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[PRIDE.23] 11.24 東京ドーム:(8) 高田延彦×田村潔司

PRIDE.23 11月24日(日) 東京ドーム  [→カード一覧に戻る] [→掲示板・PRIDEスレッド]

第8試合 高田延彦引退試合 1R10分・2,3R5分
×高田延彦(日本/高田道場)
○田村潔司(日本/U-FILE CAMP.com)
2R 1'00" KO (右フック)

 UWFインターナショナルの赤いジャージを着た、先輩の宮戸優光と後輩の上山龍紀らを引き連れ、田村が入場。帽子を脱ぐと、新弟子時代を思い起こさせるような角刈り頭が現れる。一方の高田は、いつものように干支の虎の模様のガウンだが、高田を思わせる青に、田村を思わせる赤が混ざった模様に仕立て上げられている。後方には弟子の松井大二郎と豊永稔の姿が見える。レフェリーはUインター時代と同じ和田良覚。高田と田村はなかなか目を合わせることはないが、ゴングの前後にまるで道場での練習の時ように握手を交わす。

 試合はスタンドでの軽い打撃戦が延々と続く。因縁の対決とは思えない清浄な空気がドームを包み込む。田村はローを集中。全盛期を思い起こさせる高田の右ハイが空を切る。田村の左ローが足払いのようになり、高田はスリップ。猪木アリ状態となるが、田村は攻め込むことなく高田と見つめ合うだけ。和田レフェリーはブレイクをかける。
 左ローをじわじわと効かす田村。だが珍しく放った右ローのつま先が、高田の下腹部を直撃してしまう。「アアゥ!」という声とともにマットに倒れ込む高田。額に脂汗を流し、なかなか立ち上がることができない。田村も悲痛な表情で、ニュートラルコーナーに体を預けたまま高田の回復を待つ。5分近く待ち、両者が向き合うと揃って礼。因縁ムードはみじんも感じられない。

 再開後も田村は左ローを集中。次第に高田の右の腿の裏側が青く腫れ上がっていき、バランスを崩す場面も。スタンド勝負が危うくなってきた高田は、己を鼓舞するかのように田村に突進。パンチの打ち合いになっても、高田の突進は止まらず、田村を倒すことに成功する。
 田村は下から密着し、こう着状態が続くが、しばらくしてリバースに成功。高田は下から田村の腕をつかみ、時々田村の顔に軽くパンチを放つ。田村からは腕をふりほどいてパンチを振り落とそうという意識が感じられない。残り30秒、田村が立ち上がり、高田も立ち上がったところでゴング。

 2Rも田村は執拗に左ローを高田の右腿に当て続ける。このまま1Rのような静かな展開が続くかに思われたが、突然フィナーレは訪れた。1R後半同様、グラウンドに持ち込もうとばかりに高田は突進。右を振ったところで田村のカウンターの右フックが高田のアゴに炸裂。高田は棒切れのようにマットに崩れ落ちた。まるで2本の真剣が交錯し、高田が斬られたかのような衝撃的な幕切れだった。

 リング中央で一人ぽつんと正座して涙を流す田村。しばらく起き上がれずドクターやセコンドらに囲まれる高田。ようやく高田が立ち上がるようになると、田村と抱擁。そして田村の手を高々と上げた。
 マイクを受け取った田村。しばらく考えた後、少しずつ言葉を発し始める。「高田さん、ありがとうございました。そして色々と、暖かい目で見ていただいて、色々とご迷惑をおかけして、すみませんでした。今、正直、何を言っていいか分かりませんが、今日引退される実感がないんですが、最後に22年間、夢と感動を与えていただいて、ありがとうございました。そして、お疲れさまでした!」
 高田もマイクを持つ。「一言だけ。田村、今日はこのリングによく来た。嫌な役をよく引き受けてくれた。田村、お前は男だ!」。そしてテーマ曲の後、「負けた自分が言うのもかっこ悪いですけど、22年間ありがとう。でも、まだ今日は終ってません。最後は桜庭が締めます。ガッツリ応援してください!」。
 高田はリング下でかつての師匠のアントニオ猪木氏の元へ。猪木氏はスーツのジャケットを高田に羽織らせ、記念撮影。そして花道を引き下がり、待受けている桜庭と抱き合い言葉を交わし、花道の奥へと消えた。

<高田延彦・大会終了後記者会見>
「上出来。中途半端な負けではなくて、勝負がついてよかった」

「まず僕から一言いわせてもらいます。話の前に、マスコミの各社の皆さまに22年間お世話になりました。今日をもって戦いをやめる決意で会場に来ましたけれども、まあ無事にじゃないですけど正式に引退ということになりました。皆さま、非常にありがとうございました。」

●試合を終えての気分は?
「気分? (少し考えて)うーん、まあすっきりしたといえばすっきりしたし、やれることはやってきたし…。自分自身では納得してます。」

●22年間戦ってきて最後に、今日の試合の出来はどうでした?
「(きっぱり)上出来です」

●十分燃え尽きることはできましたか?
「そうですね。自分なりに精いっぱいの自分をつくってきて、まあリングの上では何が起こるかわかんないので。まあ相手も活きのいい選手ですし、これからやめていく人間が勝てるような甘い世界じゃないと。まあ勝つつもりで行きましたけど…。改めて最後にPRIDEのリングは厳しいリングだということを再認識できたので、やっぱり俺のやって来たことは間違ってなかったなと。PRIDEは素晴らしいリングだと。そのとおりだと実感できました。」

●田村選手と戦ってみてどう感じましたか?
「まあ、見ての通りですね。彼はオールラウンドプレイヤーだし。打撃もうまいし、グラウンドももちろん巧いですから。まあ、印象というよりも自分のことで精いっぱいで、自分をどういうように動かすかしか考えてなかったですから。それだけですね、ウン。」

●頭で描いていた動きと実際とではどれぐらい違いがありましたか?
「そうですね、自分自身に限界を感じているからやめるんであって、引退試合をあえてこういう形でリングに上がっていくというのは、それだけの覚悟を持ってなきゃいけないし、レベルの高いリングだし。えー(考えながら)さっきも言ったように、まあやるだけのことはやって出た結果ですから、ヨシとしないといけないでしょうね。」

●金的のアクシデントがあったんですが、途中止めちゃおうとかは思いませんでしたか?
「また、止めたらブーイングが来るから(にやりと笑う)。ここは意地でもとね。まぁ3分くれるって言うから、3分の間でも会場の雰囲気が敏感に伝わってきたんで、止めるという意識はゼロです。続けなきゃいけないというか、続けることしか考えてなかったですね。」

●逆に田村選手が気を使ってガンガン来れなくなるとは思いませんでしたか?
「うーん、あれがあったからということではなくて、彼なりに複この難しい背景の中で引退興行の相手に上がってくるというのは、非常にね、勇気がいることだし。ですから…まあ、でもこれもドラマですから。中途半端な負けではなくて、勝負がついてよかったなと思ってます。」

●試合が終わった瞬間の気持ちは?
「終わった瞬間はわかんなくて。なんかセコンドが…。なんだっけ?ラウンドの間かと思ったんだよね。一瞬、周りにセコンドの顔がみえたんで。あれっと思ったら、少し意識が戻ってきて。状況が読めてきたという。」

●フィニッシュの瞬間も?
「全然覚えてないです。」

●22年間は長かったと思うんですが、涙みたいな、感慨みたいなものはなかったですか?
「今、泣いてきた。今、リングでぼろぼろ涙をこぼしてきました。」

●かつてのUインターの同志達に囲まれたってこともあるんでしょうか?
「うーん、それもあるし、PRIDEの最初のヒクソン戦から携わってきた人が今ずっとね、バックステージとか、もちろんドリーム(ステージ・エンターテイメント)の榊原さんとかがずっとあきらめずにお付き合いしてきてくださったんで。その人たちが最後に、お客さんが居なくなったらリングで。「リングを見に行こう」って連れていかれたんだけど、そういうセレモニーがあって、感無量のあまり…。たっぷりと涙をこぼしてきましたけどね。」

●いわゆる10カウントのセレモニーとかは別にされるんですか?
「いや、しないですね。セレモニーは一切ないです。この試合が僕にとってのセレモニーですから。えー、普通のセレモニーが嫌で試合をやりました。」

●試合後、大歓声のなか、どんな心境で花道を歩きましたか?
「んー、そうすね。ぼんやりと…。まあぼーっとしてたんですけども、なんとなく、こう、この花道を…歓声でも、ブーイングでもいいですよ。もうパンツ一丁で歩いていくこともできないなと。改めて実感しましたね。ファンの人たちに手を振ることも、もうできなくなるんだなと。ということを改めて実感しました。でも、悔いは全くゼロです。悔いはありません。」

●最後、花道を帰った時に桜庭選手には何と言われたんですか?
「ま、『後は頼むぞ、最後は締めてくれ』と。あそこまでいって、あの状態で(桜庭は試合直前に靭帯を故障した状態で試合に臨んでいた)どれだけの重圧のプレッシャーを背負ってるか、わかりますから。勝って当たり前の中、今日も鮮やかに決めましたけど、本当に…よくやってくれましたね。」

●あのラストシーンは自分で考えられたんですか。
「イベントの方が。ほんとはね、勝って戻って行きたかったんですけど」

「本当に、ありがとうございました」の一言を残し高田は再び立ち上がって頭を下げた。取材陣も口々に「お疲れ様でした」と声をかけ、インタビュールームを去る高田を拍手で見送った。



◆田村「今日は大きな怪我をする人が出なくて良かったです。試合中は一言では表せない迷いがありました。高田さんは世話になった方であり、憧れていた人。まさか自分が引退試合の相手を務めるなんて思いませんでした。高田さんの引退も、自分が高田さんと試合をすることも、どっちも実感がわかなくて…。勝ち負けじゃない何かのせいで、リングに上がっても葛藤がありました。
 高田さんをUインターの面々と一緒に送り出せて、僕としては満足です。(最後のカウンターは狙っていた?)流れで出ました。関節は微調整がきくんですけど、打撃は0か100なんで。(グラウンドパンチをしなかったのは?)できなかったのではなくて、腕をつかまれて打たせてもらえなかったから。(高田以外になら打てた?)難しいなあ…。僕としてはキレイに勝てたので満足かな、と。」


Last Update : 11/25

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