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(レポ&写真) [キングダム] 12.29 多摩:入江、エルガイツルールで初勝利

キングダム・エルガイツ "入江祭り THE ガチ 〜佐伯血祭り〜"
2003年12月29日(月) 東京・エキサイトスペースZ-Zone

  レポート&写真:井田英登  【→大会前のカード紹介記事】

メインイベント エルガイツルールレベル3(肘・頭突きあり) 時間無制限
○入江秀忠(キングダム・エルガイツ)
×金家充幸(育心館/空手)
0'49" グラウンドでの6秒以上の一方的連打


今年、入江がぶち上げたノーブレイク・ノーレフェリーの過激ルールエルガイツルールは各方面で波紋を呼んだが、お得意の乱入パフォーマンスで参戦表明を行ったDEEPやIKUSAなど他のリングでは、結局対戦を名乗り出る選手を得ることの出来ない状況が続いている。その間にもキングダム本体では若手が順調にこのルールでの試合をこなしており、提唱者の入江がこの危険なルールを経験しないままでは、“狼少年”のそしりを受けても仕方が無い。今回、年末の最終自主興行で、初のレベル3(肘、頭突き、4Pヒザあり)ルールに当人が登場する覚悟を決めたのは、こうした批判の声に対して入江自身のやる気を証明して見せるための“禊”であったのかもしれない。

ただ、前回大会で入江が行った対戦相手公募にも名乗りを上げる選手は出ず、一時はカード消滅の危険もあったという。実際、プロ選手としては“乱入王”の色物ギミックで売る入江だが、寝技の実力はアマチュア時代の実績を見るまでもなく(全日本アマ修斗ヘビー級優勝、コンバットレスリングヘビー級優勝)このクラスでも屈指のものとして知れ渡っている。なぜこのポジションに甘んじているのかが疑問になるほどの選手だけに、うっかり戦って負けた場合リスクの方が圧倒的に大きい。まして、この危険なルール設定に、中央シーンとは隔絶した多摩でのインディ興行という舞台設定もある。通常の格闘技選手の発想では、あえて自分から挑戦の手を上げることはまず考えられない。にもかかわらず“公募”をぶち上げてしまうのが、“格闘技界の大仁田”とまで言われてしまう入江のアクの強さでもあるのだろう。結局キングダムレギュラーメンバーの中から金家が抜擢されたものの、若干カードとしては帳尻合わせの感は免れない。

だが「通常のキングダムルールだったらともかく、肘、頭突きありとなると空手家の金家には一発があるし、非常に危険な相手になると思った」と入江当人が振り返ったように、MMA的実力が格下だからといって、即安全パイとならないがエルガイツルールの怖い部分でもある。従来の入場時にも空回りに見えるまでの真剣さを強調する入江だが、今回の入場時の表情はパフォーマンスを越えて硬ばったもので、“出入り前”の緊迫した空気を漂わせていた。NHB復権を謳ったこのルールのヤバさを提唱者自身として、十分自覚していることが感じ取れる。対する金家も妻と幼い我が子をリングサイドに伴い、並々ならない“異種格闘技戦”の緊張感を漂わせる。正味のところ、取材前はカードの甘さもあって、顔見世程度の試合と高をくくっていたのだが、チーフオブザーバー(レフェリー)に、前回このルールを身をもって経験した盟友秋本じんを迎えるなど、入江が万全の体制でこの“果たし会い”に挑んでいることが感じ取れた入場シーンだった。

開始と同時にぶちかまし風に有無を言わさない勢いで、金家をコーナーに押し込んだ入江。足を刈ってテイクダウン。そのままマウントを奪っての連打へ。オブザーバーが身を挺して両者の間に飛び込んだものの、緊張の極致からかしばらくパンチを振り下ろし続けた入江の鬼神の表情が印象に残った。

結果としては前回の秋本vs舘戦同様全くのワンサイドゲームで終わった。しかし、相手を完封しなければ、大怪我を喰らいかねないというこのルールの怖さ、リアルさは十分客席に伝わったと思われる。


【試合後のコメント:入江】
「いやー、緊張したね。緊張した。正直怖かった。ヤバイよ、このルール、やっぱり。肘、頭突きありで一発どこで貰っても怪我すっからね。DUEL(金的、生拳あり)なんかまずやれないな。怖いよ。ま、でもわかったでしょ。俺がちゃんとヤル気あるって。来年こそ、もっとこのルールをみんなに判ってもらおうと思ってるんで、やっぱり外の団体でもっと力のある選手とやっていきたいな。禅道会の百瀬とか、DEEPに今度出る松井もいいよな。あと滑川とか長南とか。外人ならタンク・アボットとかでもいいんだけど、佐伯は金も根性もないんで組んでくれないんだよ(笑)だから大事にしてるドスぶちのめして、目覚まさせてやりたいんだけど。なんか根性ありそうで、ヤバいルールのほうが光りそうな選手がまだ一杯いるじゃない? ああいう人たちとガンガンやってみたいんだよね。金家で、怖いって言ってて悪いんだけど、今日は正直試運転だからね。とにかくそんなガチで怖い試合をやりたいんだよね。
 格闘技が猪木祭りとかPRIDEとか地上波でやって、一般に普及していくのはいいんだけど、俺としては真剣勝負の怖さがちゃんと伝わってるのか疑問なんだよね。これはやるほうの気持ちの話なんだけど、格闘家が安易にプロレスへ行っちゃうのも、その辺選手がナメ始めちゃってる気がするんだな。総合がルール整備されて、安全なスポーツになっちゃって、気持ちが緩くなっちゃってるんじゃないかなぁ。そうなったら、プロレスもガチもそんな変わんないって気になっちゃうじゃない? 俺はプロレスはプロレスで素晴らしい存在であって欲しいし、格闘技には格闘技でしか出せない怖さ凄さを見せたいからね。俺らは苦労して、プロレスしかないところにどうやったら真剣勝負でプロになれるか考えて苦労して、ここまで誰にも頼らずに来て、やっとこういう試合できるようになったわけじゃない? 弟子とかでも勘違いしちゃった奴も居るし、俺自身ちょっと回り道しすぎたなあとも思うし。若い奴にはだからもっと真剣勝負にも、プロレスにももっとこだわりもってやって欲しいよなあ。昨日も佐伯祭に顔出して思ったんだけど、アレなんかモロそれだよ。やっぱその辺曖昧になってきてるよね。見た目は線引いてるんだけど、気持ちは凄く曖昧って言うか、ナアナアでさ。逆にあれじゃプロレスもバカにしてるし、普段自分たちのやってることもダメにしちゃってないか? って思うけど、どうだろ? いろいろ意見があるだろうから、他人のことはあんまり言いたくないけどさ。俺も、試合前はギミック風でやってっしね(笑)だから嫌がらせに「なんでだろー」の替え歌で、佐伯に皮肉言ってきて、今日のチラシ撒いてやったのね(笑)ここでも歌おうか?いらない?(笑)
 とにかく、そこはっきり一線引くためにヤバいルールでやろうぜってのがNHBの始まりだったと思うから。今日はあえて俺の名前つけて“THEガチ”って言ってるのもそこなんだよね。自分で一番ヤバいルールでやって見せて、ケジメつけたつもり。佐伯の考えなんか甘いし、俺は違うと思うよってことで“佐伯血祭り”なんだし。DEEPで“佐伯さん佐伯さん”って金魚のフンみたいに媚売ってる奴も文句あったら、俺とこのルールでやってぶちのめしてください。このルールなら軽い奴でも重い奴でも誰でもいいんだし、竹内とか鬼木とか居たじゃない。俺を大阪で襲ったくだらない連中。ああいう奴はケンカなんだから、ちゃんと来ればいいんだよ。やってやるし。リングの外で後から襲うのは反則だけどね(笑)ということで、来年もあっちこっちケンカ売って乱入しますんで、1回でいいからちゃんとケンカ買って下さい。よろしくってことで、ハイ(笑)」

セミファイナル キングダムルール 95kg契約 15分1R
○高野圓真(キングダムエルガイツ)
×太田光一(ハイブリッドレスリング山田道場)
4'17" チョークスリーパー


2003年シーズン、フリーとしてキングダムを中心にアレクサンダー・ロバーツ戦U-Fileでの中村大介戦と強敵との対戦を順調にこなしてきた高野。結果こそ黒星が並んだが、試合内容は豪快な打撃を武器に、若手らしい正面突破を試みた中身のあるものが続いている。182センチ97キロの恵まれた体格を持ち、アマ戦績もPRIDE THE BEST選考会一位、2002年全日本アマ修斗クルーザー級準優勝と申し分が無い。今回晴れてキングダムエルガイツ所属となり、プロ選手としてのデビューを果たすことになった。対戦相手は2002年アマチュアパンクラス120kg級王者の太田光一。パンクラス参戦を来年の目標として挙げている高野としては、どうあってもクリアしておかねばならない一戦だ。

肉体改造で体脂肪を7パーセント以下に絞ったという高野。重いローに切れが加わった観があり、序盤から太田をぐらつかせる。組み崩してからのグラウンドでも自ら仕掛けた三角締めは成功しなかったものの、マウント〜バックマウントと付け入る隙を与えず、そのままスリーパーでタップを奪って見せた。

既に1月のJ-do東京大会でのメイン抜擢が決まっており、2004年は入江同様外部での戦いを増やしていきたいと言う高野。グラウンドでの甘さがまだ目に付くが、思い切りのいいストライカーとしての魅力は捨てがたい。インディシーンでブレイクが期待される若手の一人として、マークしておいていい素材の一人だろう。

J-DO提供エキシビジョンマッチ(実践柔道ルール)
△柊 嘉実(都立大柔道部)
△馬場龍行(極真城西国分寺支部)

キングダムルール ライト級10分1R
×薬師寺浩之(キングダムサテライト)
○ラサールおさみ(ワイルドフェニックス:ライト級1位)
ロストポイント(1E:フロントチョーク)

序盤からパンチ攻勢で押せ押せムードを作った薬師寺だったが、そこは“オヤジ”の強みで、ノーガードに切り替えて挑発するなどの心理戦でラサールが撹乱していく。パンチはヒットはするものの決定的なダメージを奪えない事に焦ったか、タックルで飛び込んだ薬師寺。その“青さ”に付け込んだラサールは、まんまと首を取ってフロントチョークに極めエスケープを奪う。結局、このワンロストで逃げ切ったラサールが、ベテランの老獪さをみせた一戦だった。

キングダムルール ミドル級10分1R
○大地マン(チーム・ストライカーズ)
×木村プロ(WPV)
9'29" アームロック

キングダムルール クルーザー級5分1R
×安藤深夜(格闘技道場・信)
○谷崎智行(秋本道場ジャングルジャンクション)
0'18" チョークスリーパー

グラップリングバウト5分1R
△菅野敦志(G-イタクラ)
△篠田洋平(秋本道場ジャングルジャンクション)

キングダムルール スーパーミドル級5分1R
○森下慶太(G-イタクラ)
×草木原竜介(フリー)
エキストラポイント3-0

 

 

 

Last Update : 01/15

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