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(レポ&写真) [大道塾] 5.11 仙台:藤松“伝説の包囲網”突破!寺本、Stopコノネンコ成功

大道塾 "2003オープントーナメント 北斗旗全日本空道体力別選手権大会"
2003年5月11日(日)宮城・宮城県スポーツセンター

  Photo & Text 井田英登   [→掲示板・プロ総合格闘技全般スレッド]

 <テレビ放送スケジュール>
  ミヤギテレビ 5/24(土)17:00-17:55
  GAORA 6/8(日)21:30〜23:30 6/11(水)18:00〜20:00 6/25(水)10:00〜12:00


【超重量級】

 今年の超重量級は、まさに北斗旗史上最も恐るべきラインナップが揃った。
 前半ブロックには山崎(98,99重量級、01超重量級)、稲田(00重量級)、後半ブロックには長田(85,86,89,92無差別)、清水(02重量級)。まさに「チャンピオンカーニバル」とでもいいたくなるようなこの顔触れは、サンボ仕込みの必殺の関節を武器に、破竹の勢いで初の世界大会を制覇、昨年は無差別と超重量級二連覇を成しとげた最年少のディフェンディングチャンピオン藤松にとって最大の試練となった。

<決勝戦>
 優勝 :藤松泰通(総本部)
 準優勝:山崎 進(総本部)
 再延長戦判定5-0

 
 総本部所属のダブルエースがそろって決勝に駒を進めてきた。現在の大道塾を代表するこの二人が、公式の場で対戦するのは実はこれが初めてのことだという。しかし、一昨年念願の世界王座を目の前で藤松にさらわれた山崎にとって、この対戦で真のエースはまだ自分であることを証明しなければならない。
 毎試合パワー全開の攻めダルマ状態でトーナメントを勝ちあがってきた山崎に対して、藤松は初戦以外の2試合を一本勝ちでクリア。エネルギーをセーブした形での決勝進出だ。

 世代交代を拒む山崎の情念はすさまじかった。
 特有の低い構えで一声吠えると、序盤からトップギアで突進していく。その気迫に押されたのか、ファーストコンタクトのローで、藤松は自分の胴着の裾を踏んで転倒してしまう。この瞬間、「勝ったと思った」と山崎が言い切ってしまうほど、両者のメンタルには落差があった。組んだかと思えば頭突きをぶち込み、投げは崩れたものの、そのまま転がった相手にニーを連打と山崎の一方的な攻勢が続く。仰向けに寝転がった藤松は山崎の足を捕らえ、決定打を浴びないようにすがりつき、テイクダウンしてバックを奪うことに成功するが、場外に阻まれてしまう。
 山崎の攻めに気圧されながらも、藤松は払い腰で再度グラウンドの展開を狙うが、逆に倒れ際に山崎が上をとったために下になってしまいガードポジションで、ボディパンチを浴びてしまう。この2回の展開で、藤松は命綱のグラウンドの権利を失い、スタンドでの勝負を強いられることになる。

 なんとかリードを奪い返そうと打撃戦にモードを切り替えた藤松は、リーチを活かした左フックに強烈なローを連打。一発一発は重い。しかし、正面から山崎と撃ちあう気にはなれないのか、すぐタックルを打ってしまう。このあたり、まだエンジンがかかりきって居ない様子で、その隙をついて山崎が火の出るような頭突きや膝で盛り返していく。本戦では有効も無かったため判定は摂らず、決勝特別ルールで自動延長へ。

 自分を鼓舞するように序盤から豪快なハイを放ち、打撃モードで攻め込もうとする藤松。しかし山崎も遠い間合いではローを飛ばし、組んでは相手を組み潰す形で上を取ってくる。場外に阻まれても、スタンドに戻れば山崎はクジラに襲い掛かるシャチのどう猛さで頭突きでつっかかり、再び大外刈りでテイクダウン。すかさず肩がためを狙ってくる。ブレイク後、藤松も払い腰で豪快に山崎を投げ飛ばすなど互角に渡り合う。パンチの精度、バックスピンキックなども織り交ぜた多彩な攻めの手数や一発の重さなど、打撃モードに転じた藤松に利があるかとも見えた延長ラウンドだが、三者の藤松票に対して主審の延長判定が下り再延長となる。

 気迫を切らさずパンチを飛ばしてくる山崎のブルファイトを突きはなそうと、飛び出して来たところに長目のアッパーを合わせていく藤松。組んでのロー、隙あらば投げてこようとする山崎に、ハイキックを一閃。ぐらつく山崎。しかし畳み込めず、逆に山崎にコカされて袈裟固めにとられてしまう。しかし、場外。一進一退の打ちあいが続く中、次第に藤松の有効打が目立ち始める。わき腹をえぐるミドル、ロングフックに、駄目押しの飛び膝蹴りまで動員して、山崎の突進を正面から受けて立った藤松。ようやく判定はフルマークで藤松に傾いた。まさに山崎の徹底したド突き合い姿勢が、藤松の眠れる打撃の潜在能力を引きだしたような展開だった。

 しかし、その代償は高くついた。
 藤松は試合後、吐き気を訴え表彰式に参加することが出来ず、そのまま救急車で病院に運ばれてしまったのだ。まさに薄氷の二連覇。プレッシャーもあってか、苦しんで苦しんで苦しみ抜いた果てに掴んだ栄冠。やはり「歴史の壁」はメンタル/フィジカルの両面から、若き王者の登攀を阻み続けていたようだ。山崎は北斗旗こそ逃したものの、逆にその王者を破壊したことで、ベテランの意地、そしてタフネスと凄みを見せ付けたことになる。

<準決勝>
 ○山崎 進(総本部)
 ×稲田卓也(横浜北)
 延長判定5-0


 ここでもエグイまでにアグレッシブだった山崎。本戦では山崎の投げを巧妙につぶして打撃の間合いをキープ、三者の支持を取り付けた稲田だが、主審の延長支持で命拾いした山崎が延長では一気呵成の猛攻を繰り広げる。飛び込んでのサブマリンフック。掴みからの頭突き、投げてはグラウンドのヒジと、泥臭くも徹底した打撃攻撃で稲田を突き放し、逆転勝利で決勝への切符を掴む。判定後、稲田に「絶対勝つからな」と藤松狩りを宣言。山崎の気迫はそのまま決勝に持ち越された。

 ○藤松泰通(総本部)
 ×長田賢一(仙台西)
 一本勝ち(腕十字固め)

 
 今大会最大の注目カードといっても過言ではない新旧王者の対決。
 長田は昨年に続く北斗旗復帰だが、伝説のヒットマンも今年38歳。寄る年波に対して、今年の豪華ラインナップのトーナメント参戦は決して楽な選択ではなかったはずだ。一回戦は相手の棄権で不戦勝を拾ったものの、二回戦は昨年の重量級覇者清水といきなりの激突。しかしこの一戦を正面からの打ち合いで撃破したのはさすがだった。伝説の右ストレートからのコンビで効果を奪い、必死に追いすがる清水を下して、藤松戦にコマを進めてきたのは見事としか言いようがない。


 対する藤松は序盤から執拗な組み付きで、長田の打撃を封じにかかる。膝で対抗しようとする長田を、一本背負いでグラウンドに持ち込む藤松。だがマウントを狙ったところで、長田が逆にスィープして上を取る。下からの十字狙いを逃れて、長田が立ったところで場外。スタンドに戻っても組み負けしないベテランの戦いに場内が湧く。膝をぶち込んで崩し、外掛けで再度グラウンドへ持ち込んだ藤松。しかし胴に抱きついた長田はバックを取っている。藤松のフィールドであるはずのグラウンドで、長田が互角に渡り合っている姿に、門下の子供たちからの声援も一層高まる。袈裟固めで押さえ込んだ藤松を再度転がしてバックを取る長田。しかしベテランの頑張りもここまで。回転して、再び上になった藤松は電光石火の腕十字を決めて、伝説の王者を振りきった。

 試合後、笑顔で晴れやかに試合を振り返った長田は、「もう世界大会とか優勝とかギラギラした野心はないですけど、空手修業の一環として、教えてる子供たちにも闘ってるところをみせたいですし、後輩の壁にもなりたいんで、まだまだ闘います。トーナメントはむずかしいかもしれないけど、まだワンマッチとかいろいろやってみたいですね」と平常心での現役続行をアピールしてみせる。左拳の怪我もありほとんどぶっつけ本番に近い状態で大会に臨んだという長田。だが、その気負わず平常心を保ち続ける姿には、“生涯武道家”を心に決めた人間の靭さを見たような気がする。

 通常我々が目にする「プロフェッショナルアスリート」達は、頂点に立った一瞬の輝きを他者の目に焼き付けることで、その生涯を表現しようとする。逆に言えば、美しさのみを追求する、一過性のはかない生き方であるともいえるだろう。だが長田は違った。確かに彼にも華やかな頂点を誇った時代があったのは事実だ。ムエタイ挑戦や北斗旗連覇。80年代後半から90年代前半にかけて、格闘技界には確実に長田時代と言われる時代があったのだ。だが、その真っ只中である92年7月7日のWARSでのポータイ・チョーワイクン戦、そして同年11月の北斗旗無差別級大会優勝以降、一旦長田は表舞台から、姿を消している。

 一方では格闘技ブームと言われ、かつてライバルと目されながら一度も拳を交えることのなかった佐竹雅昭が、K-1の発展とともに時代の寵児としてもてはやされるような時代が訪れた。その間、沈黙を守る長田の胸中にはいかなる思いがあったのか、僕らには知る術もない。いかに静謐な修行の日々を望もうとも、人である以上、心には幾つもの葛藤や誘惑、迷いなどもあったに違いない。だが、あえて20代後半から30代半ばのアスリートとしての黄金の10年間を、長田はイベント格闘技の表舞台から遠ざかった形ですごす事を撰んだ。

 その十年を越え、大道塾が初の世界大会を開催したその一年後、昨年のこの大会で長田は突如として北斗旗に復帰した。時代は流れ、北斗旗ルール自体も変わっている。当然長田自身からもかつてのキレや凄みは薄れた。長田はそんな状況で、10年の沈黙がなかったことのように、現役選手として飄々と大会に参加し、そして敗れた。そして今年も…。


 プロという道を選ばなかった長田には、道場での武道家としての日常があり、そしてさらには社会人として暮らす日常が有る。それらの日常の延長として、大会に参加し、38歳なりの“己の今”を確かめる自由を、彼は手にしているのだ。頂点に立つ姿を商売として“売る”プロフェッショナルアスリートには、それは到底許されない生き様だ。彼らは選手として、衰えを人に晒すことはできないし、弱さでは飯は食えないからだ。常に頂点の存在であろうとし、疲弊し、擦り切れてそして最後は象のように死に様を人に晒さぬよう“引退”という墓場を選ぶしかない。

 だが、一アマチュアである長田は違う。アスリートとして頂点を越えたその先のコーナーをなんの気負いもなく、淡々とゆっくりと下っていく。その姿を後輩達に見せ続ける余裕と、今日の自分を精一杯競技の中で確かめる自由を、彼は満喫しているのだ。この十年の沈黙の代償に、長田は“格闘技を生きる”楽しみを手にしたのかもしれない。

「当たり前ですけど負けちゃうと、今日はもうこの先試合が出来ないんだなあと思っちゃいますね」そうつぶやいて、冴え冴えとした笑顔みせた彼の表情に、僕はその証を見たように思った。長田賢一、38歳。格闘家としての頂点の輝きは失せても、人の生き様としての輝きは、北斗の星のように今も不滅だ。

【重量級】
 <決勝戦>
 優勝 :志田 淳(吉祥寺)
 準優勝:木村 猛(仙台北)
 延長戦判定5-0


 超重量級が“チャンピオンカーニバル”となった余波で、無風区になってしまった感のあるこの階級だが、決勝には次代を背負う20代の地方予選王者同士が顔をあわせる事になった。特に優勝を飾った志田は22歳。一足先に世界王者にまで上り詰めた藤松の同世代が、ようやくまた一人名乗りを上げた事になる。

 リーチで勝り、長いストレートが武器の木村は、突っ込んでくるブルファイター型の志田を若干扱いかねていた様子で、すり足で距離を詰めてくる相手に前蹴りを放つ。しかし、これがいきなり金的になってしまったのは誤算だったろう。回って下がりながら距離を空けようとしても、追いすがる志田はそれを許さない。顔面にパンチを集めた志田の連打を浴びて、その足が止まるシーンもしばしば。本戦こそ明快なポイント差のない場合自動延長とする決勝特有のルールで救われたが、アップアップの展開を強いられた木村にとって序盤の反則ポイントは痛くのしかかる。足を止めて、パンチをかわしながら打ち合いに応じたのも、そうした心理があったからだろう。だが志田の気力は途切れず、最後の一分まで連打を叩き込む運動量の豊富さをみせて、5-0の判定勝ちをもぎ取った。

【軽重量級】
 <決勝戦>
 優勝 :寺本正之(関西)※最優秀選手賞
 準優勝:アレクセイ・コノネンコ(東北)
 再延長判定優勢勝(反則による)


 昨年11月の無差別級大会では準決勝で、優勝者の藤松と互角の戦いを繰り広げて四位に食い込んだ寺本。対するは96、97年のクラス覇者コノネンコ。クラスこそ軽重量となっているが、そのパワーにはやはりロシア人ならではの破壊力がある。世界大会こそ伏兵のババヤンに阻まれたが、やはり現役トップクラスの存在であることはいうまでもない。対する寺本はタイトルにこそ恵まれないものの、昨年の無差別大会準決勝での藤松との激闘は記憶に新しい。関西本部の責任者でもあり、30の大台に乗った今年、現役選手として“結果”を残すことが求められる立場でもある。昨年のディフェンディングチャンピオンで、本命筆頭でもあった若月里木が、二回戦で早々と姿を消したこともあって、この階級での覇権争いは、この二人の争いとなったのは順当な結果といえるかもしれない。

 伸びのあるストレートをフィニッシュワークに、小気味のいいジャブをこつこつ当て制空権を握るコノネンコに対して、寺本はフック連打で距離をつぶし、正面からの打ち合いを仕掛けていく。だが、この日のコノネンコは組んでから、引き込んでの膝十字を仕掛けるなど、かなり総合にシフトした攻撃パターンも身に着けているところを披露する。


 しかし寺本はそんなコノネンコの変化になどお構いなしといった調子で、“無差別の帝王“稲垣を髣髴とさせる掴みからのショートフックや、肘、頭突きなど、短いレンジでの攻撃に冴えを発揮する。セコンドから飛んだ「考えるな!殴ってれば勝つんだよ」というアドバイスもむべなるかなといった戦いぶりである。寝技を得意とする藤松が最重量級の頂点に君臨することもあって、総合格闘技的な側面がクローズアップされることの多い大道塾だが、山崎しかり、稲垣しかり、そしてこの日の寺本の戦いぶりの中には “格闘空手”のひとつの解がある気がした。

 寺本の気迫が抜群であったもうひとつの理由は、一回戦の出来があまりに不本意であったことにもあるという。二面コートの性格上、僕はきちんとこの試合をフォローできなかったのだが、緒戦を煮え切らない内容の判定で逃げ切った形となった寺本は、一回戦終了後控え室でその鬱憤を噴出させて荒れ狂ったと聞いた。逆にそれがアフターバーナーとなったのか、二回戦では三浦を鮮やかな腕十字で切って落とし、準決勝でも世界大会三位の小野を気迫の打撃で押しまくり、倒れこんだところに審判激突のアクシデントも省みず突き連打で一本勝ちと、“タガの外れた猛攻”を見せている。

 延長も両雄あい譲らずの攻防のまま判定。コノネンコ三票に対し主副が引き分けを支持したため同点の再延長となった。延長でも再三見せていた投げが決まって、袈裟に押さえ込んだコノネンコだが、不屈の気迫で追撃してくる寺本とのつばぜり合いが思わぬ反則を生んでしまう。大道塾ではグラウンドでの顔面パンチは、基本的に打ち込まず型による連打の秒数でポイント換算するルールとなっている。社会体育を標榜する立場上、試合翌日にも普通の仕事を持つ塾生が多いため、ダメージの残りやすい頭部への加撃はフルコンタクトに出来ないということなのだろう。しかし、必死に追いすがる寺本を突き放したいというコノネンコの思いが、そのルールを見失わせた。要はグラウンドで、袈裟に捕らえた相手の頭に、ガチンコのパンチをおとしてしまったのだ。ゴツンッと鈍い音が響き、ハッと我に返ったコノネンコ自身も手を止めて覗き込んだ主審の顔を仰いだ。

 白熱した勝負であったが故の瞬間の自失。しかし、ルールはルール。効果相当のこのマイナスポイントが結局勝負を分ける事になった。何より“紙一重”を凌ぎあった事実が、呼びこんだ反則であることは間違えない。寺本はこの勝利に大いに胸を張ればいい。

 しかし、最後まで勝負を捨てず、再延長終盤にも飛びつき十字にトライするなど、持ち前のハードパンチに加えて組技に新境地を見出していたコノネンコだけに、この1敗への逆襲は次の無差別、そして次の世界大会へと引き継がれていくことだろう。新たなるライバル関係の誕生が期待できそうだ。

(追記)超重量の藤松と同じく寺本も、大会後脳震盪と思われる症状で病院に運ばれている。スーパーセーブという特有の“防具”が逆に、頭部に対するダメージを浸透させやすいのは、既に各方面で指摘されている事実でもある。的が大きいことや、ボクシング的なガードが通用しない事もあって、大道塾の選手の一部にはスタンドでの打撃技術、防御技術が「北斗旗専用」に特化している節がある。

長田のように素面の試合を想定した技術を持ったベテランが、試合の中できちんとスウェイやダッキングなど「当てさせない」防御を駆使していた事実を、若い選手はもう一度考えてみる必要があるのではないだろうか。
 

【中量級】
 <決勝戦>
 優勝 :中川博之(木町)
 準優勝:藤本直樹(八王子)
 延長戦判定5-0


 今回中量級の中で特に目を引いたのは、茶帯(一級)ながら得意の関節技で一本勝ちを重ねするするとトーナメントを勝ち抜いてきた八王子支部の藤本の存在だった気がする。超重量級の藤松に並び、10年近いサンボ経験を持つ寝技師であり、寝技重視にシフトしつつある現在の北斗旗を象徴する選手といえるだろう。浦和同好会時代には2001年の体力別で、前年優勝者長谷川を破って世界大会の出場権を手にしたこともある(本業の多忙のため、世界大会出場は辞退)実力者でもある。
対する中川は一昨年の体力別で、加藤清尚を相手に互角に打ち合った経験ももつ空手スタイルの選手。藤本のセコンドにその加藤がついたのも、奇妙な因縁ではある。地元ということもあって、「中川先生がんばれー」と少年部甲高いの声援の声が目立つ。

 試合開始早々強烈なパンチで藤本に襲い掛かる中川。藤本も左ミドルで応戦するが、蹴り足を取られて、倒されてしまう。しかしそこはグラウンド巧者の藤本。すかさず膝十字に取り返してみせる。腰を浮かして脱出を試みる中川だが、アキレス腱固めに取り直す。30秒ルールに阻まれてブレイクとなったものの、これが総合ルールだったらあわやというシーンであった。

 しかしスタンドに戻ればやはり中川に一日の長があるのは事実。突き蹴りの攻防のなかで、中川の右がスーパーセーブにクリーンにヒット。ゴツンと凄い音がして、藤本の膝が落る。この一撃に「効果」が宣告され、シーソーゲームは、一気に中川優勢に傾く。決勝のため自動延長とはなったものの、このまま行けば中川の優勝は固い。

 必死に逆転のチャンスを探る藤本は、組んで外掛け風にテイクダウンして、ポジションを取り返されながらも下から膝十字をねらっていく。しかし粘る中川は逆にバックをとって、寝技地獄を凌ぎきる。極めでは藤本だが、レスリング的なムーブではむしろ中川の方が切れがいいのかもしれない。再度、払い腰でグラウンドに引き込もうとする藤本だが、決定的なシチュエーションを作ることは出来ず。中川の逃げ切りを許してしまった。

【軽量級】
 <決勝戦>
 優勝 :伊賀泰司郎(関西)
 準優勝:高橋 腕(新潟)
 延長戦判定4-0

 
 伊賀は軽量級世界王者小川英樹の薫陶を受けた選手で、昨年の優勝者。しかし、この大会の直前に開催されたモスクワ国際大会に出場、一回戦敗退の憂き目を見ており、この大会にはその失地回復の意味も付け加わったことになる。

 試合は高橋のキレのある左ミドルを中心にした蹴りと、伊賀の投げが交錯する展開。本戦中は両者ともに大きな差をあけることが出来なかったが、延長に入ると、伊賀がほとんど掴んでは投げ、掴んでは投げといった感じで、豪快な投げを連発し、グラウンドでも上のポジションをキープしてパンチを落とすなど試合を支配。優位を決定的にした。

Last Update : 05/15

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