BoutReview
記事検索 by google
news

(レポ&写真) [PRIDE武士道] 10.5 さいたま:ミルコ、46秒の“公開処刑”

ドリームステージエンターテインメント "PRIDE 武士道"
2003年10月5日(日) 埼玉・さいたまスーパーアリーナ  観衆・12,430人(満員)

  【→大会前のカード紹介記事】   [→掲示板・PRIDEスレッド]

  Perfect Choiceミルコの一撃を見よ! 13(祝)迄スカパー!でPPV。アンテナ&チューナーセット今なら実質7800円!


メインイベント 1R10分・2R5分
○ミルコ・クロコップ(クロアチア/クロコップ・スクワッド)
×ドス・カラスJr.(メキシコ/ファス・バーリトゥード・システム)
1R 0'46" KO


「王座挑戦への試運転」とうそぶくミルコの対戦相手とはいえ、ついにPRIDEのリングにスカイハイが鳴り響くことになろうとは。一方ミルコも11月のドームでのタイトルマッチという流れは相当の無茶なスケジュールである。

広めにリングを使って右に廻るドス。ドスが組んで来ると突き離し、中間距離をキープしようとするミルコ。逃げ切れずコーナーに詰められた途端、ハイキックがドスのマスクに打ち込まれ、ドスの腰が落ちる。さらに失神状態にあるドスに、フォローのアッパーをぶち込む非情をみせて、短過ぎる“公開スパー”は終った。ドスはこの一撃で、頭部をぱっくり割られた。

「ゲンキデスカ。知ってる日本語はこれだけだ。11月ヒョードル戦で会おう」
と言い残してミルコはリングをおりた。

◆ミルコ「(試合の感想は?)自分と同じリングに上がったドス・カラスJr.選手に敬意を表します。試合は思ったとおりに早く終わりました。(相手がマスクをしていたことについては?)私自身はそういったこと(マスク)はしないが、相手の選手が(マスクなどで)イメージを作ったり入場することは別に良いと思います。まぁ、自分のスタイルには合わないけれど。(今回の試合で調子をピークに持って行きたいとのことだったが?)この試合の目的はコンディションをピークに持って行くという事だったので、調整時間的には少々短かったが、結果的には目的を果たすことが出来たと思っています。
(ヒョードル戦に向けてのプランは?)明日の朝からもう予定が入っています。今日の試合もヒョードル戦に向けてのトレーニングの一つでした。帰国したらすぐに山の方へ。家にはちょっと顔を出すだけで、トレーニングに入ります。(フィニッシュとなった左ハイキックの入り具合は?)完璧では無かったけれど、強い当たりでした。入り具合ははっきりしなかったのですが、効いたようなのでそのまま試合を終わらせに行きました」

◆榊原信行・DSE社長「ミルコはこちらのこうして欲しいという要求以上の試合をしてくれました。ヒョードル戦は両陣営の間で最終調整して、今から1週間で決めたいです。(東京ドーム大会のメインとなる可能性は?)ありえますね。
(武士道という大会自体の感想は?)始めて良かったです。今年度以内に第2弾をやりたい。(日本人選手は?)三島が頑張って、小路もハングリーで良かったのですが、他の選手はプロとしてはまだこれからですね」

◆佐伯繁・DEEP代表「ドスJr.選手ですが、右のこめかみのあたりを5針ほど縫っています。代わりにコメントを伝えますと、『一生懸命練習してきたのですが、予想以上にハイキックが速くて見えなかった。やはり世界のレベルは高い』と。また、『オファーから時間的にも厳しかったので。少し休んでから、また頑張ります』とのことです。本人は元気ですので。少し機嫌が悪いかな、ってぐらいで(笑)
(DEEP代表としての感想は?)強かったですね。私も、ドス本人も、タックルでもうちょっと行けると思ったんですが、プレッシャーが凄くて試合中は回ったりしすぎてしまいましたね。残念な結果には終わりましたが、これからも練習をして強くなって、ウチ(DEEP)もそうですし、武士道にも出てくれると思いますんで。頑張ります。」



第7試合 1R10分・2R5分
○エメリヤーエンコ・アレキサンダー(ロシア/ロシアン・トップ・チーム)
×アスエリオ・シウバ(ブラジル/シュートボクセ・アカデミー)
判定2-1


“兄弟シリーズ”第二弾はチャンピオンヒョードルの5歳下の弟アレキサンダーが登場。197センチ120キロの巨体は期待大。対するアスエリオ怪我から二年ぶりの復帰。早いパンチのワンツーから払い腰でテイクダウン。抱き着くアスエリオを押しつぶすかの勢いを見せる。足を取りに行くアスエリオだが突き離し、スタンドでは再度パンチで吹き飛ばすタックルで必死に抱きつくアスエリオにひたすらワンツーを飛ばすアレクサンダー。ふりまわすようにしてグラウンドに持ち込むアレクサンダー。ガードでしのぐアスエリオに上からのパンチを振り降ろす。兄の特有のサイドからのグラウンドパンチとは性質が違うようだ。強引なパスからバックを取ったもののでかすぎてアスエリオの背中を転げ落ちたアレクサンダー。キックで蹴り離してスタンドに持ち込んだアスエリオだが、またもや振り回されてテイクダウンされパンチを浴びる。なんとか隙をついて立ち上がったものの、また強引にバックから押しつぶされてグラウンドに持ち込まれてしまう。この体格差はいかんともしがたい。下からパンチを食ったこともあってアレキサンダーも鼻血を流しているが、大きなダメージは感じられない。

 ここで両者にイエロー提示でブレイク。スタンドからの再開でパンチが交錯するが、また組まれて、薙ぎ払うような足払いでテイクダウンされる。下からのパンチでアレクサンダーのプレッシャーを押し返すアスエリオ。なんとかべったり押さえ込んで、アレクサンダ−優勢のまま最初のラウンドが終った。

 セコンドに付いた、ヴァンダレイ・シウバ、フジマール会長の強い叱責を浴びて、ジャンピングパンチ、派手な前蹴り、そして相手の巨体を持ち上げてのタックルとアスエリオの攻勢が始まった。マウントを奪取したアスエリオ。抱き着くアレキサンダー。パンチを食って亀になったアレキサンダーにバックマウント、千載一遇のチャンスにスリーパーを狙って行く。どうやらアレキサンダーは巨体だけにスタミナが切れるのも早かったようだ。何とか首をディフェンスするアレキサンダー。アスエリオは側頭にパンチを入れて行くが、アレクサンダーが半身をおこして強引にスイープ。上になったのをいいことにパンチを入れて行くが、ここでまたもや両者イエローのブレイク。残り一分の再開で右パンチをいれるアスエリオだが。すぐ組まれる、意地でタックルにいったアスエリオだが、潰されて下に。

 パワーは十分発揮したものの、スタミナ経験ともにまだ未完成さのみえるアレキサンダーに、ジャッジの判定は2-1と分かれ、辛勝でデビュー戦となった。

◆アスエリオ「今日は自分らしくない試合をしてしまいました。今まで一生懸命練習してきたことをリングの上で発揮できませんでした。相手はとても良い選手でしたが、いつも通りの自分の力を発揮できれば勝てたと思っています。ですから、ぜひリベンジ・マッチをお願いしたいです。」
(アレキサンダーはダメージが大きいためノーコメント)



※ここで高田延彦・PRIDE統轄本部長がリングに上がり、吉田秀彦とヴァンダレイ・シウバを呼び上げる。「俺はチャンピオンだ。ノックアウトしてやる」と吠えるヴァンダレイに対して、吉田は「ほどほどによろしくお願いします。あとは11月9日に決まると思いますんで」とクールに切り返す。高田本部長は「あえてチャンピオンに挑んだ秀彦、お前は男だ、サムライだよ」と例によって”高田劇場”でドームへの前景気を煽った。

第6試合 1R10分・2R5分
×小路 晃(日本/フリー)
○マウリシオ・ショーグン(ブラジル/シュートボクセ・アカデミー)
1R 3'47" KO


 ムリーロ・ニンジャの弟、ショ−グンがPRIDE上陸を果たした。エバンゲリスタ・サイボーグを下すなどの活躍は既に知られる所だ。セコンドにはヴァンダレイ・シウバの顔もある。既にベテランの域にある小路はいいリトマス試験紙といったところか。
組んで来たショーグンを組倒して上を取った小路、いきなり足をとって膝十字を狙っていき会場は沸き返る。しかし外したショーグンは立ち上がり、リーチを活かした膝で迎撃。アクシデントの金的で試合は止まったものの、伸びのある蹴りが再開後も小路を襲う。右フックで迎撃した小路。グラウンドにはいっても下から踵で蹴る等、隙がない。立ったショーグンは綺麗なストレートで小路と打ち合う。組んでマウントを奪った小路だが、勢い余って前に落ちてしまう。スタンドに戻った所を鋭い左右が小路の顔面を襲う。打ち返す小路のパンチはすべてかわされ、フォローの左でダウンした小路の顔面に、踵が振り降ろされたところでゲームセット。噂通りの強さを発揮した。

◆ショーグン「(小路の印象は?)凄く良いファイターだと思いますが、自分はシュートボクセの一員として絶対に勝ちに行きました。(今日の作戦は?)作戦はたてて来ませんでした。今まで練習してきた通り、自分の得意のパンチを出していっただけです。(ショーグンというリングネームは?)とても気に入っています。5年前にムエタイを一緒に練習していた友人がつけてくれました。何故ならお兄ちゃんがニンジャだから。ニンジャよりショーグンの方が偉いって事はもちろん知ってます(笑)」

◆小路「打撃はアメリカでモーリス(スミス)、マット(ヒューム)、ジョシュ(バーネット)と練習してきたんですが、全然出せなかったなぁと。熱くなってしまって打ち合いすぎてしまって。ペースは師匠であるマット・ヒュームと作戦を立てた通り、テイクダウンして上になっての繰り返しになると思っていました。最初は良かったんですが、途中で打ち合ってしまったので・・・。ただ、今までは(テイクダウンしても)上に乗っかっただけの状態の事が多かったんですが、今日はヒザ十字、腕十字とトライしてみようと思っていた事ができたので良かったかなと。すぐにアメリカに戻ってもっともっと練習をしたいと思います。
(相手の勢いは?)シュート・ボクセスタイルだと最初から思っていたので、打ち合わずにすぐにテイクダウンに行けばよかったのですが、打ち合ってしまったので。勢い、突進力はあったんですが、力負けはあまりしなかったので、機会があったらまた戦いたいです。」


第5試合 日本vsグレイシー・大将戦 1R10分・2R5分
×浜中和宏(日本/高田道場)
○ハイアン・グレイシー(米国/ハイアン・グレイシー柔術アカデミー)
1R 7'37" KO


 ついに大将戦に持ち込まれた対抗戦。ホドリゴの使ったロビンマスクにサッカー日本代表のユニフォームを着た意味不明のハイアンが、グレイシー一族を引き連れての登場。一方浜中は、氣志團の「ワンナイトカーニバル」にガクラン姿。サングラスに短髪はご愛嬌だが、背中にはしっかり“高田道場”の縫い取りで登場。

 両者慎重にファイティングポーズで距離を取り合うが、まずハイアンが片足タックルで襲い掛かりテイクダウンして上を取る。密着する浜中。だが右のギロチンで気道を閉塞されてパンチを貰い、苦しい姿勢が続く。抱き上げたハイアンの動きに乗じて立った浜中だが、かんぬきスープレックスを潰されてマウント、バックマウント、チョークと一気に狙われてピンチが続く。何とかレスリングテクニックで脱出を狙う浜中だが、ハイアンは慎重なバランスでバックをキープ。腕を狙っていくなど、意外なほどのテクニシャンぶりを発揮する。ブレイクがかかり、浜中にイエローが提示される。

 スタンドからの再開で、左のフックで攻め込んだハイアンをガードした浜中だが、続く右もガードしながら、奇妙なダウンを見せる浜中。どうやら、空足を踏む形で右膝を痛めたようだ。だが、すかさずハイアンはその顔面にキックを浴びせ試合終了。

 試合後、対抗戦の3−2の勝ち越しを誇るハイアンは「ヨシダ、カカッテコイ!」と喚き、一瞬リングサイドには緊張が走る。続いて「今日の勝利はグレイシーvs日本ではない。日本vs日本の引き分けだ。もし我々が勝ったとしてもそれは、日本のファンの勝利だ」と年来の主張を勝利で裏付ける形で語り、これまでのヒール扱いを払拭するアピールを見せた。フォローしたホイスが「今日はレフェリーに勝負を決められなくてよかった」と続けるが、場内は勝者を祝福する空気が強く、年来のグレイシーバッシングも大分薄れた気配が見られた。

◆ヘンゾ「今日の5対5マッチは柔術界にとって、とても大切なイベントだったと思う。私達は本当に強いチームを揃えてきたが、日本人チームもとても強かった。だが今日は私達が上であるということを証明できたと思っている。そして次回は5−0で勝つつもりだ。」

◆ハイアン「浜中はとてもタフだった。桜庭と同様に高田道場の選手は素晴らしく、強い選手だ。しかし、ぜひ私は吉田と闘いたい。なぜ今日、彼は監督という立場だけでリングにあがってこなかったのか? 私だけでなく、ヘンゾ、そして私達全員、吉田と戦いたいと思っている。『ヨシダ、カカッテコイ!』という気持ちだ。」

◆浜中「(最後は膝が?)はい。膝が外れました。外れて倒れたところにそのまま…。膝はもともと学生の時から良くなかったのですが。最初のスタンドで詰めて行ってタックルを受けたときに踏ん張ったら少し抜けてしまって、もう一度スタンドになった時にまた抜けてしまいました。本当に申し訳ありませんでした。(当初の作戦は?)スタンドで詰めて、そこから打撃を入れ、ハイアン選手がタックルに来たところをガブって膝を入れて行こうと思っていたんですが。自分の膝が効かなくて申し訳ありませんでした。(ハイアンの感想は?)アグレッシブで素晴らしいファイターだと思います」
 

第4試合 日本vsグレイシー・副将戦 1R10分・2R5分
×高瀬大樹(日本/フリー)
○ホドリゴ・グレイシー(ブラジル/グレイシー・バッハ・アカデミー)
判定0-3


 ホドリゴはまたもやアニメオタクぶりを発揮。「キン肉マン」のテーマをバックに赤の道衣にはおよそ不似合いの“ロビンマスク”を着用して、大はしゃぎの入場。一方重厚なテーマ曲の高瀬は、オレンジのガウンを着流しに見立てて、日本刀を腰にさしての“武士道”パフォーマンス。抜き身を振り回して気合いを入れる。セコンドにはマッハ出場をせき止めたU-FILEの長南亮の姿もある。

 低い構えで威嚇するサウスポーの高瀬。大きな右フックで飛び込んだホドリゴだが抱き着いてお得意の引き込みを見せる高瀬。後頭部パンチを入れてしまったホドリゴだが、高瀬が指摘すると撫でてやるホドリゴという笑えるシーンもあった。ホドリゴが立ってアリ猪木になったものの早いブレイクがかかる。

 今度は高瀬が左を振って抱きついていくが、ホドリゴはすぐ足払いに行く。立って組み合い、再度引き込んだ高瀬。下から素早く三角を狙って行く高瀬だが、ホドリゴも距離をキープしながら仕掛けを外して行く。試合の作り方がクレバーなのがホドリゴの特徴だが、高瀬との距離をうまくコントロールしながら時おり上からのロングフックを打ち込む。高瀬も下からの腕狙いにいくなど、中盤から後半は地味ながら緊迫した攻防が続く。

 2Rは若干消耗した感じのホドリゴに対して、高瀬は大きく変わらない表情。大きな右フックを振っていったホドリゴ。すぐ組んだ両者だが、押し込んだホドリゴがテイクダウンに成功する。ここで高瀬が鼻の頭を流血。パンチを貰ったか。タックルに行った高瀬を潰して膝を頭に見舞い、すぐフロントチョークで引き込んだホドリゴ。首を抜いた高瀬は上になる。桜庭譲りのモンゴリアンチョップを食らわす高瀬。ブレイクで両者にイエロー。また右の大きいフックで飛び込んだホドリゴ。組んで膝を返す高瀬だがホドリゴの押し込みでコーナーへ。離れ際の振り降ろしの右フックで高瀬の動きが鈍くなる。なんとか膝を返す高瀬。組んでいくと下からアッパーを飛ばすホドリゴ。高瀬は前回見せた変幻の動きを見せられず、ホドリゴの打撃に差を付けられた形に。これ対抗戦は2vs2のイーブンに。

◆高瀬「一言、喋っていいですか? 練習不足で負けました。また次回がんばります。よろしくお願いします。(両肩をがっくり落とし、この一言を発するのが精一杯といった様子で自らマイクを置き、インタビュースペースを後にした)」
 

第3試合 日本vsグレイシー・中堅戦 1R10分・2R5分
○中村和裕(日本/吉田道場)
×ダニエル・グレイシー(米国/ヘンゾ・グレイシー柔術アカデミー)
判定3-0


 中村はロシアンフック風の大きなフックを見せ成長を見せるが、ダニエルも組み付いてすぐ上になる。だがグラウンドは中村も得意。すぐスイープして鋭いパンチを落とす。早いショートフックを返すダニエルだが、上をがっちり制した中村が一枚上手の印象。蹴り離しにいくダニエルに対し、中村がねばっこく押さえ込みにいく。ヒョードルを思わせるグラウンドパンチを見せる中村。デビュー以来半年のVT研さんの跡が見える。対するダニエルは下からの十字を狙っていき、重厚な攻撃が交錯する。中村がいいパンチの弾数を重ね若干攻勢の印象か。ダニエルはパンチ封じに首を取っての密着を試みるが、抱き着かれながら距離をキープした中村が大砲のようなパンチを食らわす。ダニエルはオープンの足先を器用に使い中村を蹴り離しにいくが、その足を跨ぎ越してハーフに。柔道vs柔術の構図がちらつく。ダニエルが再度蹴り離して、スタンドになった両者。スタンドでの距離があまい中村はダニエルのローを浴びるが、決定打にならずゴング。

 セコンドに付いた日本軍総監督で、中村の師匠にあたる吉田秀彦がリングに上がってインターバルにも檄を飛ばす。パンチで出たダニエル。中村も組み付いてローを放つ等一方的には攻めさせない。ロングフックで攻めこんだダニエルを迎え撃ち、大きな右をあてて押し返す中村。組みに行った中村だがダニエルはロープをつかんでテイクダウンを避ける。なおかつ組みに来る中村の首を取ってフロントチョークで引き込むダニエル。首を抜いた中村は上になるが、腕をつかまれてパンチが出せない。ブレイクがかかり、再度スタンドへ。両者にイエローが提示される。

 中村の左とダニエルのローが交錯し、打ち合いに展開しそうな流れになったところでゴング。パンチでの攻めに徹した中村が判定勝利をもぎ取った。試合を終えた中村はマイクをとり「一本が取れなくてすみませんでした。今、持てる力をふり絞って戦いました。今度は一本取れるようにがんばります」と宣言した。

◆中村「(初勝利の感想は?)イテテテテ。言い訳になるんですが、今回は風邪をひき体調を崩していて。セコンドや練習や色々な人に支えられて今までやってきたので、それを裏切れないという気持ちで、勇気をもって苦しいときも前に出ようと。きつい場面も何回かあったのですが、なんとか勝つことができました。すごく嬉しいです。
(2R終わって笑顔が無かったが?)ポイントは取ったと思ったのですが、何があるかわからない世界なので、気を緩めないようにしていました。
(どういう形で一本取ろうと思っていた?)打撃でぐらつかせて、相手のスタミナが切れたところで十字、絞めを狙っていたのですが、相手も強いのでうまくいきませんでした。体格差が随分あったので、そこは気持ちで押し切っていきました。
(試合後、正座で握手していたが?)殴りあう仲ですが、相手があってこその試合。また、100%で自分が勝ったわけではないし、相手を尊敬する気持ちがあったので。
(プロ転向時にグレイシーと戦いたいと言っていたが?)格闘技に出会ったきっかけが桜庭さんとホイス・グレイシーの試合だったので、自分が今、この場にたって戦っているというのが不思議な感覚です。
(これからの目標は?)目標は吉田さんです。ああいったスターになりたい。技術的にもまだまだかなわないのでもっともっと練習して。それから体調の管理をしっかり考えたいです」
 

第2試合 日本vsグレイシー・次鋒戦 1R10分・2R5分
×三島☆ド根性ノ助(日本/総合格闘技道場コブラ会)
○ハウフ・グレイシー(ブラジル/ハウフ・グレイシー柔術アカデミー)
判定3-0


 日本初登場の未知の強豪、無敗のハウフに対し、大阪のDEEPでも見せたホワイトタイガーのマスク&ロングスパッツで登場の三島。やや大会場でのパフォーマンスとしては地味か。

 怒りをあらわにしているハウフ。三島は組んでテイクダウン。しかしハウフはスイープに成功。下からの洗濯バサミを狙う三島。素早い展開となり、再度上になって押さえ込み、ショートパンチを重ねていく三島。蹴り離すハウフだが粘る三島は再度ダイブで押さえ込みに行く。下になりながらもハウフはパンチを欠かさない。足狙いにきた三島をかわしてハウフはスタンドへ。目線をそらす三島はだまし討ちのパンチや膝など奇襲を狙う。ロー、ミドルと三島が攻め込み組み倒す。サイドを取った三島の膝がボディに入る一方で、ハウフも頭に膝を返す。逆にターンで上になり立ち上がるハウフ。

 三島が先ほどのように打撃でも押し込もうとするが、リズムが合ってきたのかハウフは自分からもパンチを打ち始め、乱打戦になったところでジャストの左フックを三島の顔面にぶちこんで、ぐらつかせる。崩れた三島にマウントからスリーパーを狙うハウフ。ここでラウンド終了のゴングに救われた三島。

 2Rまたもや打撃戦で勝負に差が付く。ロー、ミドルと狙った三島だが、左ストレートをヒットさせるハウフ。ハイを放って組み倒した三島だが、鼻血が流れ一回ドクターチェックが入る。下になってもパンチを打って行くハウフ。下からのアームロックを奪うと、じわじわ極めにいくなどペースはハウフに傾いた。回転してなんとか抜いた三島だが、すかさず腕十字を狙って来るハウフ。結局後半の追い上げが実り三者がハウフ支持。

◆三島「悔しいです。(足関を狙っていたようですが?)はい。狙ってたんですが、読まれていたみたいで。研究していたのか、相手の方が一枚上手でした。グラウンドもうまかったですね。相手の寝技を甘く見てましたね。ダメージは自分ではあまりないです。鼻血があんなに止まらないのは初めてだったんで『格闘家っぽいなー』と思ったんですが。たぶん明日には痛くなるんでしょうが。(PRIDEのリングの感想は?)リングサイドに有名人がいたのでトキメイテしまいました。でもリングの中に立ったらいつもと変わりませんでした。(次のリングは?)ここ2〜3ヶ月試合が続いたのでしばらく休憩して。旅にでも出て、ヴァカンスを。次は年末のDEEP、佐伯祭りですかね?
(と、近くにいる佐伯代表に話をふる。対戦相手は?との質問に佐伯代表『まだ発表はできませんが面白い相手を予定していますのでお楽しみに!』)
(試合運びについて)相手の打撃は全部見えていましたが、スタミナがついていかなくてバテてしまい、足が動かなくて。実は試合前からバテ気味で。普段より重いウェイトだったんで(77kg強)、できるだけ体重を上げないと、と思って昨日から無理やり食べてたら調子が悪くなってしまって…。いい経験しました。今回は、う〜ん。負けちゃいましたね。全ての面で。次、もし機会があればきちんとできると思うので、よろしくお願いします。」
 

第1試合 日本vsグレイシー・先鋒戦 1R10分・2R5分
○カーロス・ニュートン(カナダ/ウォリアー・マーシャルアーツセンター)
×ヘンゾ・グレイシー(米国/ヘンゾ・グレイシー柔術アカデミー)
判定2-1


 純白の道衣に身を包む日本チームの助っ人ニュートン。日の丸を振って花道を入場して来る。対するヘンゾはリーダーとしてあえて先鋒を買って出た形だ。両者体格的にはほぼ同等だ。
 ニュートンは大振りのフックで前に出るが、組んで上をとったのはヘンゾ。ニュートンの変幻の動きを押さえ込みにかかる。ガードを腰を上げて切りサイドからバックにチョークを狙ったヘンゾだが、一瞬の隙をついて腕を上に回し首を取りかえし、入れ替わったニュートン。上下が入れ替わってサイドをとったニュートン。いつものような軽快な動きはなく、べったりと押さえに行くニュートンだが、下からの膝。続いて腕を取って下からニュートンをコントロール。入れ替わって背を相手に向ける逆向きのマウントで上に乗るヘンゾ。足を組んで胴を巻き、俯けになるヘンゾの面白いポジションに、動きを封じられたニュートン。隙をついて膝十字を取るヘンゾ。がっちりキャッチにはいるが、一瞬の呼吸で足を外して、魔術師ぶりを発揮するニュートン。抜け出して上下を入れ替えたニュートン。サイドを取って顔面に膝。ねちっこいレスリング展開になり亀になったヘンゾの顔面を打つニュートン。ターンして下のポジションになるヘンゾ。終了10秒で足をフックしての腕極めを狙うなどニュートンも見せ場を作る。

 2R。組んで抱え上げるようにしてテイクダウンに成功するニュートン。サイドを取り、膝をぶち込もうとする隙に、ヘンゾは再び下に潜り込んでタックルにいく。だがバックを奪ったヘンゾ。突き放してスタンド再開。スタンドになってフックを振り、ハイで追い込んだニュートンだが、組んだとたんにヘンゾはフロントチョークに捕らえて引き込む。辛うじて首は抜くが、手足を絡めたヘンゾに動きを止められてしまう。結局スタンドに戻ってパンチが交錯したところでゴング。

 攻めの姿勢を崩さなかったニュートンが辛勝。試合後、「皆さん応援してくれてありがとうございます。日本チームとして戦えてとても嬉しい。ほんとだよ。これからも日本チームでがんばります。みんな応援してくださいねー。またねー」と全て日本語で挨拶し、場内を沸かせた。

◆ニュートン「(試合の感想から)シンジラレナイ(日本語で)!(何が信じられないの?)ヘンゾダッタカラ(日本語で)(そのヘンゾに勝ったから?)その通りです。(判定結果には?)満足しています。(オファーは?)3週間前にオファーを受けましたが、ヘンゾのことは15歳の時から知っていたので調整は問題ありませんでした。(試合後にヘンゾとどんな話を?)ヘンゾの試合を初めてみたとき自分はまだ15,6歳だったのに今自分は27歳。成長したんだなぁと。
(試合のプランは打撃中心で?)はい、スタンドで勝負に行こうと思っていました。でもヘンゾはグラウンドに持ち込みたがっていたので、気をつけながらグラウンドに付き合いました。何度か極められかけたシーンがあったんですが、思ったよりも自分の柔術のテクニックが上手かったと感じました。(日本人チームの一員として日本人の魂を見せる事はできた?)見せることができた!と思いたいです。
(憧れのヘンゾに勝って、次の目標は?)PRIDEがライト級を編成いしてくれたらそこで戦って、チャンピオンになりたいです。アリガトウゴザイマス、オツカレサマデシタ。(日本語で)」
 


<武士道挑戦試合>

第3試合 5分2R
○セルゲイ・ハリトーノフ(ロシア/ロシアン・トップ・チーム)
×ジェイソン信長(オーストラリア/エリート・タイ・キックボクシング)
1R 2'24" 腕ひしぎ十字固め


K-1レギュラーだった信長が総合初挑戦ということで話題となったこの試合だが、ローで最初に足元をグラつかせた以外は見せ場は無く、投げからのテイクダウンを奪われてからは為す術なくコントロールされ、二度目のグラウンドでマウントからの腕十字でフィニッシュ。完璧に近い展開でハリトーノフが潜在能力の高さを見せつけた。

◆ハリトーノフ「今回は初参戦だったが、戦略どおりのとても良い試合ができたと思っています。最初はスタンドで、それからグラウンドに移行して関節を狙う作戦でした。PRIDEは素晴らしいエンターテインメントショーであり、実力のある選手が揃っているレベルの高い大会だと思う。もしまた呼んでもらえるのなら自分らしい試合をしたい」

◆信長「試合をするためにここに来たのに、戦いすらしていないという気分です。なるべく得意の立ち技で勝負をしたかったのですが。グラウンドの技術をより磨いて、次回またぜひPRIDEのリングで戦いたいです。(信長というリングネームは?)日本人の友達がつけてくれました。織田信長のヒストリーを知ってとても共感したので気に入っています」

第2試合 5分2R
×ロドニー・ファベイラス(オランダ)
○ハリッド “ディ・ファウスト”(ドイツ/ゴールデングローリー)
判定0-3


 ヨーロッパでは注目というドイツ・オランダ国境対抗戦だったが、「組んで倒して殴る」に終始する泥仕合となる。1Rこそファベイラスが上になって有利な展開を見せたが、2Rは逆転ファウストがマウントを奪取。鉄槌を落とし続けてポイント稼いだファウストの判定勝ち。

◆ファウスト「初めてのPRIDEということでナーバスになってました。PRIDEはリングも試合も組織も全て素晴らしいショーです。
 1Rでとても疲れてしまったけれど2Rからは良い動きができたと思っています。テイクダウンされてからはグラウンドの練習を積んでいたので不安も無かったです。
 ヴァンダレイがトーナメントで優勝したら次はぜひ戦いたいね。彼とならスタンドでもグラウンドでも面白い試合ができると思う。最後に、今日ここに来ていないけれど友人の“ロン”に感謝の気持ちを捧げたいと思います。ドウモアリガトウゴザイマシタ。」

◆ファベイラス「残念です。初めてのPRIDEということで、あまりの観客の多さに圧倒され、緊張してしまいました。PRIDEの素晴らしさを知る事ができたので、また試合ができるように頑張りたい。その時はベストを出せるように調整します。負けてしまいましたが良い気分です」

第1試合 5分2R
×光岡エイジ(日本/RJW/Central)
○クリス・ブレナン(米国/ネクストジェネレーション・ファイティングアカデミー)
1R 4'31" 羽根折り固め


 第二回PRE-PRIDE優勝を経ての登竜門へ登り詰めた光岡。対するブレナンは修斗でも日本に上陸。序盤、光岡は飛行機投げからグラウンドへ持ち込むが、ブレナンは柔術仕込みのテクニックで、下からのフロントチョーク、三角絞めと攻めて行く。開始3分、ロープ際で十字を奪ったブレナン。ほとんど形になったが、光岡が声を上げたためタップと勘違いしたブレナンが、腕を離すと言うアクシデントが発生。一瞬は騒然とした場内だが、スタンドからの再開で収束。
 光岡のタックルを受け止めたブレナンが腕をとってアームロックからの引き込みを仕掛ける。ついていこうとする光岡だが、ブレナンは腕を離さず、そのまま後方に二回転し、そのまま腕十字の姿勢に。堪える光岡のロックは硬く、ブレナンは鉄槌を落とすと、マウントへ。しかし、腕狙いは変わっておらず、サイドに下りたかと思うとアームロックを極めてフィニッシュ。終ってみれば、ブレナンのワンサイドゲーム。日本人選手発掘の目的も持った武士道だが、第1試合は業師ぶりを発揮したブレナンの絶好のプロモーションになってしまった。

◆ブレナン「日本で初めて勝利できてとても嬉しい。途中光岡がタップしたと思い、試合を止めてしまったのは自分の判断ミスだったが、それ以外はとてもエキサティングで良い試合ができた。短い調整期間だったが、体重はむしろ自分のベストに近かったので、スタンドで有利に動くことができた。次は? とにかくエキサイティングな試合ができれば誰でも。ヴァンダレイ・シウバとか。ははは、ジョークさ(笑)」

◆光岡「相手の極めの強さに自分が対応できなかったことが納得がいかない。また一から出直しです。1Rでのブレイクでは、自分はタップしていません。参ったはしていません。PRIDEの舞台ということで気負ってしまい、混乱してしまいました。今後に向けての課題ができました。また立て直して来たいです。」

Last Update : 10/06

[ Back (前の画面に戻る)]



TOPPAGE | NEWS | REPORT | CALENDAR | REVIEW | XX | EXpress | BBS | POLL | TOP10 | SHOP | STAFF

Copyright(c) 1997-2003 MuscleBrain's. All right reserved
BoutReviewに掲載の記事・写真・図表などの無断転載を禁止します。
著作権はマッスルブレインズに属します。

編集部メールアドレス: ed@boutreview.com