Hideto Ida's Blog 〜 時に放浪、日々朦朧 〜

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03/09  日本一書かない男 /
なんだかんだでこのblogも半年休んでしまった。

仕事でバタバタしている間に、日記が滞るというのは、社会人にはありがちな話。
ただ、書く事を生業の中心に置いている人間のそれは、いかがなものか。

昨今blog関係は、読者の抗議ですぐ“炎上”騒ぎになったりして、業界の方々のそれも開いたり閉じたりで大忙しらしい。ただ、こちとら閉鎖したりお詫びしたりしなきゃいけないような事すら書いていない。半年間、ひたすら自主的な惰眠をむさぼらせていただいた。

無論、半年近く生きていて、大のオトナに“書く事”がなかったと言えばウソになる。
むしろ“書きたい事”は山ほどあったのだ。

格闘技界の話もあれば、それ以外でも山ほどネタはあった。
ただ“書く必然性”があったかと言われれば、また角度の違う話になる。

“書く”事で生じるさまざまな事情を鑑みて、今は書かずに置こう、事態の進捗をただ沈黙して見守ろうという場合も多かった。特に自分が当事者として関わる事柄に関しては、特にその取捨選択が問われる。

結果として、この半年“書く”という行為のプライオリティを下げる結果になった。
半分現場取材を降りたような隠居同様の格闘ライターのblogを楽しみにするような、カルトな趣味の方もあまり居ないとは思うが、もし数名でもいらっしゃったら、伏してお詫びをしておきたい。

この間に、「秋山事件」のような大きな事件もあり、僕も何を書くべきか、あるいは書かずにいるべきかは、いつも以上に考えることになった。考えた帰着は、今All aboutに悩みながら書いている文章として形になりつつある。まだヌルい部分も多いかもしれないが、その中に僕の迷いや苦痛を嗅ぎ取ってもらっていい。とりあえず今回は一本真っすぐな線を引く事に専念して、それ以外は瑣末事でいいと考えている。





正月からこっちというのは、各媒体の動きをいつも以上に見渡した期間でもあった。
うっかりいつもの調子でおっちょこちょいな事書いているなという人もいれば、思わぬ勇気を見せた媒体もあったと思う。こっちはその勇気の背景にどんな思惑があるのか、どんな人間関係があるのかまでも含めて、裏読みの裏読みーーいろんな可能性に脳細胞と五感のアンテナを酷使した。

一種のアームチェアディティクティブ(安楽椅子探偵)のようなもので、実際に出歩く事は少なかったが、その分いろんな人々との情報交換に努めたので、電話代や通信関係に使った時間は厖大なものになった(実際の“議題”は、実は秋山問題だけではなかったのだが)。そうやって推理力を酷使した結果や、いろんな人と話した内容は、書いたものには直接現れては居ないとは思うが、僕の論点を決めて行くための試行錯誤にはなった。今思い返しても、今年に入ってからの二ヶ月弱は、本当に時間とエネルギーをつかったと思う。きっと他の業界人も結構同じような行動をとっていたのではないだろうか。

いずれにせよ、いろんな意味であの事件は、これから格闘技イベント/ビジネスとどう関わるつもりか、また書き手の芯として何を守るつもりかを、全ての書き手/語り手が問われた事件だったと思う。

この結果が半年後、一年後に、また違う地図を描き出す事だろう。

変な例を挙げることになるかもしれないが、ちょうど今から一年前、僕はある格闘技媒体の消滅の事情についてごくごく遠回しな記事を書いた。その結果が、ようやく最近形になったようだ。その会社を乗っ取った暴力団関係者が逮捕され、その出版社の主要雑誌が休刊という流れになったのである。

この事態に至るまでの一年間、いろんな人がそれぞれの思惑で動き、ある部分ではあだ花が咲き、その下で根を伸ばす人も出た。週刊誌や通信社も関わる社会的な事件になったこともあり、いろんな問い合わせも貰ったが、僕自身は、最初の記事以上の事は何も書かなかったし、語らなかった。書いた当初から今の着地点は大体想像がついていたし、それを想定しての記事だったので、僕の守備位置から語る事はもう一切ない。リテラシーのある読者ならあれで十分であろうし、それを読みだせない読者にはあの記事自体退屈なだけだったろう。あえて社会部のエリアで事件の先ゆきを云々するような仕事は、今の僕の任ではない。だから、ただ静かに推移を見守る道を選んだのだった。

事ほどさように、またこの事件から産まれた何かが形になるには、いろいろなエネルギーが水面下でぶつかり合い、着地点を探す事になるにちがいない。もう既にいろんな思惑を持った人たちが、それぞれの着地点を描いて動いているとの噂が聞こえて来てはいるが。何が本当かウソかも、正直判断がつかない。ただ聞こえて来る中身の大半は、個人的にはあまり感心しない動きだなあと思う。

無論、感心する事だけで世の中は出来てはいないので、おやりになるならご勝手に。
着地点がはっきりしたときには何か書くかもしれないが、当面は調べる気にもなれない。




井原も海賊版の方で、今年がBoutreviewの十周年であると書いていたが、この十年間“書く行為”で試みて来た変革への働きかけや現状報告を、最近の僕は別の形でアクションする事が多い。

主にブッキングジャンルでの動きが多いのだが、こちらの仕事では逆に『沈黙は金』となる業が多い。大半の仕事は形になるまで水面下で進められるし、後に発表されることになっても、縁の下の人間は経緯も仕組みも何も語らないのが常。スポットライトを浴びるのはあくまで選手であるべきだと、書き手専業だった頃から主張して来たし、その想いは今も変わらない。

だから余計に書く事が減って行く。
インプットは豊富すぎるほどあるのだが、そのアウトプットにはいちいち慎重にならざるを得ない。結果として、今僕は『業界で最も書かない男』になりつつあるのかもしれない。
でもそれもよかろうと思うのだ。

今僕が現実のブッキング業務やコンサルティングの中で実現しようとしている方向性は、書き手として提言して来た理想の延長線上にあるし、そのベクトルは一つだ。

格闘スポーツが(“特定のイベント”が、ではない)いつか野球やサッカーと並ぶスポーツとしての普及し、コンペティティブで意義深い競技としての地位を築く事。

僕のトッププライオリティはその一点に尽きる。
他の事は、ホントにどうでもいい。
金も名誉もその現実が築かれれば自然とついて来るべきものであって、目標にはなり得ない。
そして、“書く事”でも、“書かない事”でも、その志を曲げた事は一度もない。

僕が書き手を兼任することで自分たちの何かが晒されるのではないかと無用な不安を感じている方も業界には少なくないようだが、「自分に靡く(なびく)人間一色でないと不安なんてなやり口では、いつまでもこの畑は日本中に広まりまへんで」とあえて大阪弁で申し上げておく。

「理」と「義」を備えた人のやる事を邪魔するほど、こちらもバカではないし、仮に品位が低いなと感じる事が多少あっても、イチイチそれを金切り声で指摘する程暇でもない。もっと大きな「義」を軸にこっちは動いているつもり。だから多少のいたずらが聞こえて来ても、いちいちそれを文字にして触れ回る気もない。時間も労力も、そんなつまらない事に費やす気がない。

この場所で起きている事を、最後まで見届けることが、歴史を語るものの仕事だからだ。
瑣末事は心にしまう。歴史になってから語る事はあるかもしれない。だが今は見届け、腑に落ちればいい。文字に残す事には執着しない。一番乗りの栄誉もノーサンキューだし、正義の味方気取りで人気者になりたいとも思っていない。

とりあえず、僕がきまぐれにこんな文章書いてるの読んで、何かバレてるのかなと思って、変な探りを入れて来たりしても答えませんよ。仲間にしてやるから、アレを外せとか、これは俺に寄越せとか、いちいち姑息なアプローチも止めてね。そういうヤクザまがいの要求を聞く耳ねーですから。僕も、そして僕の仲間たちも、仕事は真っ当にやるもんと心得てますんで。

だから、みなさま、ご自分の進むべき道を真っすぐお進みください。
光の当たってる一本道を真っすぐにね。
その道が明らかに曲がっており、ファンや選手がその先に待つ陥穽に気づかなければならないと感じた時に、僕の筆を止める手段はありませんが。そもそも書かなきゃいけないような非道をやらなきゃ、こっちも書くべき事がないってだけの話なんで。

モラルの設定は色々あるでしょうがね、とりあえず、ど真中の“マトモ”でいきませんか。
その限りにおいて、僕は“日本一書かない男”の立場を守りますよ。
これは紳士協定と受け取ってもらって結構でございます。

ただしこれは僕自身のためのルールである。“あなた”との約束ではない。
念のため。




書かない代わりに、別の事を熱心にやってみようかなと思っている。
なにをやるかって? 
それはそろそろ形になるのでお楽しみに。
春なんだし、しかめっ面ばかりじゃ疲れるからね(笑)。


投稿者 井田英登 at 05:03


コメント一覧
kikuzo: ども、お久しぶりでございます。ブログ復活、お待ちしておりました。
武士は食わねど高楊枝と言いますが、サムライを名乗るのなら、矜持を持たねばなぬだろう、と突っ込みたくなる輩が多い今日この頃でございますが、いかがお過ごしですか。
貧すれば鈍する、という言い回しの通りになるものかと意地を張っている今日この頃でもあります。
大事なのは、笑いを忘れぬ事かと。そしてぶれないことですね。

な〜んて言いながら、面白いことがあったら、ミニマムに悪のりしてくださいよ。それでこそ、井田さんなんだしぃ〜。
( on 03/09 at 23:48 )
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