ついに来たかという感じで、フジテレビのPRIDE放映打ち切りが発表された。
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20060605AT1G0503O05062006.html
桜庭の高田道場離脱の時もそうだったのだが、案外この手の噂は早めに耳に入って来る。格闘技プロパーの記者は、逆にその手の“政治ネタ”は耳に入らないのか/聞かないようにしているのか、疎い人が多いのは事実だが。ーーちょっと僕はこのジャンルの書き手として異端なせいもあって、しばしばそんな情報が小耳に挟まってしまう。
既に4月末ぐらいの段階で「週刊現代に載ったPRIDEとヤクザの関係を暴いた記事が、フジの上層部の逆鱗に触れてプロデューサーが呼ばれ、打ち切りが決まった」「8月のトーナメント終了で契約が切られる」「今年は男祭りの放映はないらしい」といういくつかの噂を聞いていた。ただ、所詮それは裏も取れていない流言に過ぎないし、聞き齧りをただ複製して悦に入る趣味もない。書き手としても、そんな安っぽい功名争いをやるより“これから起こる事を見届けたい”という気持ちが強かったので、あえて静観を決め込ませていただく事にした。
だから、6月頭の放送契約打ち切りと言う発表に関しては、「思ったより早かったなあ」という感想しかない。
聞くところによれば、最新の「週刊現代」の関連記事では、PRIDEのスポンサーにいちいち質問を突きつけて「それでも付き合うんですか」と、半ば関係打ち切りを迫るようなアンケートの取り方をしたようだ。榊原社長が、「現代」の記事に対して“訴訟も辞さない”と徹底抗戦をぶちあげたのもあって、講談社サイドは追撃の手をさらに強めたのだろう。正直、喧嘩の場数の問題かなとも思う。大企業や政治家の疑獄から、果てはタレントのデートの隠し撮りに至るまで、大手週刊誌は最初から“訴訟上等”で記事を書いて来るし、訴訟を仕掛けてくれたら逆にネタが増える、ぐらいの感覚なのだ。そんなしたたかな相手に正面突破を試みるのは、ちょっと勇気がありすぎる。
結局、そのアンケートでスポンサーの腰が引けているという現状が浮き彫りにされ、最終的にはフジの態度を決めさせる結果になったとも聞く。兵站線を断つのは兵法の基本。速攻性も高い。ちんたら訴訟を準備している間に、「現代」は電撃作戦で突貫攻撃を仕掛けたわけだ。その手際はお見事と言う他ない。
また、この先、さらに数誌の週刊誌が、「現代」の後追いの記事を出すという話も聞いた。いよいよ、世間的には、本格的にバッシング体制が整いつつあるということだろう。
今後、この一般社会からの“アゲンストの風”が、PRIDE単体へのバッシングで終わるのか、それとも“十把ひと絡げ”で格闘技界全体に対する攻撃にまで発展するのかはわからない。今回は“対岸の火事”ということで高見の見物を決め込んでる他団体だってあると思うが、自分達も、スポンサーに「格闘技関係はヤヤコシイんでしょ?オトモダチになんかなりたくないです」と言われちゃう可能性がでて来たと言う事だけは、肝に銘じておいた方が良い。社会はなにかと“連帯責任”が好きなもんだし。
地上波TV放映の恩恵は、放映権料など金銭面のみならず、知名度の点でも大きかったはずで、今回は、頂点まで高まった観のあるPRIDEの知名度自体が、逆に首を絞める可能性も高い。成功者には当然やっかみ半分の“引きずりおろし”が待っている。事の理非はともかく、正直、PRIDEは相当胸突き八丁の状況に追い込まれるだろうなと思う。
また、もし本当にヤクザ関係者との黒い関係があるのだとすれば、あれこれ言い訳を重ねたりして悪あがきをするよりも、まずそれを自浄して再起を目指すのが肝要だと思う。
リングに上がる選手達やファンたちにとっては、PRIDEというのは、やはり夢の舞台でありステイタスでもあったはず。その基盤となる経済面で、非合法社会の手を借りていたのだとすれば、その夢自体が汚濁の上に築かれた楼閣だったと言う事になってしまいかねない。運営の背景はどうあれ、多くの格闘家の血と汗、そしてファンの期待が集積した8年間/40回を越える大会の歴史が、こういう形で無と化してしまうのはあまりに虚しい。
ここで問われるのは、PRIDE運営に関わって来たスタッフにとって、このイベントが単なる“金儲けの道具”でしかなかったのか、それとも“格闘技というスポーツ普及のための場所”だったのかという意識の問題だ。
TVにもソッポを向かれ、スポンサーも撤退すれば、今のようなとんでもない規模の興行はおいそれとは打てなくなるだろう。そのときに、榊原社長を始めDSEのスタッフは、後楽園ホールやディファ有明の規模から、手弁当で“やり直す”覚悟を持っているだろうか? 借金をしてでも選手にギャラを払って、“格闘スポーツ”を支え、プロモーターとして今後も活動して行く気持ちを持てるだろうか?
今後の推移として見て行きたいものは、むしろ彼らの中の“スピリット”の部分である。
口先で、あれこれ言っても、今は言い訳にしかならないと思う。
当然、「週刊現代」の報道が事実誤認であるなら相応の弁明はするべきだし、訴訟を起こして徹底抗戦するのもいい。それは、DSEと榊原社長の企業防衛面での問題である。応援もしないし、そのかわり誹謗もしない。
ただ、榊原さん。これだけは言っておきたい。
「僕たちは選手たちの熱をファンに届けたい」と言う言葉で“格闘技に愛があるからこの会社を運営しているのだ”と、いう意味の事を言い続けて来ましたね。その言葉が嘘でない事はーーあなたの熱意が見せかけの言葉ではなかったということは、絶対に証明してもらう必要があるんですよ、と。
それが嘘であったのならーー仮にDSEが暴力団と一切関係なく、また今回の報道で言いがかりをつけられただけの一方的な報道被害者であったとしても、この事件をきっかけにケツをまくって逃げ出すなら、所詮、格闘技を金儲けの道具にしか見ていなかったことになる。そうなったら、「夢を見せられただけ」で放り出されたファンは浮かばれない。
アゲンストの風ーーと言えば、今日、奇しくもインサイダー取引の容疑で村上ファンドの村上世彰氏が逮捕されたばかり。彼は逮捕の直前、記者会見を開き、自らの罪に対して言い開きをする会見を大々的にぶち上げ、そして最後には引退を示唆して、その直後に逮捕された。弁明の言葉の真偽は今のところ判らない。ただ、あえて法廷で真実を争うのではなく、時に蛇蝎のように忌み嫌ったはずのマスコミを集めて、一方的な言い分を伝えさせようとした彼の態度は、かなり気分が悪かった。
必要な時には「マスコミの皆さん」と猫なで声で呼びかけ、自分に都合のいいメッセージを広めさせ、都合が悪い時には「アンタ達にはプライバシーの感覚がないのか!」と恫喝して口を閉じる。ーーその二面性自体が、彼の人格の信用ならなさ、そして言動自体に籠った欺瞞を裏付けているように思えてならない。
今回のインサイダー取引疑惑が、彼の言うように“偶然聞いてしまった情報”による事故のようなものなら、現場から逃げるなよ、と思う。どんな職業人であっても、失敗は犯すものだ。それは経験値を積んで行く上での“歩留まり”のようなもの。
他人から多額の金を集め、その利益を代表して仕事をしているというなら、トコトンまでその信頼に応えるために、泥水を啜っても、現場で闘い続けるべきじゃないのか? 一回チョンボを犯しただけで、“腹を切る”と騒ぐのは、一見いさぎが良いように見えるが、単なる敵前逃亡にすぎないじゃないか?
実を言うと僕も、6年ほど前にそんな気分になって、散々“切腹モード”の泣き言を漏らしたことがある。あるから言うのだが。
そのときは、とある取材上の小さなドジを、これまた拡大して言いふらす馬鹿野郎のせいで大事件にされてしまい、業界内で進退窮まった状況に追い込まれてしまったのである。まずそんなドジを犯した自分が許せなくて、また、そしてそこから派生した数々のメンドくさい追求から逃げ出したくて、「僕はもう辞める」という言葉をあちこちで吐き出したものだ。ただ、その言葉の裏には(だからもうカンベンしてくれ)という弱音が隠れていたのも事実。
だが、よく考えれば、辞めなきゃいけないような事はなにひとつやってない。ただ言いがかりをつけられて、その収集が出来なかっただけではないか。なのに納得もできない罰を自分に与えて、それでまた自虐的な甘いヒロイズムに酔おうなんて、ちょっと気味悪すぎる。
煮詰まり切って自問自答を繰り返しているうちに、はっとその“カッコわるさ”に気づいて、僕は目が覚めた。そんなカッコワルい事をやって、次何処に行こうと言うのだ?
そこで僕は、前言撤回と言うさらに恥を重ねて、現場に残る選択をした。
未だに、都合が悪くなると優位に立とうとして「お前は辞めるって言ったじゃないか。今業界に居るのがおかしい」なんて事を言い募るバカも居るけど。こっちはそんなバカに負けないだけの物を6年間積んで来たから、今は一切そんな戯言には耳を貸さない。
この辺の話は、「こんな負け方をしたんなら辞める」と騒ぎ出した某選手にも、最近こんこんと言って聞かせたばかりの話。
自分の退け時は、自分でホントに納得のできる仕事をやり切った時に決めれば良い。
しくじったからって逃げ出す奴は、プロでもなんでもない。お前は気分がいつまでもアマチュアだから、この先まだ闘えるのにそこから逃げ出すことしか考えてないんだよ、と。辞めたいぐらい恥をかいた時に初めて、アマチュアの卵の殻が取れるかどうか、神様に試されるんだよと。
だから辞めるなら、不満もって辞めるな。満足してから辞めろと。
さて、榊原さん、村上さん、あなた達はどうしますか?
あと、ここで一つハッキリ言っておきたいことがある。
PRIDEがどうあろうと、またどうなっちゃおうと、ファンは何も恥じる事はないと言う事だ。
もし仮に格闘技イベントの一つ(あるいは複数の、であっても構わないが)、暴力団の関連企業であったり、その資金調達マシンとして機能していたとしても、イコール“格闘技ビジネス全体の問題”では無いと言う事。もし仮にどこかの料理店のオーナーが殺人犯であったとして、そこで料理を食べた客、あるいは料理店の店員、店に野菜や肉を卸していた業者が、皆共犯とはならないのと同じである。
これからも、自分の好きな物は堂々と好きで居ていただきたい。
バブル人気なんてものは、当然どこかでハジけるものだし、正直、僕自身は早く終わっちまえ、ぐらいに思っていたのである。このジャンルをちゃんとスポーツとして発展させる気のない奴、儲かりそうだから張り付いてるおぞましい奴、プロレスの代替物ぐらいにしか思ってない奴、なんかフンイキ盛り上がってるから混じっちゃえなんて奴、みんな吹き飛ばされてくれれば、少しは風通しも良くなるのに、とずっと思ってたもんで。
そういった猥雑物が居なくなったところで、もう一回すっきり骨格を整えて、世間に出せるだけの肉を付けて出せば、もっと健全なスポーツとして人気がでるのは判ってるのである。今のバブルなんか目じゃない、ちゃんと腰の据わったモノになるはず。
だからブームなんか終われば良いのである。
そのために、バブル弾けてから先、あらかじめ“ここ”に残るメンバーのためにシェルターを作るんだ、つってせっせこ、せっせこやってるのが、今のばうれびなんだし。もう四年も五年も前からその覚悟は出来てるんで。
勝手にハジケてもらって結構なんです、ええ。
なんも問題ないです。
“この先”の事の方が、何百倍も愉しみなんで。