All Aboutで書いた「誰が格闘技を殺すのか?」シリーズ第一弾「ゴング格闘技休刊の真相」は、ネタのタイムリーさもあって、概ね好評で迎えられた模様。ただ、その後も某誌の若手編集者が懲戒解雇になり、何故かほとんどタイムラグも無しにライバル誌の編集部員として現場に現れただの、出版系業界内部のきな臭い暗闘は相変わらず続いているらしい。正直、うんざりを通り越して、脳が弛緩してしまいそうな話ばかり。いつまでも読者を置き去りにしてバカな事をやってなさいなって感じ。
いずれにせよ、All Aboutで色々業界のシビアな事情を書くようになってから、ただでさえ少なかった業界系の人脈がさらに薄くなったのは間違えない。何か気に食わない事でもあるのか、あるいは君子危うきに近寄らずとご用心なさっておられるのか、会場で顔合わせても、挨拶もしてくれなくなった記者連中の多いこと。アンタ達の事なんか書いた事無いでしょうに、誰に気を使ってるのかね? ホント。このシリーズを続けていくと、多分将来的に我が葬式への業界からの列席者はゼロになりそうな公算。まあ、個人的には願ったり敵ったり、だが。口さがない井戸端会議の陰口の中に、重要なソースが混じっているのも多々ある話で、その入手経路が断たれるのは多少頭の痛い問題ではある。(といいつつ、今月もまた物議を醸しそうなネタを準備しているのだけれど、みなさま、お察しの通りまたもや難航中)。
改めて思うのは、選手の事も、試合の事も一切出て来ない格闘技出版の裏事情を延々書くというこの超イレギュラーな原稿や、危険球満載の「狂犬ブラザース」シリーズを平気で載せていてくれるAll Aboutって、底抜けに間口広いなぁと…もしかしたらホントに社名通り、「全面的にアバウト」なだけなのかもしれないけど(笑)。
まあ会社自体の性質はともかく、間違えなく“茫洋”とした人格が売りなのが、スポーツ担当の社員プロデューサーNくんだ。
前任のK嬢は元雑誌編集者だったこともあって、毎回〆切りで一杯一杯の僕なんかにも早めに追い込みをかけてくれ、原稿取りを確実にこなしていく優秀な人材だった。毎月頭にはこっちの持ちネタを早めに聞き出して、執筆のスケジュール割りをしてくれたり、取材の必要な時には手配もしてくれたりで、なにかと秘書のように先回りをして面倒を見てくれる。だから、担当ライターにも受けがよく、社内異動でスポーツチャンネルを離れる時には、ライター有志による送別会が開かれるほどの人気者だった。
ここで割を食ったのが、某教育系出版社を経て入社したばかりの後任のNくん。大久保の焼き鳥屋で賑々しく開催されたその送別会で初登場し、着任の挨拶とあいなったのだが、いきなり
「僕わぁ、燃えるような原稿をみなさんに書いてもらいたいですぅ」と独特の口調で切り出し、列席したライター陣を悶絶させたのであった。この日集まったスポーツライター諸兄の中には、野球担当の
コモエスタ坂本さんやJリーグ担当(当時)の
小野寺俊明さんら、それぞれの業界で育まれた、批評眼の鋭い人生の達人が揃っておられたから(+無駄に口先だけ極悪に老成したワタクシ)、さあ大変。こんなオイシい奴を見逃す訳が無い。五分と経たないうちに、“言葉の暴力”としか言い様の無いキョーレツな罵詈讒謗の十字砲火が、Nくんめがけて浴びせかけられたのであった(笑)。
そもそも先の発言からも判る通り、Nくんは物言いが大ざっぱで、見るからにポヤッっとした感じがする20代後半の青年。一方、奇しくも三人揃って昭和39年(辰年)生まれと言う我々中年ドラゴン軍団からすれば、「コイツでKさんの後釜が勤まるんかいな」的な懐疑感があった。そりゃ、トグロを巻くなと言う方がおかしいし、火を吐くなと言われても無理。特に事前謀議などはなかったのだが、それぞれが“ここは一発発破をかけてやろう”などという、一方的でおせっかいな“教育的措置”を同時多発させた結果、Nくんには気の毒なほどの“説教の嵐”になってしまったのであった。(まあ、正直なところを言えば、我々のアイドル的存在であったKさんが、結婚と同時に異動というなんともウラヤマ悲しい事態で去って行くと聞いて、中年三人の孤児のごとき心情がNくんへの八つ当たりに変化したのではないか、というような気もするのだが(笑)。)
そんな「悪夢の洗礼劇」が幕開けとなって、Nくんともそろそろ一年半近い付き合いになる。
その間のやりとりで段々判って来た事だが、Kさんが管理やスケジューリングに長けた“秘書タイプ”であったなら、Nくんは書き手とのメンタルな付き合いを優先し、読み手視線で中身に関わる事で持ち味を発揮するタイプであった。〆切り管理のメールより、原稿を書き終わった後の感想文のメールのほうがコマメ。単行本の編集でもすれば、面白い仕事をするだろうなと思える部分がある。当初は、格闘技専業の僕にプロレスラー橋本真也追悼の原稿を書かせようとしたり、ちょっとばかし視点がずれた企画を持って来て頭を抱えさせてくれたが、慣れてくるとそれ自体愛嬌として感じられて、微笑ましくなってくるからマジックである(笑)。
そもそも初対面であれだけ虐められたと言うのに、まったく恨みに感じている気配も見せず、また一生懸命考えたはずの企画をボロクソに言われて蹴飛ばされても、まるで堪えた気配がない。また表情一つ変えずに、同じように寄ってくる。いじめっ子は案外こういうタイプに弱いのである。
実際、打たれ強いし、我慢強い。若干飲み込みや要領は悪いのかもしれないが、その分十倍の誠意で相手に対していく姿勢は、手放しに偉い。(格闘技でもこういう子は、後に伸びたりする。)実際僕が今年初っぱなから二ヶ月ぶっ倒れたときも、コンテンツが年初から空っぽになるのを顧みず、管理部門を口説いて休ませてくれようとしたりした。業績最優先の職業人として、本当はよろしくない態度なのかもしれないが、人としては正しい。そうやって自分の評価を顧みず、ライターを守ろうとする態度を見せられると、こっちも頑張るしかなくなってしまう。
「誰がーー」のシリーズも当初、そこまで身体を張ったものにするかどうか、かなり悩んだのだ。業界批判ものは特に取材が難しい。既に一本目に準備していたネタをペンディングにせざるを得ない状況に追い込まれたりしていたので、のっけからかなり難航したのである。だが、二ヶ月のブランクを笑って許してくれたNくんの気遣いを思うと、ここは意地でも豪速球を投げてみせようという気にさせられて、あそこまで踏み込んだ内容で書くことにしたのである。
実直すぎて言う事に飾りがなく、若干ユルめでもあるので非常に誤解され易いが、Nくん、結構いい奴なのである。
そのNくんと久しぶりに顔を合わせて、昼飯でも食いながら先のプランを練ろうと約束していたのが、週明けの今日の話。ところが、コ奴当日の朝の九時になってから、いきなり携帯にこんな留守電を残してキャンセルしてきやがったのである。
「もしもしぃ、N ですぅ。実は今日のお食事会(マンツーマンの飯にこういうネーミングをしてくるのが、彼らしい)
なんですがぁ…ちょっと昨日の日曜日にー、サッカーの試合に出ていて腰を痛めてしまいぃー、今日は会社もお休みしてしまいましたぁー。また今度と言うことで、よろしくおねがいしますぅーー」
適当に風邪引いたとか言えばイイのに、なんでそんな面白い事情を自分でバラすかなあ(笑)。
留守電を聞いて吹き出したのは、生まれて初めてだ。
この爆笑に免じて許す。
お大事に。