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[File 0006] 西山誠人「今の自分に絶対足りないのは、殺気と気迫」

 
◆団体を背負い過ぎると、ロクなことがない

ーー今回、3/13 MAキック後楽園大会に乗り込み、チャンピオンの木村允選手と戦うわけですが、同じライト級ということもあり、思い入れはいつもより強いでしょうか?

西山「まあ、名前が同じマコトですから。他にも色々似ている部分がありますし。まず名前の漢字が間違われやすい」

ーーまずはそこからですか(笑)

西山「木村選手は『充』や『弁』にされたり、僕も『誠』と一文字だけで書かれたり、チャンピオンなのに間違われやすい。勝った方が名前をちゃんと書いてもらえるようになれば(笑)」

ーーまあ、ファイトスタイルでも肘で強豪相手に鮮烈な勝利を奪うことがあったりと、似ている部分がありますね。

西山「あの肘は自分がよっぽど変な色気を出さなければ当たらないと思うんですけど」

ーー前からよく会場で試合を見ていましたか?

西山「MAは何回か行ってて、木村選手とはいつかやるんじゃないかとは思ってたんで」

ーー改めてビデオで研究は?

西山「ここ2試合ほど見て、やっぱり速いなぁと。しかも手数があってやり辛そうだなぁと」

ーー過去に戦った選手と比べると?

西山「スピードはトップクラスですね。あとサウスポーなところが。僕はプロでサウスポーとやったのは1試合しか無いんで、その経験がどう出るかですよね」

ーーサウスポー対策は?

西山「スパーリングで意識はしますけど、特別なことはやらないですね。昔、増田(博正:元J-NET所属)さんともやってましたし、練習ではその都度その都度やってますんで。手2本、足2本なのは一緒で、その手足から繰り出される技に対応できれば、構えの違いは関係なくなってくると思います」

ーー特別なことはやらず、自分の調整をやるだけだと。団体対抗戦に対する意識は?

西山「ここ何年か、団体を背負うと意識させられる試合が続いているんでね。どこの団体に上がるにせよ、どこの外人とやるにせよ。去年は全日本のライト級トーナメントに乗り込みましたし、MAのチャンピオンとの対戦も井上哲戦、中林勇人戦に続いて3度目ですし。今回に限ってというのは無いです。あんまり意識するとロクなことがないんで」

ーーそれまでは意識していたんですか?

西山「最初の井上選手との試合の時はぜんぜんキャリアが浅かったんですけど、勝手に背負い込まなくていいものを背負い込んでしまって、動きが良く無かったですよね(※01年2月:2R肘によるカットで西山のTKO負け)。もう僕が負けたって、団体が無くなる訳じゃないんでね(笑)」

ーー今のJ-NETWORKは門戸開放路線が定着していて、全日本キック所属のチャンピオンがいたりと(※フライ級の魂叶獅[たかし])、その辺で立場的にやりやすいところもあるかもしれないですね。門戸開放路線自体はどう思っていますか?

西山「新しい血が入ってくることはウェルカムですよ。ちゃんと自分たちの目指している方向性がバックにあって、やりたいことさえ曲げなければ、いろんな化学反応が起きて、いい方に向かうと思いますね」


◆吉本戦の前の慢心

ーー去年の春の全日本キックのライト級トーナメントでは2回戦で敗退してしまいましたが、あの試合で得た教訓はありましたか?

西山「得たものはたくさんありますよね。相手を知っているということもあって(※2回戦で対戦した吉本光志は西山の元同門で、全日本のAJジムに移籍)、油断しているところもあって。あと井上選手との試合からその試合まで、3年ぐらい負けてなかったんですけど、それによって練習への取り組み方でかなり緩んでいた部分があったのに気づいて。今思えば、吉本戦の前は緩んでましたね。1回戦も簡単に勝っちゃって(※湟川満正に1R 54秒 膝蹴りでKO勝ち)、もうちょっと苦戦しておけば良かったんですけど(笑)。
 あと一回戦と二回戦の間にやってみたい練習もあったんですね。でもそれも『吉本戦に勝ってから、次の白鳥戦のためにやろう』みたいな。本当なら思いついたその場でやればいいのに、勝手に頭の中で勝ち星を計算して。体調も悪かったんですけど、悪くても勝てるだろうと思ってて。もうその時点でダメですよね。デビュー戦の頃はリングで死ぬかもしれないと本当に腹をくくって上がっていたのに、それに比べればあまりにもヒドいなと」

ーー試合に慣れ過ぎていたと。

西山「勝った試合でもそれなりに反省することがあったと思うんですけど、こんなもんでも大丈夫だと思い込んでて。あとは試合中、会場の雰囲気に勝手に呑まれて。相手の応援団も多いですし、会場もトーナメントということで異様な盛り上がりで、『あ、これは倒しにいかなきゃ』と自分のスタイルじゃないことをやっちゃったんですよ。いつもならラッシュでいかず、隙を突いて倒すんですけど。倒さなくてもいいシーンで、強引に倒しに行っちゃったりとか、無駄なことを乗せられてやっちゃったなと。色々考えると、負けるべくして負けた試合でしたね」

ーー西山選手が負けたのはさっきの井上戦と、その吉本戦だけなんですよね。吉本戦の後は調整面等でどう変わりましたか?

西山「練習への気持ちの入り方が変わりましたね。その次の7月の試合は、相手が弱くてあっさり勝っちゃったように見えたと思うんですけど(ISKAイギリス・スーパーライト級王者・ロブ・ストーレイに2R 肘でTKO勝ち)、試合に辿り着くまでが大変で。原因不明の咳が止まらなくなったりとか、高熱の出る病気が1週間ぐらいあって、治ったと思ったらギックリ腰に1週間ぐらいなって。気持ちは焦っているんですけど、自分を一生懸命落ち着かせて。『自分はできる』と言い聞かせて。あれは精神力を試された試合でしたね。欠場も考えましたけど、やることを選択して良かったなと。結果うんぬんじゃなく、復帰戦は甘いもんじゃないと思い知る事ができました」


◆「小林選手は別格だと思うんですよ」

ーーキックを始めて10年ぐらい経って、いろいろな状況を経験して、精神的にも鍛えられてきたというのがわかりますが、将来のビジョンはどう考えているでしょう?

西山「対戦相手のいる限りは辞められないですね。ズタボロになるまでは考えていないですけど、ただ、辞めるのは大変だと思いますよ。こんな刺激的なことは」

ーー普通のサラリーマンをやっていたら味わえないですよね。

西山「普段の仕事って結果って見えづらいと思うんですよね。試合のために1、2ヶ月いろいろ我慢して、それで得られる喜びの大きさは、それだけの犠牲をする価値はありますよ」

ーーキックを続けていて、仕事との両立は難しくないですか?(※西山は味の素でアミノ酸の研究職をしている)

西山「大学出て、社会人になった最初の頃はバランスを保つのが厳しかったですけど、最近はある程度ズル賢くなったというか(笑)」

ーー研究職で楽しいことはありますか?

西山「狙い通りに実験結果が出る場合とか、長い目で見て進んでいるのがわかる場合とか、楽しいですね。キックも同じですけど」

ーー仕事がキックにいい影響を与えている部分は?

西山「予定の立て方とかですね。だいたい2ヶ月ぐらい前に試合が決まるんで、どういうスケジュールで練習していくかとか、仕事と似たような感じだと思います。実験がうまくいかなかったり、練習で怪我したらスケジュールも変わりますし」

ーー『対戦相手のいる限りは辞められない』という話ですが、NJKFがJ-NETに参戦したりと、対抗戦の機運がまた高まって来ています。NJKFライト級王者の桜井洋平選手には興味はありますか?

西山「試合は見た事がないんですけど、凄く背があって、日本人の中では圧倒的に強いという印象がありますね。そもそも交流が無いと思っていましたし、元々バンタム、フェザーの選手だったから、守備範囲外でした。普段見に行くのはやっぱり交流のある全日本やMAですから」

ーー全日本の小林聡選手とやりたいという話は以前からされていますよね。

西山「小林選手は別格だと思うんですよ。勝ち負け抜きで、あれだけの殺気をリングに持って来て試合のできる選手は他にはいないと思うんですよ。一選手として、リング上で対峙し、拳を交えた時に、得られる物ってきっと凄く多いと思うんですね。殺気なり気迫なり、今、自分に絶対足りない部分だと思いますんで、それを盗みたいですね」

ーーどんなプロスポーツでも、試合の中で刺激を得る事と、競技の中で一番を目指すことと、モチベーションは大きく2つあると思うのですが、西山選手は?

西山「どっちも強いですけど、一番になりたいという方が強いですね。同じ時代で同じキックボクシングというスポーツをたまたま選んでしまった人たちですから、その中でどこまで自分がやれるのか示したいのはありますね。やってもいないのにあっちの方が強いとか言われるのは嫌ですから」

ーー某誌のランキングでは下の方でしたよね(笑)。木村戦からの巻き返しを期待しています。◆◆◆
 

  聞き手:井原芳徳(2005年2月28日(月)、東京・三軒茶屋のアクティブJにて)
  写真:井原芳徳

  ◆関連記事:木村允インタビュー「亡き友との戦い、モチベーションとの戦い」
  
  ◆ 西山誠人オフィシャルホームページ(アドレスが変わりました)http://www.geocities.jp/kick_nishiyama/

Last Update : 03/10 22:56

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