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(レポ&写真) [パンクラス] 2.16 大阪:美濃輪、アルメイダの柔術地獄に完敗

パンクラス "Sammy Presents PANCRASE 2003 HYBRID TOUR"
2003年2月16日(日)大阪・グランキューブ大阪(大阪国際会議場) 観衆:3,150人

  Photo & Report :井田英登  【→大会前のカード紹介記事】   [→掲示板・パンクラススレッド] 




メインイベント ライトヘビー級 5分3R
×美濃輪育久(パンクラスism/2位)
○ヒカルド・アルメイダ(米国/ヘンゾ・グレイシー柔術アカデミー/6位)
判定3-0 (30-29,30-29,30-28)


絶好調宣言とともにグレイシー狩りに出撃した美濃輪だが、アルメイダの柔術殺法に苦汁をなめさせられることとなった。

試合序盤いきなり引き込みでフロントチョークをがっちり極めたアルメイダだが、美濃輪の驚異的な我慢でタップは奪えない。だが、なんとか首を抜いた美濃輪がインサイドガードからパンチを落とそうとすると、アルメイダは手を上げて制し、すかさず折り曲げた右足で美濃輪の左腕を巻き込み、オモプラッタを仕掛ける。「極まってしまうようなことはないんだけれど、どう抜けていいかわからなかった」と振り返るように、がっちり腕を搦め捕られて逃げ場を失った美濃輪は自ら前転し、下になる体勢に追い込まれていたのだ。

こうしてアルメイダにみすみす上のポジションを明け渡す展開が、何度も繰り返される。ブレイクで立っても、アルメイダはすぐ飛び付いて引き込むと、オモプラッタからのスイープを成功させ、上を取り返してしまう。マウントに対してはブリッジで切り返したものの、今度はフロントチョークを取られるといった具合で、美濃輪は攻勢に出ることができない。ニーインザベリーからパンチ、アリ猪木状態での蹴りと、アルメイダは攻めの手を緩めない。防戦一方のまま、3Rを終えた美濃輪は「完敗です。全てゼロからやり直しです」と気落ちした様子。「柔術の弱点は動かなきゃ極められないと思ってて、どっちかといえば護身術なんで後手になるんですよね。菊田選手とかとやってて、攻防を仕掛けたらころっと返されちゃうんで。動かなけりゃいいやとおもってたら、オモプラッタなんですよね。もっと技を研究します」と反省しきりだった。

一方のアルメイダは「五キロの体重差を気にしないで闘った美濃輪選手はすばらしいと思う。次は僕が勇気を見せて五キロ重い選手とやって勇気を見せたい」と余裕のコメント。美濃輪が予告した必殺技“スーパーアームロック”に対しても「いつ仕掛けられるかかなり意識して闘っていたけど、どんなアームロックを仕掛けられても逃げられる“スーパーエスケイプ”を準備していたんだけどね」と笑いを誘う。ただ、次の対戦相手を聞かれると、1月の後楽園大会で同門のジョー・ダースをKOで下した三崎和雄の名前をあげ「彼は対戦相手に尻を向けるという許せない行為をやった。もし謝罪しないなら、僕が階級を下げて彼と対戦する」と気性の激しいグレイシー門下生らしい側面ものぞかせた。

また尾崎社長は「展開はマニアックなんだけど旗揚げ戦のルッテン登場の衝撃を思い出しましたね。“寝技のルッテン”ってかんじで。次はGRABAKA勢の誰か当ててみたら面白いでしょうね」と実力者ぶりを絶賛。今後、外人エースとして起用していく方針を示唆した。

セミファイナル ライトヘビー級 5分2R
△郷野聡寛(パンクラスGRABAKA/4位)
△チェール・シェノン(米国/チーム・クエスト)
判定0-0 (19-19,19-19,19-19)


パワーファイターで、体格的にもひとまわり大きいシェノンは序盤から派手なハイキックを見せるなどやる気満々のところをみせる。対する郷野は距離をとって、カウンターでパンチを返しながら、距離をとっていく展開。だが組み付いたシェノンはコーナーに押し込んで金的に膝蹴りを入れてくる。当初は当たりの浅かった事もあって反則扱いされなかったものの、二度目のそれはもろに股間にぶち込まれ、これには郷野も大きく顔をしかめる。シェノンにはイエローカードが提示される。再開後はそのダメージもあってか、シェノンが差し合いを征して上になるシーンが多くなる。スタンドでもリーチ差のあるシェノンの大振りなパンチを征しきれず、郷野は精彩を欠いたままゴングを聞くことになった。

「勝てる試合を逃した。ああなったときに捌く技術がない。佐々木だったら何とかしたでしょうね」と悔しがることしきりの郷野。「次オファーがあるんでそれをやります。怪我もなかったんで、三週間後なんだけど、気持ちも収まらないんでやってやりますよ」と外部へのスクランブル出動を明かした。


第5試合 ウェルター級 5分2R
○芹沢健市(RJW/CENTRAL/4位)
×ローラン・ファーブル(フランス/フリー)
1R 2'58" チョークスリーパー


タックルを潰してバックに回りスリーパーと、教科書どおりの展開で国際戦を難なく切り抜けた芹沢は、試合後マイクをとる。

「えー、誰も知らないかもしれませんが、芹沢といいます。これ一回やってみたかったんだけど、僕もウェルターランキング三位なんで。応援したい人は応援してください。上の選手とやってみたいんで…国奥選手、伊藤選手、俺の喧嘩を買ってくれ!」とシニカルなキャラの立ったアピールで上位挑戦を宣言。

バックステージでも芹沢のアピールは続く。「パンクラスのホームページで暴露したんだけど、歳も歳なんでね(1969年11月29日生まれの33歳)。やっぱ怪我とか体とか、精神面考えたら今しかないんで次もないんでマイクを持たせてもらいました。格闘技の中ではPANCRASEが一番だと思ってるし、僕もここの一員として、噛ませ犬じゃなくて一員としてやっていきたいんですよ」

一勝一敗、今日でようやく三戦目という状況の自分がランキング三位という、ウェルター級の現状を打破したい意気込みはわかる。ただ、チャンピオンの国奥、そして伊藤はミドル級との掛け持ちであり、実質ウェルターの専業の上位選手は大石一人という状況では、芹沢のアピールも振り上げた拳の降ろしどころがない羽目になってしまうかもしれない。



第4試合 ミドル級 5分2R
×窪田幸生(パンクラスism/9位)
○長谷川秀彦(SKアブソリュート)
2R 3'05" 腕ひしぎ十字固め


1月のDEMOLITIONでは門馬に対戦要求を突き付けたこともあり、にわかに注目度の高まりつつある長谷川。昨年10月のゲート戦出場を経て、いきなりミドル級ランカーの窪田相手にマッチメイクされたのも、期待度の高さ故だろう。

バックを取られても執拗にアームロックを狙ってくる窪田の攻めに、当初ペースをつかみにくそうにしていた長谷川だが、足関節の取りあいになると俄然サンビストの本領発揮とばかりにヒールから膝十字へと繋いで見せ場を作る。また下からの顔面蹴り、踏み付け、膝突きになった相手の頭部へのサッカーボールキックと、えぐいまでの打撃を見せるなど、MMAスタイルへの適応も十分だ。最後はバックマウントからスリーパー、体を入れ換えて下からの裏十字と繋いで奇麗に一本勝ちを決めた。試合後、バックステージでは連戦の疲れも見せず「ウチの竹内さんが、次の大会でチャンピオンになるんで。僕は今年は総合で10試合が目標ですから」と意気軒高なところをアピールした。


第3試合 無差別級 5分2R
○謙吾(パンクラスism)
×奥山哮司(CMA京都 成蹊館)
判定2-0 (20-19,20-18,19-19)


試合開始早々、いきなり顔面に奥山の右フックを浴びて謙吾が腰を落とした。抱きついて辛うじて秒殺を免れた謙吾は、のし掛かってくる奥山を押し返して上になる。ピンチを脱した謙吾は鉄槌を落としていくが、その先が無い。当人も「試合をしてて観客の声援が冷えて行くのがわかった」というほど、決め手に欠けた展開が続く。殴りも中途半端でKOを狙ったパンチではなく、サイドポジションについても極めひとつ狙いにいけない。これが初参戦となる空手家の奥山はともかく、すでに中堅クラスのキャリアを持つ謙吾が、上になっても試合をフィニッシュさせるスキルを持たないことはどうしたことだろう。体格差で辛うじてねじ伏せた相手の上になって、判定では勝利を得たものの、試合としては当人の言う通り「0点」の内容でしかなかった。

外部の血を入れながら着実に世代交代を進めるPANCRASEマットの中で、ぽつんと孤島のように、タイトルにも絡まず外部に打って出る訳でもなく、ただ組まれた試合を漫然とこなすだけという今の謙吾のポジションを象徴するような試合だった。

現状を打破するためにはかなり強力な意識改革が必要と見たが、どうだろう?


第2試合 ウェルター級 5分2R
○星野勇二(和術慧舟會GODS/ミドル級5位)
×冨宅飛駈(パンクラス大阪)
判定3-0 (20-18,20-19,20-18)


旗揚げ10周年を迎えるPANCRASE。旗揚げメンバーの生き残りである冨宅も既に34歳だ。戦績的にも2000年以降白星ゼロ。ちょうど船木の引退以降の外部勢力の参入と新人の台頭が目立ち始めた時期だ。翻って言えば、現在の世界標準であるMMA的技術に対応出来ていないということが、冨宅の黒星街道の原因といっていいだろう。

星野とのレスリング勝負を避けて、飛び付きからのフロントチョークに徹したのがこの日の冨宅の戦略だったが、1R2Rとも首を抜かれて不発。下になってからはパンチを浴びるのみという展開で終わってしまった。

「ボロボロになっていつ消えたんだと言われるような辞め方がいいですね。まだ辞めると決心したわけじゃないですけど」と自嘲気味に笑う笑顔にも力がない。Uの同期生である長井や垣原が新日本プロレスのリングに上がっている事実に触れ「元々、藤原組で海外修業に出してもらったときに向こうで普通のプロレスやったりしてるんで、両方やるというのは抵抗ないんですけど、もうみんなに先にやられてるんで、今更というのもありますね。オファーいただいて会社がオッケーと言ってくれたら魔界4号のマスクでも被りますけど…やっぱりPANCRASEで終わりにしたいと言う気持ちが強いです。後二人、やりたい選手がいるんで、その二人とさえやらせてもらえるならら、もう辞めてもいいんですけど」語った冨宅。いっそ具体的な名前を挙げて、現役最終コーナーへのカウントダウンに入った方が、逆に実現に近づくのではないかという気もしたが、最後までその口から“意中の二人”の名前は出ないままだった。


第1試合 フェザー級 5分2R
○前田吉朗(P'sLAB大阪)
×梅木繁之(SKアブソリュート)
2R 1'29" チョークスリーパー


PANCRASEも今年で旗揚げ10年。今回で108回目の興行になるというが、その中でもこの試合はおそらくぶち抜きで1位に数えられるであろう“笑える試合”になった。


その原動力になったのは、かの“東洋の神秘”矢野卓見をほうふつとさせる、梅木の珍妙なスタンドファイトであった。梅木はやる気のあるようなないような奇妙な酔拳風の構えから、ソバットやバックブローなどの“飛び道具”を繰り出し、前田になかなかリズムをつかませない。しかし、対する前田も2Rになると、「変則には変則を」と居直ったのか、自らもライダーキック風の跳び蹴りを見せるなど、梅木の“脱力系”スタンドファイトの流れを分断にかかる。

すると今度は自分からブレイクダンサーのようにダイビングして足を取りに行く“グラウンド胴回し蹴り”を見せて、なおも変則ファイトを繰り広げようとする梅木。負けじと前田が両手を上げてオランウータンの威嚇のようなポーズを見せると、今度は梅木が太極拳のようなポーズで応じる。まるで大阪プロレスのえべっさんと食いしん坊仮面のような奇妙な意地の張り合いが、真顔で展開する。

しかし、さすがにここはパンクラスのマットだ。前田が、梅木の奇妙なモーションを盗んで顔面にパンチを当て始めると、梅木の虚勢が通じなくなってくる。梅木が背中を向けて逃げようとしたところに飛び付いた前田は、そのままがっちりと子泣き爺いスリーパーで締め上げる。マットに仰向けに崩れ落ちた梅木は、ものすごい形相で白目を剥いて失神。フィニッシュまで“いい味”を貫いた、梅木の負けっぷりが印象に残った。

パンクラスゲート ライト級 5分2R
○藤原大地(P's LAB大阪)
×松井健二(ライルーツコナン)
1R 0'11" TKO (レフェリーストップ:パンチによるダウン)

パンクラスゲート ライト級 5分2R
△武重賢司(P's LAB大阪)
△渡辺智史(総合格闘技道場コブラ会)
時間切れ

パンクラスゲート ウェルター級 5分2R
×上畑哲夫(誠流塾)
○花澤大介(総合格闘技道場コブラ会)
1R 1'39" TKO (レフェリーストップ:スリーパーホールド)

Last Update : 02/17

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