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[訃報] スミット射殺事件に新事実。取り込み詐欺の仲裁が原因か

(8/21 up) 先週、元キックボクサー・ピーター・スミットの射殺事件について本誌では、殺害事件発生当初の地元新聞での報道や、スミットと「チーム・オランダ」を構成するなど交流の深かったカマクラジムのジェラルド&ニコ・ゴルドーらが、独自に警察関係者に当たって取得した情報等を総合してお伝えしたが、その後Boutreview USAに掲載された英訳記事を目にしたオランダ在住の格闘技記者ジェロム・L・M・ウィンタース氏はじめ複数の方から、さらに詳細な状況と背景についての情報提供があった。第一報にあった誤りをお詫びすると同時に、より事実に即した修正版として、以下に再調査した内容をお届けしておきたい。

まず、当初「船上パーティー」でのトラブルと伝えられたスミットの死は、実は「自宅近くの路上」が正しく、「娘の目前で」とされていた犯行状況もどうやら違った模様である(スミットにそもそも娘は居ない)。ネットを通じて流布し始めている殺害現場の写真によって、その状況を確認する事が出来る(→写真)。

また「麻薬絡みのトラブル」と伝えられた犯行動機に関しても、若干違うニュアンスの背景が浮上してきている。文末に掲載するジェロム氏の追悼文にもあるように、引退後のスミットはのっぴきならないトラブルに見舞われた友人の用心棒的な役割を果たす事が多かったようで、少なからず暴力的なトラブルシュートを行う事もあったという。今回の事件でも、スミットは「車と時計をだまし取られた」と訴える友人の代理人として交渉に当たり、犯行現場となった路上で相手側と接触する予定だったという。

犯行現場に現れた殺害犯は、フード付きセーターで顔を隠し、いきなり5発の弾丸をスミットに撃ち込んで逃走。直後に目撃者の通報で駆けつけた警官が凶器のピストルを発見しているが、犯人は未だ捕まっておらず、また上記の取り込み詐欺事件の犯人らとの関連も明らかにはなっていない。

事件から四日が経過した20日(土)には葬儀が行われ、会場には約1000人の友人・関係者が集ったという。

これはオランダに限った話ではないが、引退後の格闘家を取り巻く現状は決して現役時代のように華やかではなく、栄光の頂点を極めた選手が落剥して、犯罪に手を染めるケースも少なくない。スミットの場合もジム経営といった、通常の「社会復帰」の道を見失った挙げ句、培ったその能力をリング以外の場所で揮うことで日々をやり過ごしていたという、悲しい晩年の姿が図らずも浮かび上がってくる。

死者を鞭打つのは我々の意図する所ではないし、スミット銃撃の動機を闇社会との関わりのみに断定するつもりもないが、格闘技術を非合法目的に使う人間に降り掛かった自業自得の末路だったとすれば、これほどむなしい最期もない。今後、往年の名選手の名前が汚名にまみれるようなニュースは、これを最後にと祈らずにはいられない。(井田英登)



【格闘技記者ジェロム・L・M・ウィンタース氏のコメント】

スミットは、奥さんと2歳の息子ブラッドを残して往きました。

現役を引退した後、スミットはスキーダム市にジムを開いていたのですが、共同経営の仲間が投資に失敗。投資ビジネスの実態を、スミットも仲間もよく把握していなかった事が原因です。そのせいもあって1年後にはジムを閉めてしまうことになりました。

その後、他のジムでコーチ業を引き受けましたが、3年前の車両事故で足首を壊しており、なかなかうまくはいかなかったようです。

スミットは陽気で子供のようだったと人は言います。
そんな彼を必要とする人間は、彼に電話をしてよく利用していました。みなスミットの格闘能力を個人的に必要としていた友人たちです。もちろんスミットはいつも友人の希望に応じたわけではありませんが、時々は要請に応じて腕力にものを言わせたようです。

そう。彼は決して聖人君子じゃありません。しかし黄金の心を持っていました。
決して犯罪者ではありませんが、仲間の面倒を見る悪ガキでした。
スミットの真の友人は言いました。スミットは誠実で何も恐れず、
本当の極真ファイターだったと。疑う事なき戦士だったと。





ピーター・スミット射殺される。80-90年代にキック等で活躍

(8/18 up) 90年代初期まで活躍していたオランダのキックボクサー、ピーター・スミットが16日夕方(オランダ時間)、ロッテルダム市内運河での船上パーティで射殺されていたことがわかった。

 スミットは極真空手をベースとし、80年代から90年代前半にかけてキックボクサーとして活躍。ロブ・カーマンやチャンプア・ゲッソンリットとも激闘を繰り広げた。90年には正道会館の第9回全日本選手権に参戦し、一回戦で佐竹雅昭に判定で敗れている。

 引退後は闇社会で麻薬関連の仕事に携わっており、キックの大会で見かけた人の話によると、陽気だった表情が一切消えうせ、まったく別人のような顔つきに変貌していたという。射殺の原因も麻薬絡みの揉め事と言われている。娘の目の前で、アンティル諸島出身の5人組に13発の弾丸を受け即死したという。享年43歳。冥福を祈りたい。

(写真:87年の極真会館の大会の時のオランダチームのスナップ。背後に立っているのがスミット。画像手前から、ニコ・ゴルドー、ジェラルド・ゴルドー、ミッシェル・ウェーデル/提供:オランダカマクラ道場)

Last Update : 08/21 06:56

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