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(レポ) [ZST] 9.7 Zepp Tokyo:小谷&レミギウスは秒殺勝利

ZST "THE BATTLE FIELD ZST 4"
2003年9月7日(日) 東京・Zepp Tokyo

  レポート:古谷わか  【→大会前のカード紹介記事】 [→掲示板・ZSTスレッド]


メインイベント ウェルター級
○小谷直之(ロデオスタイル)
×ミンダウガス・スミルノヴァス(リングス・リトアニア)
1R 1'36'' TKO (レフェリーストップ:ヒールホールド)


「音信不通」という納得の行かない理由で一方的に試合をキャンセルしたマット・セラに代わって、リングスリトアニアのミンダウガス・スミルノヴァスが出陣。試合直前のアクシデント発生、ZST無敗のエース:小谷直之はどう出る? 
1R 打撃の見合いでスタート。猫背に構えたボクサースタイルのスミルノヴァスは積極的にパンチを繰り出して行く。受けて立つ小谷。小谷を中心にスミルノヴァスが時計回りに回転しながら両者打撃の応酬が続く。試合開始30秒過ぎ、低いタックルからさば折りで上のポジションを奪う小谷に対し、下からがっちりガードの体勢をとるスミルノヴァス。だが、ZSTルールでは守り一辺倒のクロスガードは「消極的」と判定されるため和田レフェリーがガードを開くように促す。
上からパンチを散らし、上体を起こしながら右足を絡め獲った小谷はテコの原理のお手本のように身体を後ろに倒しながら、スミルノヴァスのアンクルを絞め上げる。瞬間、可哀相なほどの泣きっ面でのたうつスミルノヴァス。しかし小谷は決して支点を外さない。行き場のないスミルノヴァスは悲痛の面持ちでゴロゴロとリング上を回転しながら逃げ回る。実に赤コーナーから青コーナーまで。今にもゴリゴリッとかかとを砕く音が聞こえてきそうな痛がり面でロープに助けを求めるスミルノヴァス。それでもタップをしない。たまらず和田レフェリーが試合をストップ、1R 1分36秒 ヒールホールドにより小谷が勝利を収めた・・・。
 ところがあの泣きっ面はどこへやらスミルノヴァスは「おいおい、オレはタップしてないぜ?」とばかりファイティングポーズを取ってみせる。セコンドも青コーナーに陣取ったままリングを降りようとしない。リング中央でカメラ撮影に応える小谷も、ちらちらと視界に入るリトアニア勢に不満を顕にしている。いよいよ上原広報までも登場、セコンドを含めリトアニア勢への説明と説得にかかる。ただならぬ様相に弟を守るためにセコンドである兄:ヒロキもリング中央へ上がる。二人に対して和田レフェリーが何かを話すと静かに、しかし怒りを込めて応えている。そして、リングサイドでさらに和田レフェリー、上原広報、平ジャッジでの話し合い。その後、和田レフェリーの問いかけに不満げに苦笑いで応える直之。
 会場がざわつき始めたところで、和田レフェリーがマイクをとり「只今の試合についてご説明させていただきます。ヒールホールドが完全に入っていました。完全に外に逃げる行為をしていたので止めました。あれ以上は逃げられません。それでも納得できない、再戦をお願いしたい、とのことでZST事務局の上部の人間とも話しました。そして(再戦するならば)小谷選手の了解を得ないとできないのですが、(意向を聞いたが)一度上がってしまったテンションを下げられないので、試合はできないと。そういうことでご了承ください。完全に今の試合は極まっていました、ということで宜しいですね」と説明。場内からは納得の拍手が起きる。
 するとなんと!普段は寡黙な小谷が憮然とした表情でマイクを取る!「相手は納得いってないみたいなんですけど。まぁ納得行かなかったらグランプリの一回戦でやってもいいと思います。どうしてもっつーんだったらグランプリに出て来いっ!」普段の小谷からは想像ができない怒りっぷりだ。敵前逃亡したマット・セラへの怒り、そして往生際の悪いリトアニア勢への怒り。この怒りをGPにぶつけない手はないだろう。何はともあれ無敗神話の次章はGPのマットへと続いていく。

◆試合後の小谷直之選手のコメント
(試合を終えての率直な感想は?)向こう(スミルノヴァス)の「タップしてない」っていうのはわかるんですけど、自分としてはもう完璧に極まっていて、あのまま止めなければ僕は1Rが終わるまでそのままずっと相手の足を攻め続けると。相手の骨が折れてもあの体制のままいるつもりでいましたから。リトアニアの選手がタップしないって事は最初からわかってましたんで、もう本当に壊すつもりでやっていました。
(感触的にはもう完全に極まっていたと?)そうですね。もう。向こうは痛かったと思いますけど。タップしなかったですけど・・・。まぁ自分はもう、骨が折れようが、靭帯が切れようが、ずっとあのままで。タップしないのならそのままやっているつもりでした。
(リトアニアでの大会の再戦というかたちになりましたが何か違いのようなものは?)そうですね。僕は日本の方が全然やりやすいですし、向こうにしたらやりやすくない場所なのでコンディションも良くなかったのではと思います。
(試合後のマイクで「もし再戦したければ、トーナメントへ出て来い!」とのことでしたが?)自分ともう一度戦いたいのであれば、GPに出て、自分とやれるまで勝ち上がって来いって事ですね。
(セミでレミギウス選手、所選手が勝ちました。またマット・セラ戦が流れてしまいましたが、GPに向けて、対戦したい相手や抱負などは?)そうですね、誰と戦いたいという事はないですが、勝ち上がっていけば強い相手と戦えると思うので、本当に強い相手と戦いたいです。
(マット・セラ戦が流れましたが、マット・セラ選手に対して何か言いたい事は?)まぁ、本当は70kg以下でやりたいところを、相手の方が(格が)上なのでそれに応えて73kgって事で試合が決定していたんですけど、それでもまだ納得いかない部分があったみたいで、もめていたみたいですけれど・・・。自分としては、やれれば激しい良い試合にする自信があったんですが、向こうがイヤだ(キャンセル)ってことだったんで残念です。
(セラ選手から対戦相手が変わった事によって、モチベーションが下がったのでは?)そうですね、下がりましたね。本当に強い相手と戦えるという事で、もう、勝ち負け抜きで思いっきりやるだけだったんですけど。相手が変わったんで下がりましたね。
(前回彼との対戦では足関節がほとんどないルールでしたが、今回は彼に決まった時点で最初から足関節を狙っていた?)いや、そういうわけではなかったんですけれど。テイクダウンした時に足をがっちりクロスでロックされたので、これでいちいち外してパスガードしていたら、ブレイクでスタンドになると思ったので。自分が有利なうちに攻めたかったんで。
(GPへの抱負など、ファンの皆さんへメッセージをお願いします)今日はちょっと相手が納得いかないって事でうまく大会を盛り上げられなかったですけど、トーナメントでは優勝して・・・。一試合、一試合激しい試合をして、見ている人には楽しんでもらいたいです。

◆兄でありマネージャーである小谷ヒロキ選手のコメント
 マネージャーとして補足させてもらいます。上原さんからも説明があるかと思いますが、今回マット・セラ戦の話しをいただいて、マット・セラがGPに出たいということで、その前に小谷直之と対戦するということだったんですが、マット・セラの方からはGPではないので72kgにしてくれという事で。今、直之のベストは70kgなんですが、マット・セラ戦、今回は「対世界」ということで・・・。一部の人の間では「小谷は強い強いと言われてるけど、世界のトップとはやってないじゃないか」という声もあるので、今回は「対世界」という事で了承しました。
 ところが、1ヶ月前の時点で、「72kgでは出来ない。75kgにしてくれ」という無謀な要求をされまして。こちらとしても70kgを妥協しての72kgでしたので、75kgはちょっとないだろうと。ただ、ZSTさんの意向もありますし、「対世界」で小谷直之どこまでいけるかというのを証明する為に、73kg、もしくは74kgまでなら妥協しようという事で、ZST関係者の皆さんのご協力もあって73kgということで納得していただいたつもりだったのですが、1週間前の時点でマット・セラの方が何の理由もなく出来ないという事で。マネージャーである僕の立場としては、マット・セラは小谷直之から完全に逃げたと認識しています。聞いた話によるとビデオ(直之選手の試合)を見た時点で理由はなく小谷とは出来ないとマット・セラは言ってきたと。そのまま音信不通になったと聞いていますので。マット・セラは我々の中では「逃げた」という認識でいます。弟を弁護するようなカタチになりましたが、マネージャーとしては以上です。
(マット・セラがGPに出場してきたらどのような結論をされますか?)
そうですね。まぁGPは70kg以下のライト級という事になっていますので。出てくるのであれば体重のことは言わずに70kgででてきてもらいたい。そうであれば、自分としては文句はないです。やるだけです。


第6試合 ライト級
○レミギウス・モリカビュチス(リトアニア/リングス・リトアニア)
×坪井淳浩(ALIVEアカデミー)
1R 0'41'' KO (膝蹴り)


 シュートボクシングでトップに登りつめた打撃技に加え、総合と柔術のテクをも併せ持つ「グラップリングシュートボクサー」坪井淳浩が、ZST.2で疑惑の黒星を掴まされたレミギウス・モリカビュチスとの雪辱戦に挑む。刃のようなヒザ蹴りを武器にZSTリングを暴れまわるレミギウスにリベンジなるか?
 現在はアライブアカデミーに所属し、寝技の技術を磨く坪井。以前に比べて引き締まった上半身からこの一戦に賭ける鍛錬の日々がうかがえる。一方、ZSTでの戦績を重ねるごとに自信をつけてきたレミギウスは、勢いに乗る者が持つオーラを全身にまとって入場。

 1R 坪井の左ローからスタート。目にも止まらぬスピードで積極的にコンビネーションを繰り出すレミギウス。激しいラッシュをかいくぐり、組み付いた坪井をレミギウスが両手で力任せに引き離し、両者バランスを崩す。素早く持ち直し、スタンドで再開。レミギウスは坪井の左ミドルを掴まえ、お返しのミドルを放つ。坪井は尻餅気味にグラウンド状態になるが、ここはKOKルールのリングである。平レフェリーがスタンダップを要求する。左のハイを放つ坪井に対してレミギウスは顔面狙い。素早い1,2パンチを繰り出しバランスを崩しに。坪井のガードが緩んだその瞬間、狙い済ましたかのように両首を軽く押さえて至近距離から顔面に左ヒザを叩き込む。パシッとも、ゴスッともなんとも表現しがたい音とともに、坪井はリングに崩れ落ちた。1R 41秒。レミーガのヒザ小僧KO劇場は続く。


第5試合 フェザー級
○所 英男(STAND)
×中原太陽(和術慧舟會GODS)
1R 4'56'' 腕ひしぎ十字固め


 ZSTの看板ファイター:所英男と和術慧舟會の超新星:中原太陽。今大会の裏メインとして注目と期待が高まる。昇りっぱなしの太陽を所は沈めることができるのか?
 1R 中原の右パンチをかわして所が組み付くと、中原は引き込み下になり、腕に身体に首に絡みつき、あらゆる仕掛けを狙って下から動きまくる。所は上からコントロールしようとするが中原のバネと組み付きに攻めあぐね、両者再びスタンドへ。所の蹴りをキャッチしてテイクダウンし上になった中原だが今度は所が下から激しく蹴り上げ、決して優位なポジションを取らせない。バランスを崩してスタンドになり、梅木レフェリーがブレイクをかける中、グラウンドの所に対して踏みつけるようにキックを入れパスを計るのが中原なら、その足をキャッチし関節を取ろうとするのが所。ネズミ花火のような勢いの二人。
 やっとブレイク、スタンドからの再開。パンチで入ってくる所に組み付いて、さば折り上になる中原。下から所が腕を取りに行けば、中原が中腰になり素早く所の上を一周してかわし、足を狙いにかかる。と、すかさず所もそれに反応。足の取り合いで回転する二人。極まらないと判断したのかすぐに次の手に移行する中原。中腰の状態から所の手・足をまとめ、パスの隙を狙う。しかし所も俊敏に立ち上がり、自然にスタンドに戻る両者・・・。ここまででたったの1分半くらいだろうか。まるで古い漫画の喧嘩の描写のようだ。両者が団子になって猛烈なスピードで回転し、1つのかたまりに見えてくる。超高速で走るエイトマンの足にも似ている。いずれにしても見ているこちらは付いて行くのに精一杯だ。
 スタンドから組み付いて引き込む中原。下から所の腕をコントロールしつつフロントチョークなどを狙って行く。しかし中腰の状態からパンチを落とす所。下から中原が所の肩を蹴り離し、立ち上がろうとしたところへすかさずパンチを放ち首を抱えて手前に引き倒しながらヒザ膝十字を狙うが不発。なおも足を捉えて離さない所に対し中原は上から潰しにかかる。しかし所の下からの反撃にポジションが定まらない。身体を上手く回転させ、下から左腕をつかみ十字を狙うが中原は脱出、上にまわって引き込みながらフロントネックロックを敢行。そのまま下から脅威の吸着力で絡ませた足をどんどん上に上げていき三角を狙う中原。
 3分経過。ほどけて今度は足を取り、身体を後ろに倒してアキレスを狙う所だが中原は脱出しスタンドに。それでも執拗に獲物を追う所は回転しながら足首、アキレスを狙うがまたも逃れる中原。下になった中原が所の右肩を取りに行くが、残り1分、形勢逆転。所が上からの攻めを開始、中原の左肩を捉えて身体を反転させアームロックを狙いに行く。空いた左手で中原のボディーにパンチを落とす。しかし極められないと判断し、ポジションを戻しマウントから前転しながら先ほど痛めつけた左腕を掴み、三角〜十字を敢行する。なんとか抜け出した中原。猪木アリ状態で残り30秒経過。ブレイク。
 残り20秒。パンチをかわし組み付いた中原の頭をかかえ手前に引き倒しつつ、飛び付き気味に中原の身体に両手・両足を絡みつける所。狙い続けた左手を両手で捕獲し、足はアナコンダのように中原の肩から首、ボディと足を固定している。必死の形相で左腕を伸ばしにかかる上げる所。タップしない中原。所は渾身のもう一しぼり。残り時間4秒、中原ついにタップ。
 瞬間マウスピースを投げ捨て、セコンド陣に飛びつく所。前回のKO負けの屈辱(ZST.3対レミギウス戦)、そしてZSTの看板を背負う存在として、コンテンダーズでは引き分けてしまった相手であり、破竹の勢いの若き中原太陽との対峙。所にとっては絶対に負けられない試合だったろう。その喜びようにこの一戦にかけられた決意が逆算的にひしひしと伝わってくる。この勢いでGPをかき回してくれることだろう。
 そして残り4秒でのタップとなった中原にとってもこの敗戦の持つ意味は計り知れない。この1本負けをどのように消化し、吸収するのか?太陽は必ずまた昇る。しかし、もう地球の自転には頼れない。いずれにしてもまばたきもできず、息をするのも忘れるほどの試合を観たのは久しぶりな気がする。
今大会で最も観客を魅了した試合となった。


第4試合 ウェルター級
△小谷ヒロキ(SHOOTO GYM K'z FACTORY)
△リッチ・クレメンティ(チーム・エクストリーム)
3R 時間切れ


 ZST.2では直前の「UFC」出場でケガを負いキャンセル、ZST.3ではタッグマッチで敗戦と小谷直之からどうしても勝ち星をもぎ取りたいリッチ・クレメンティ。それに対して、「弟と戦いたいのならまずはオレを倒してから」とでも言わんばかりに兄、小谷ヒロキが立ちはだかる。
 1R スタンドでの見合いからスタート。クレメンティがパンチを入れて行き、それにつきあうヒロキ。30秒過ぎ、クレメンティがパンチ〜強烈なヒザを叩き込みヒロキがバランスを崩したところをテイクダウン。クレメンティは強引にヒロキを上から押さえつけ、自分の両足を肩から首にまわし腕をひっぱり三角を狙うが一度目は不発。間を置かずに下からもう一度三角〜十字をしかける。と、今度はヒロキが足関節で反撃。クレメンティのアキレスをがっちり捉えて絞め上げ、キャッチを奪う。いい入り具合だったがクレメンティはなんとか支点を外し、上半身を起こして座った状態でヒロキのボディにパンチを落とし、隙ができたところで足首を取り返してみせる。
 3分過ぎ、今度はヒロキのピンチだ。腕を上手く絡みつけヒロキの足を抜けさせない。身体を反転させ逃げ切ろうとするヒロキのアンクルをさらにギリギリと絞め上げる。残り1分でなんとか抜けると会場からは拍手が。しかしそこからまたしてもアンクル合戦。クレメンティは空き足でヒロキのボディにキックを入れて行く。両者互いに譲らずの状態に、クレメンティが諦めてほどいたところでゴング。
 2R ヒロキの左ミドルから開始。片足タックルに来たヒロキの首をがっちりとらえて引き込み、フロントチョークに持って行くクレメンティ。だが耐えながらクレメンティの足を執念でつかんだヒロキはチョークから抜けながら足首を絞め上げにかかる。しかし運悪く、クレメンティは上半身をコーナーに預けているため上手く足が伸びきらない。
 今度はクレメンティが足を取り返しに行く。1Rと同じく、やけに足首にこだわる二人である。ほどけたところで素早くクレメンティがサイドにつき、ヒジ、ヒザをヒロキのボディに落とす。「ニーインザベリー」どころか「正座オンザベリー」状態で完全にヒロキの上半身を固定し、無情の打撃を振り落とすと、すかさず腕をとらえてサイドに戻りアームロックを狙う。しかし極めきれない。あちらへこちらへポジションを移動しながら執拗に足を狙うクレメンティ。ようやく足首をとらえヒザ十字をしかけキャッチを奪う。耐えるヒロキ。
 うまく抜け出たところで3分過ぎ。ブレイク、スタンドでの再開。片足タックルに来たヒロキをガブるクレメンティ。しばし膠着し、1分を残して再びブレイク。クレメンティの1,2、ヒザにぐらついたヒロキだが根性でクレメンティの残った足を払い、上のポジションをとる。さらにパスしてサイドにつくも攻め手がみつからない。クレメンティが下から足を絡ませ、仕掛けようとしたところでゴング。試合は最終ラウンドへ。
 ラストラウンド、クレメンティのフェイントキックに合わせてタックルに行くヒロキだがガブられ、クレメンティが上を奪う。パンチを放つも、すぐに立ち上がり猪木アリ状態に。スタンドから踵落としのようにヒロキの腿にキックを放つがブレイク。スタンドからの再開。クレメンティの1,2がヒットしバランスを崩したヒロキだがそのまま根性でタックルに持って行く。しかしガブったクレメンティがサイドにつく。上四方へ移動しながらヒロキの腕を狙うと、ヒロキが下から洗濯ばさみを敢行。混沌とした状態で1分を残し、ブレイク。
 クレメンティの強烈なパンチ、ヒザを喰らいながらもそのヒザを強引にキャッチし引き込んで上をとるヒロキ。渾身のアキレスを仕掛けるも、極めきることはできず、足取り合戦の中、ゴングが鳴り響いた。
 個人的には、1Rはヒロキ、2Rはクレメンティ、最終ラウンドはクレメンティ、の印象を受けた。クレメンティは自信満々でガッツポーズ。これからも直之狩りを主張し続ける腹積もりであろう。門前封じとならなかったためか、試合内容に不満が残ったのか、しばしそのままの体勢でリングに座り込んでいたヒロキが印象的であった。


第3試合 ウェルター級
×花井岳文(養正館)
○野沢洋之(STAND)
1R 2'38'' KO (グラウンドパンチ)


 梁正基、所英男に続くSTAND所属、キックボクシング出身の野沢がZST初参戦。対するは名グラップラーの呼び声高く、真足関十段の異名を誇る花井。打撃VS関節、軍配はどちらに?
 1R いきなり頭から滑り込み、さっそく足首を捉えた花井。しかし野沢もバランスを保ち、身体を回転させながら脱出に成功。スタンドでの再開から低空タックルを連発し、足関の鬼と化す花井。ヒール、ほどけてはアキレスと次々に攻め手を変え、執拗に1本を狙って行くが極め落とすことができない。今度はうまく逃れた野沢が上からボディーへ強烈なパンチを叩き込む。それを嫌がり背中を向けて逃れる花井のボディに非情の蹴りを放つ野沢。と、ここで平レフェリーが試合をストップ。裁定を巡って和田ジャッジとの意志確認が行われる中、ボディーへの打撃が相当効いたのか、ストップで士気が途絶えたのか、花井は自らマウスピースを外し続行不可能の意志を見せ、野沢のKO勝ち。1R 2分38秒のあっけない幕切れとなった。
 ZST初戦を得意の打撃で飾った野沢。未知なる才能に期待がかかる。一方「ジェネシスバウトからでもやり直したい。」と精神面、肉体面ともに自己反省しきりの花井だが、鋭い眼光に長い髪を振り乱し、ノーグローブで敵の足首めがけて滑り込むその姿はインパクト大。足関ハンターとでも呼びたくなる。這い上がってくる日を待ち望んでいるファンは多いはずだ。


第2試合 ライト級
△小林悟郎(U-FILE CAMP)
△内山貴博(総合格闘技武蔵村山道場)
3R 時間切れ


 U-FILE CAMP設立当初からのメンバーである小林と、ZST.3のジェネシスバウトでの勝利を認められてプロデビューを飾る内山の対戦。前回のZST.3ジェネシスバウトでの一本勝ちを認められ、今回プロデビューを飾る内山貴博と、同じくZST.3で一本(6人タッグにて代官山剣Zからフロントチョーク)を奪取した小林悟朗。勢いに乗る両者のぶつかり合い。
 1R 内山のハイ、1,2からスタート。めまぐるしい組み付き合いから、小林がスタンド、内山が下の猪木アリ状態に。内山の腿にキックを叩き込む小林。内山が立ち上がろうとした隙を逃さずに、フロントチョークでがっちりと首をとらえそのまま引き込んでグラウンドへ移行しさらに絞め上げる小林。なんとか脱出した内山はパスを敢行しサイドにつくものの再び下から肩を捉えられてしまう。ここも耐えぬいた内山は上からパンチを落とすが、小林がかえして上に。残り1分となったところでブレイク。内山の打撃をかわしてタックルを敢行し、上をとった小林はパスを狙う。対する内山も踏ん張り、めくり返してポジションが入れ替わったところでゴング。
 2R ゴング早々、小林の飛びヒザ蹴りに合わせてカウンターを放つ内山。スリップ気味に倒れた小林に対し猪木アリ状態で今度は内山がキックを放つ。フェイントでジャンプしながらのパスを狙った内山だったがめくられ下になる。ここから1Rと戦法を変え、下から三角、腕ひしぎ、さらにフロントチョークも狙う内山。しかしパスを狙いながら上からグラウンドでのチョークを狙う小林。互角の攻防が続くなか、両者スタンドから小林が胴タックルで綺麗に内山を倒し上を獲るがここへきて内山の足の動きが冴える。執拗に足を動かし小林に優位なポジションを与えない。1Rで突っ走りすぎたのか、小林のスタミナ切れが見え始める。めまぐるしいポジション争いの中、残り1分近くでブレイク。後ろ回し蹴りを放つ内山だが小林はキャッチして上から攻める。再びブレイク。スピンキックを繰り出すがロープに空振り倒れた内山。そのまま下から足を小林の胴に絡めつけ絞めあげようとしたところでゴング。
 3R 内山がアグレッシブな打撃で突進しフロントチョーク狙いから引き込んで下になるがブレイク。再び打撃で突破口を見出し、テイクダウン〜ハーフマウントを奪った内山は小林のボディにパンチを落としさらに首を両手で掴み前に引き倒しながらの三角締めを狙うが汗で滑って抜けてしまう。小林が上からチャンスを狙うが残り1分のところでブレイク。内山のバックブローをかわして胴タックルで上をとった小林がパンチを落とせば、内山が下から三角を仕掛ける。小林が力で持ち上げて振りほどき再び仕掛けあいが始まったところでゴング。結果は時間切れドロー。
 スタミナ配分、上になってからの戦法にやや問題が見えたものの、長南亮(セコンドについていた)ゆずりのアグレッシブなスタイルを印象付けた小林。荒削りながら足を器用に使った下からの仕掛けと打撃でデビュー戦をフルラウンド戦い抜いた内山。次の「一本」を先に手中に収めるのはどちらだ?


第1試合 フェザー級
△矢野卓見(烏合会)
△植村“ジャック”龍介(P's LAB東京)
3R 時間切れ


 矢野の1本は説得力がある。そして中毒性もある。今成正和とのタッグ「チームイリホリ」や梅木繁之、代官山剣Zとの6人タッグマッチでのオッサンっぷり、ヘタレっぷりばかりが注目される中、「そろそろ本気な矢野の華麗な1本が見たい。」と会場へ足を運んだファンは少なくないだろう。第一試合、そしてシングルとして組まれたこの試合、矢野本人もその覚悟で臨んだに違いない。雪駄に羽織をひっかけて入場する矢野の表情はいつになく固い。対する植村は23歳ながらもP'sLABでみっちりベースを叩き込まれた実力者だ。
 開始のゴング。「敢えて敵に背中を見せる」いつもの矢野の構えだ。ZSTルールでは「引き込み」「自ら下になる」といった動きは「消極的である」とマイナスの判断が下されるため、打撃を得意としない矢野は終始この構えからのフェイントキックで下のポジションを狙う戦法を余儀なくされる。 さっそく背中を見せる矢野に飛びついて行く植村。それを抱え込むようにテイクダウン〜植村の頭を抱え込みフロントチョーク気味に下になる矢野。執拗な首狙いから抜け出しやっとマウントになった植村だが、矢野の下からの仕掛けにコントロールができない。左腕をアームロックに捕らえられてしまう。あわやタップ?と思わせたが耐え抜いた植村、そして場所がコーナーだったためここでブレイク。
 フェイントの浴びせからまた下になる矢野。なんとか上で優位な試合運びをしたい植村だが、蛇のように手・足を巻きつけてくる矢野の上では思うように動きが取れない。残り1分の所で2度目のブレイク。再びフェイントから下になる矢野。すかさず植村の腕を絡め獲り、横から首を洗濯バサミで固定しアームロック。さらに十字へと腕を伸ばしにかかったところでおしくもゴング。インターバル中。リングに座り込んだまま肩で息をし、身動きが取れない矢野。疲労?それともフェイント?はたまたウケ狙いなのか? 
 2R フェイントキックから下になり植村を誘う矢野。植村はマウントを獲りボディにパンチを落として行く。ハーフ〜サイド〜ついには上四方につくが、そこからの攻めが矢野の予測不能な動きにあって突破できず、セコンドの支持に従いもう一度マウントに戻る。再びあっさりサイドにつくも、下から腕をとる矢野・上から押さえ込む植村、と膠着状態になりブレイク。
 矢野がバックハンドを繰り出すも空振り。植村のカウンターをよけつつ下になる矢野。またしてもあっさりとサイド〜上四方を許すが、後転しながら植村の腕を掴みにかかる。変幻自在の動きに1本の期待が高まるが、ほどけてそのままバックマウントのような奇妙な体制に。植村のキックを受けながら下になる矢野。上四方の植村〜後転しながら洗濯バサミを狙う矢野・・・。同じような展開が繰り返される。
 残り時間1分を切ったところで消極的である、と判断したのか和田レフェリーから矢野に「注意」が与えられる。植村が飛びついたのを抱え込んで上のポジションを獲った矢野がパスを狙ったところでゴング。そのままリングに大の字になって身動きがとれない矢野はセコンドに腕をひっぱられてコーナーへ。肩で息をしている。ひ弱なヘタレっぷりに会場から笑いが漏れる。フェイント? いや、今日の矢野は目が笑っていない。
 3R キックから組み付いてきた植村を抱え込み、マウントを獲る矢野、最後の勝負に出るのか? ハーフガードの状態から左手で植村の首をフロントチョークに捉え、右手でパンチをボディに落として行く。レフェリーのキャッチも入った。渾身の表情で締め上げる矢野。2分近く続くこの体制にこちらも息が詰まりそうだ。しかし、かすかに下からパンチを当て「ギブしない!」と意思表示する植村をみて、残り30秒でブレイク。スタンドでパンチを繰り出す植村23歳、ふらふらの矢野33歳。ここで非情のゴングが時間切れを告げた。
 ZSTには「判定」が存在しない。規定のラウンドを戦い抜けばドローだ。おそらく今日の矢野にとってドローは敗戦に等しかったのではないだろうか。「1本獲れなかった」悔しさは並大抵なそれではないだろう。ヘタレキャラもオヤジキャラもしばらくご遠慮願いたい。そろそろいつものキラーモードに戻って鮮やかな1本をZSTのリングで披露して貰いたいものである。「矢野の一本」に中毒症状を感じているのは私だけではないはずだ。


◆ジェネシスバウト

第4試合 フェザー級 5分1R
△宮川博孝(チーム・アライアンス)
△藤沢卓也(禅道会世田谷道場)
1R 時間切れ

第3試合 ライト級 5分1R
△櫛田雄二郎(高田道場)
△堀 友彦(フリー)
1R 時間切れ

第2試合 ウェルター級 5分1R
△飛田拓人(インプレス)
△富岡義宏(クラブバーバリアン)
1R 時間切れ

第1試合 フェザー級 グラップリングマッチ 5分1R
△花くまゆうさく(AXIS柔術アカデミー&一番星グラップリング)
△小松俊明(ロデオスタイル)
1R 時間切れ

Last Update : 09/30

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