※前回までの腹痛話はちょっとお休みして、今週はWFA取材・特別編をお届け!
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「まだ客は入れるな、まだだと言ったらまだなんだ!」
ハンディトーキーを片手に、こわ張った表情のジョン・ルイスが舞台裏を駆け回る。困惑と焦りの浮かんだその表情は、これまで「悪の華」の異名でクールで冷徹なキャラを売ってきた彼が、試合では一切見せることの無かったものだ。
好試合が続出した前日のUFC34の興奮もさめやらぬ11月3日、ラスベガスに集まったNHBファン達はハードロック・ホテルに詰め掛けた。UFCの開催が金曜であった事を利用して、週末のコバンザメ需要を取り込もうとしたWFA側のプランはズバリ
当たった。
ラスベガスの他のホテルのように定番ショーを持たないハードロックホテルに目を付けて、コラボレーションを持ちかけたプロモーター、ジョン・アレッシオ氏の目の付け所も慧眼としか言い様がない。サブカルチャーの王者であるロック音楽をテーマにしたこのホテルを舞台にしたことで、WFAのお洒落でアンダーグラウンドなクラブイベント的イメージは、がっちりとファンの意識に刻み込まれたはずだ。選手の顔触れも、試合レポートを読んでいただければ判る通り、凡百のローカル大会を遥かに超えた陣容を揃えている。前日一緒にUFCを取材したT記者などは、このラインナップを見て歯がみをながらオランダに旅だって行ったほどだった。
しかし、この盤石の体制にたった一つだけ誤算があった。
開場予定の7時少し前に会場に入った僕は、一瞬我が目を疑った。
通常のNHB大会と違って、WFAはホテル内の2000人収容のライブハウスが会場なので、ケージは会場奥のステージの上に設置される。これだけでも結構特異な風景なのだが、その円形のケージには、まだ半分フェンスが貼られて居ないのだ。
だが、作業員は焦る様子もない。思わず開催日を間違えたかと思ったほどである。なんと業者のミスで、搬入が大幅に遅れてしまったというのである。もちろん開場は遅れ、隣接したカジノには事情を知らないファンが行列を作ることになり、マスコミや関係者までがこの行列に混じるという二重の不手際が生じたのである。
ようやくケージが形を成したのは、本来開演予定時刻だった八時を過ぎたころ。
だがトラブルは終わらない。
この日レフェリーを勤めたラリー・ランデスが組み上がったケージを見て頭を抱える。なんとむき出しのケージには、パットもスポンジも敷設されていない。要するに、選手が直接頭をぶつけるかもしれないケージ底部分や柱が剥き出しの鉄骨のままなのだ。もうこうなると四の五のは言っていられない。業者を急かして、厚手のスポンジと荷造り用のプラスチックバンドを持ってこさせ、スタッフ、マスコミ、総動員体制でのパッド敷設作業が始まる。
客はその光景を目にしながらブーイング一つ飛ばすわけでもない。ふとフェンスの外と中で一緒に一枚のパッドを張り付ていた、レフェリーのラリーと視線が合った。
「It's just Rock'n rolI(まさに無茶苦茶だね)」
「Absorutly, yes ! but show must go on(まったくだ、でもショーはやんなきゃなんないのさ)」
ニヤリと笑ってラリーが肩をすくめる。不思議と腹は立たなかった。新しい何かが始まるときの熱気が僕にもスタッフにもそして客席にも伝わって行ったのだろうか。奇妙な連帯感と、アンダーグラウンドな熱気が会場を満たしていた。
そしてラリーが第一試合の開始を告げたのは午後十時前のことだった。
(関連リンク:本誌掲載の11.3 WFA旗揚げ大会の記事はこちら。)
http://www.boutreview.com/news/data/grappling/1005653804.html
※BoutReview EXpress [Weekly] Vol. 007 (Sat, 15 Dec. 2001) より