
2004年1月18日(日) 神奈川・横浜赤レンガ倉庫1号館

  レポート&写真:井田英登  【→大会前のカード紹介記事】 【→掲示板・GCMスレッド】

第8試合 DEMOLITION MIDDLE WEIGHT 4MEN TOURNAMENT 決勝戦 -82kg契約 5分2R 
×中村大介(U-FILE CAMP)
○佐藤光留(パンクラスism)
判定3-0

「“新・無謀美”襲名? 俺が全部をひっくり返してみせる!」

「第1回ミドル級トーナメントの優勝者、佐藤光留です。俺は一年の99パーセント道場に居ます。今イズムだのグラバカだの言ってますけど、そんなのは関係ない。ちょっと負け越しているけど、すぐ全部俺が勝ってひっくり返してみせてやるから。お金とか、客の入りとか俺には関係ないんだよ。そんなものはあとから付いてくる。俺は“格”とか大嫌いなんだよ。ホントに格闘技が好きでしょうがない人間のために戦いたい。今、松本さんから“これから新しい戦いの幕開け”ということで言われましたけど、俺はジョシュ・バーネットと戦って、ウチの無差別のベルトを取り戻したい。今笑ってる奴がいると思うけど、もう俺はバーネットのことしか頭に無いんだよ!ちっちゃい奴を舐めるなよ。俺が絶対倒してやるからな」


村を判定で下した直後、佐藤は内心の鬱憤を解き放つように、一気に頂点取り宣言をまくし立てた。内容の妥当性は一旦横に置くとして、よくぞ言った。久しぶりに胸のすくようなマイクアピールを聞いたように思う。

パンクラシストにとって、無差別級のベルトはその頂点に君臨する「強さの象徴」である。昨年8月、近藤が両国で敗れて以来、高橋が破れ、そしてかつてのチャンピオン、セーム・シュルトまでが、ジョシュ・バーネットの豪腕の前に沈んだ。試合の前後に「新日本」の旗を誇らしげにかざす“外敵”に、その至宝を持ち去られた事を、もっと若い選手たちは意地になって悔しがらなければならないのではないか?

佐藤のマイクアピールは、まさにそんな僕の琴線にぴたりと来るものだった。聞けば、佐藤は年末も正月も、道場に引篭もって練習を続けていたという。年末の猪木祭りでのジョシュの戦いぶりを見て、悔しくて仕方がなくなり、正月も朝から大石と練習していたというから、その執念には並々ならぬものがある。

試合に勝てば当然の権利として、格闘技選手はマイクアピールを要求する。だが、悲しいかな大抵のそれは、“お礼羅列”か“俺はすごいぞ”宣言で終わってしまう。アカデミー賞の受賞スピーチの洗練を見習えとまでは言わないが、プロ選手にとってリングに居る全て時間が自己表現の舞台。もう少し気の効いた事はいえないのか?と思ってしまうことが多い。プロ格闘技選手である以上、自分のテーマを客と共有するためにマイクを握るべきであり、「こんばんわ」はラッシャー木村だけでいい。

その意味で今回の佐藤のアピールは百点満点といってもいい。



元々、11月の両国ではジョシュへの挑戦を会社に申請していたのだが、知名度不足を理由に却下されたという佐藤。今回のトーナメント延期は、期せずしてその“実績”作りの第一戦となった。「この一戦に勝たなければ何も始まらないと思っていた」と言う言葉も、ジョシュ戦実現に賭ける思いがあってのこと。

それだけ、この試合に賭ける気迫は突出していたといえるだろう。勝負はその佐藤に思い入れを反映して、気力体力を総動員した壮絶なものとなった。

試合開始早々、いきなり過剰なまでに強引な力任せの胴タックルで、中村をロープに押し込んだ佐藤。無駄な力みといえばそれまでだが、それでも佐藤は引かない。フロンとチョークに取った中村がグラウンドに引きずり込もうとすると頭を引っこ抜き、ブリッジで返そうとする中村の勢いに乗じて反転すると、いきなりヒールへ。何とか側転して付いていくのが精一杯の中村に対し、気迫、スピード、パワーでともに上回っている。

だが、中村と言う選手も追い込まれてからの切り返しが武器だ。佐藤のなりふり構わぬがむしゃらな攻撃の隙を突いて、すかさず腕十字を狙っていく。吊り上げた佐藤がパワーボム風にマットに叩きつけるが、さらに中村の仕掛けは深く佐藤の腕を捕らえる。本来なら万事休すになってもおかしくない局面だが、じわじわと腰を浮かせた佐藤は、中村の体をまたぎ越え、十字の仕掛けを外してしまう。

「明らかに気おされてましたね。すごい迫力があって」試合後うつむく中村はそうこのときの心境を振り返る。必死に腕に喰らい付いてくる中村に対し、攻め達磨となった佐藤はこれを蹴り離して、アリ猪木状態へ。ガードを飛び越して、サイドから鉄槌を振り下ろす姿はまさに鬼神状態といってもいい。バックを奪ってスリーパーを狙ったところでゴング。

続く2R。気持ちの上でのビハインドを跳ね返すように、飛び膝の奇襲に出た中村。しかしがっちり受け止めた佐藤はそのままタックルでテイクダウンを狙ってくる。だが、ピンチになるほど引き出しの増える男中村は、そのクラッチした腕をとってアームロック狙いからバックに回り込んでのスリーパーと、佐藤の闘志の裏をかく関節攻撃で切り返しを図る。だが締め上げられながらもサイドターンで切り返し、上のポジションとなる佐藤。このあたり、先月の試合中止の原因となった膝の怪我を引きずって「練習不足でした」とうつむくばかりの中村と、正月返上で練習漬け状態だったという佐藤の差が浮かび上がった気がする。粘っこいレスリングの強さは、やはり練習量に比例するからだ。バックを制した佐藤は、転がりまわって逃げる中村の背中に、バックマウントで張り付いてパンチを落とし続ける。ラスト10秒。決死の切り返しで足を取った中村だが、結局タップを奪うことは出来ずゴングを聞くことになった。

良くも悪くも、ジョシュという仮想敵に照準を絞って、気力を絶やさなかった佐藤の「気合勝ち」と言えるような一戦だった。美濃輪ばりの「無謀美」宣言が今後、即ジョシュ戦に結びついて行くかどうかは、あまりの体格差もあって疑問と言わざるを得ない。第一、ジョシュの前に並ぶためには、まだまだ佐藤にはこなさなければならない戦いがいくつもある。

だが、本来団体の枠の中で埋もれてしまいがちの若い選手に、ジャンプアップのチャンスを与える舞台として、DEMOLITIONの存在意義が際立ったことは間違いない。

第7試合 -82kg契約 5分2R
○岡見勇信(和術慧舟會東京本部)
×窪田幸生(パンクラスism)
1R 1'47" KO(グラウンドでのパウンド)

岡見は昨年10月、ロシアでのケージファイトM-1に参戦、アブダビに続いて二度目の海外遠征を経験した。結果はアマール・スロエフにTKO負けという手厳しい結果に終わったが、スロエフは今話題のレッドデビル軍団の中量級エース格であり、UFCでも戦った歴戦の強豪でもある。ホームDEMOLITION3勝、パンクラス2勝The Bestでも2勝と、国内では無敗街道を突っ走ってきた岡見にとって、逆にテーマはアウェイでの敗北経験をどう活かして見せるかにある。

最初、仕掛けに行ったのはこの日DEMOLITION初参戦となったパンクラシスト窪田。飛び掛るようにしてローを放ち、パンチの打ち合いとなると、組み付いてロープに押し込んでいく。しかし、この日の岡見は冷静沈着だった。差し合いで入れ替わると、リング中央に引き出し足掛けでテイクダウン。当然のように組み付いてくる窪田に対して、ゴンゴンと音が響くような強烈なパンチを落とし、殆どなにもさせないままワンサイドゲームで試合を決めてしまった。

これまで7戦中4戦が判定だったこれまでの岡見の戦績を考えると、短期決戦で相手の色を吹き消したこの結果は明らかに成長と言っていい。逆に窪田はこの日マッチメイクされたパンクラシストvsDEMOLITION MANの三試合の対抗戦の構図の中でも、本来大将格を勤めねばならないキャリアを持つ選手。このあまりにも不甲斐ない結果には猛省が必要だろう。

第6試合 無差別級 5分2R
○山岸正裕(YMC)
×日下 武(烏合会)
1R 1'01" KO

スキンヘッドに黒いマント風の被り物で登場の山岸は、往年の怪奇派ファイターフレッド・フロイドを思わせる怪しさ。しかし、その実態は一昨年のJTC全国大会準優勝の実力者でもある。

113キロ同士という“どすこい対決”の見所は、やはり迫力の在るパワーのぶつかり合い。タックルでグラウンドに引き込みたい日下。しかし、ガブって潰す山岸は、むしろスタンド勝負を望んでいた様子で、アトラクトユアオーディエンスから
のブレイクでチャンスを掴むと、右パンチを顔面にぶち込み、崩れた日下にさらにパンチを振り下ろして一気に勝負を決めてしまった。

第5試合 -74kg契約 5分2R
×山崎昭博(和術慧舟會駿河道場)
○アライケンジ(パンクラスism)
1R 1'23" KO

序盤のパンチラッシュでいきなりアライがフラッシュダウンを喫する、荒れたオープニングとなったこの一戦。さらに打ち合って二度目のダウンかと思われるシーンもあったが、これは直後にアライがタックルでフォローしたために流された。いきなりの絶体絶命のピンチに“火事場の馬鹿力”といわんばかりに、山崎を抱え上げてファイヤーマンズキャリーで叩きつけるアライ。さてグラウンドでしばし時間稼ぎかと見たところ、なんとアライは自分から立って再度スタンド勝負へ。その直後、ジャストミートの右フック一閃(写真)を放ち、逆転KO勝ちを決めてしまった。

良くも悪くも活きのいいケンカ番長ぶりを見せたアライが、一人で起承転結をつけたワンマンショーだった。

第4試合 -68kg契約 5分2R
×NUKINPO!(P's LAB東京)
○takinpo?(和術慧舟會東京本部)
※滝田J太郎がこの大会のみリングネームを「takinpo?」に変更
判定0-3

徹底したプロ意識(芸人根性)なのか? それとも究極のアマチュアイズム(独りよがり)なのか? DEMOLITION開始以来観客不在のゴリ押しで進められてきたJ太郎劇場。

今日のテーマは「冬」とのことで、BGMは「東京ラブストーリー」(例によってカラオケボックスで収録のチープで聞き取り不明の寸劇(?)がカブッたもの)ニットキャップにスキーグラスを付けての入場は、スキー場をイメージしたものと思われるが、いつもの捲りあげTバックで生っ白い尻を突き出しての滑降ポーズに、客席は唖然、騒然、憮然の表情に分かれる。そんなことは知ったことかと、先頭のJ太郎、いやtakinpo?とJボーイズは恍惚の表情で花道狭しと踊りまくり、会場の温度を氷点以下に引き下げた。いや、まさにテーマは「冬」。

必殺のリングネームを安易にパクられて憮然とした表情のNUKINPO!は早々に勝負をつけて帰りたいと言わんがばかりだが、リングに入ってもtakinpo?はまだ自己満足の世界から抜け出さず、片手を振り上げた決めのポーズを披露。カメラマンが放置してシャッターを切らないでいると、いつまでもポーズを決めたままでリングに立ちふさがり、目線でシャッターを要求する厚顔無恥ぶりを発揮。この男、相当スター気取りである。

さて本編だが、タックルに徹するNUKINPO!に対し、takinpo?(と呼ぶのが面倒くさいのでJ太郎呼ばわりするが、派手な毛のあるほう)がこれを潰してパンチを叩き込む展開が目立った。2R終盤にはJ太郎がバックマウントを取ってスリーパーを狙う絶好のチャンスを得ながら、逆にメクラ打ちのバック鉄槌を食って決めそこなうなど、トホホな展開もあり判定へ。スタンド、グラウンドともに力量には相当差があるように見えたが、それで一本決着にならないのはいかがなものか。

「ウチのおかあちゃんは、昨日までNUKINPO!ってガイジンと思ってたらしいです」と珍しく冴えたネタを披露したマイクパフォーマンスはいいとして、今回一本決着の多かったこの大会の中で見ると、試合内容は決して高い位置には置けない。そろそろ、試合でもビシッと決めてくれないと、パフォーマンスだけの自己マン男で終わってしまうが、いいのか?>J太郎。

第3試合 -90kg契約 5分2R
○白井祐矢(アンプラグド国分寺)
×秋元駿一(和術慧舟會岩手支部)
判定3-0

第2試合 -62kg契約 5分2R
○築城 実(P's LAB東京)
×浜路康高(YMC)
2R 0'32" フロントチョーク

第1試合 -97kg契約 5分2R
×小谷野澄雄(烏合会)
○スチュワート・フルトン(XXX)
判定1-2





Last Update : 01/20

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