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(レポ&写真) [高田道場] 8.30-9.7:山本憲尚、巴戦制しPRIDE武士道出場権奪取

高田道場 "PRIDE武士道 出場者決定巴戦 (通称)"
2003年8月30日(土)・9月3日(水)・9月7日(日) 東京・高田道場

  レポート&写真:井原芳徳   [→掲示板・PRIDEスレッド]

 高田道場の3選手による巴戦が3日間にかけてマスコミ公開で行われ、山本憲尚が10.5PRIDE武士道への出場権を獲得した。

 巴戦が行われたのは高田道場。桜庭和志をはじめとした道場門下生が、レフェリングや道場の機材に選手がぶつかりそうになった時のストップ役を務めた。立会人の高田延彦氏は、初回の8月30日の試合に先駆け記者団に対し「とりあえずこの場にいておこう、という気持ちの人は帰ってもらいたい」と釘を差した。BGMが鳴る日もあったが、カメラのシャッター音を禁止するなど、道場内は終始ピリピリムード。この間の高田氏は、どこかコミカルさのある「PRIDE統轄本部長」ではなく、本来の厳しい「高田道場総裁」の顔に戻っていた。
 ルールはPRIDEルールに準じ、1R10分・2R5分の2R制で、四点ポジションでの膝蹴りは禁止。壁にぶつかった場合は中央からドントムーブで再開。決着が着かない場合も判定は行わない。打撃の威力は普段の50%に抑えるよう最初説明がなされたが、3選手の生き残りを賭けた気迫から、公式戦と変わらない激しい打撃戦が繰り広げられた。

 初日は山本憲尚と今村雄介が激突。試合後桜庭が指摘したが、今村は安易にタックルに入る傾向があり、山本がタックルを崩しては上になり、パンチを打つという展開が繰り返される。今村は途中鼻血を出すなど苦しい展開。傍らで見守る高田氏からは「山本、チャンス、攻めどころだぞ」「今村、チョーク極まっちゃうぞ」と声が飛ぶ。結局時間切れで決着はつかず、山本がやや優位のまま終了した。試合後は両選手と高田・桜庭が記者会見に応じ色々答えてくれたが、次戦を控えた松井大二郎だけが「あまり今回は何もしゃべりたくない」とナーバスだったのが印象的だった。

 その松井は、9月3日今村と対戦。最近特に練習しているという打撃が冴え、ローで今村の太腿を赤く腫らす。初戦に続き不利な展開となった今村だったが、高田氏から「今村、一本行くしかないよ!」と檄が飛ぶと奮起。松井のローを捕まえてテイクダウンに成功する。押し込まれた勢いで松井は壁に頭をぶつけたほどだった。一度スタンドに戻されるが、今村は再びテイクダウンに成功し、今度はマウントを奪取。松井も終盤は上からパンチを連打し反撃する。結局またも決着がつかないまま終ったが、高田氏は「(巴戦の)成果が出てきているね」と両者の頑張りを評価した。そして「何はともあれ、山本対松井の結果で決まる」と発言。初日はナーバスだった松井も「自分の中で気持ちの整理がついた。今村と山本さんには悪いけど、武士道には僕が出る」と力強く語った。

 そして最終戦の9月7日夕方。高田道場のある武蔵小山の街は、近くの神社の祭りの日ということもあり華やかなムードだったが、道場の中は関係ない。高田氏を中心に、これまで2戦以上の緊張感で道場内が包まれる。山本がテイクダウンに成功するが、松井は下から腕十字で速攻。だが耐えた山本は脱出してバックマウントを奪う。グラウンドで一進一退の攻防が続く。松井は腰の強さを発揮し、山本をブリッジひっくり返す場面も。だがその後、山本がさらにリバーサルに成功すると、サイドポジション、上四方と移動。そして7分過ぎ、肩固めのような形で松井の首を極める。松井はうめき声を上げ耐えるが、脱出できずやむなくタップ。山本が勝利をもぎとった。松井は首が抜けたような状態となりしばらく立ち上がれず、道場生が応急処置を施す。松井は痛みで苦しいが、それでも何度も「クソーッ!」と叫んでいた。

 この結果を受け、高田氏は山本の武士道出場権獲得を発表。山本は「勝てたのは意地の差。まだまだ若い者には負けられない。厳しく言えば、こんなところで争っている場合じゃないから」と早くも先を見据えていた。10月大会ではグレイシー一族との対抗戦が行われる。山本は「選ばれれば出て行きたい」と語ったが、関心は別の方向にあるようだ。「グレイシーとの戦いなら格闘技系のマスコミは喜ぶと思うけど、プロレスマスコミも巻き込もうと思うのなら、プロレスラーとの戦いの方が面白いと思う。新日本、WJもこっちの世界(総合格闘技)に乗り込んできてるから、中西(学)とも意地の勝負をやってみたいし、佐々木健介とも。誰が一番強いか、団体の意地を賭けてやってみたい」と発言。新日本は武士道と近い日に東京ドーム大会があり、佐々木も総合格闘技からの撤退を口にしているため、すぐに交流があるとは思えない。だがそれ以前に、山本の知名度が他の2選手より劣ることが障壁となりそうだ。まずは山本自身が武士道の舞台で、誰が相手であれ真価を発揮し、かつてリングスの次期エースに期待されていた頃のような輝きを取り戻すことが先決だろう。

 同じ釜の飯を喰う選手同士が戦うことは、総合格闘技では事実上タブーである。だが高田道場の前身にあたるキングダムでは、あくまでプロレスの範疇ながらも桜庭と金原が連日激しい打撃戦を繰り広げ、互いの身を削り合っていた。さらにさかのぼればUWFインター、UWFの頃もそうだろう。
 奇しくも今回のPRIDE武士道という大会名は、イスラエルやリトアニアでUインターがテレビ放映された時の番組名「ブシドー」と同じである。高田氏はUWFの栄光を捨て、PRIDE発展のための人柱となり、プロデューサーの役職でREBORNした。そしてPRIDEが名実ともに世界の総合格闘技のトップブランドとなった今、PRIDE武士道の直前に、Uインター直系の高田道場において、「ブシドー」で放映されていたような同門対決を高田氏が再現したことは、単なる偶然だろうか。
 PRIDE武士道とは何か? 単なる日本人選手の育成の場、ヘビー級以外の選手の活躍の舞台にすぎないのか? それ以外の「何か」があるとすれば、そのヒントがこの高田道場の巴戦に隠れているような気がしてならない。10月5日のさいたまスーパーアリーナで、その「何か」が示されるのか、しっかり見守りたいと思う。

Last Update : 09/10

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