Hideto Ida's Blog 〜 時に放浪、日々朦朧 〜

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01/25  唄聴〜うたぎき〜 / [beat & melody:音愕]
久しぶりに山口洋の唄を聴いた。
彼はHeatwaveという硬派なロックバンドを率いる、シンガー/ギタリストなのだが、以前ベスト盤(LONG LONG WAY-1990-2001-)のライナーノートを書かせてもらって以来ずっと、ツアーや折々にライブがあるたびに声を掛けてもらっていたりするのである。

ウチのi-TuneにはHeatwaveの全曲を仕込んであるので、結構な頻度で彼の唄を聞くわけだが、生は去年の秋のバンドでのツアー以来。今の編成になってからは、Heatwave自体非常に順調なようで彼のソロを聞く機会もめっきり減ったが、数年前バンド活動を休止していた時期があって、彼はギター一本で地方を回っていた。僕も物好きに静岡のお寺でのライブとかを追っかけて行ったりしていたので、バンド以外での彼の唄の良さをよく知っている。

決して美声ではない。むしろ鼻声で、広がりで言えばむしろ籠る声。だがシャウターであるにも関わらず、声のコントロールが実に繊細で、ちゃんと言葉の意味がガツンと伝わってくる。一個一個の言葉のニュアンスを大事にした歌い方をするのだ。その辺、多分、楽譜にしようとしてもオタマジャクシに収まりきれないような微妙な表現なのではないかと思うが、そもそも楽譜なんかわかんない僕なので、うっかり言い出したもののその辺はむにゃむにゃむにゃとごまかしておく(笑。

ギタリストとしてはもう既に評価が定まっている彼だが、シンガーとしての魅力をちゃんと判っているイベンターが居たようだ。今日のライブは、山口をメインに小谷美紗子と古明地(フルミョウジと読むらしい)洋也という二人の若いシンガーを配して、アンプラグドのソロでひたすら「唄を聴かせる」というもの。だからタイトルが「唄聴」。

特に小谷美紗子はピアノ一本で腰の据わった歌を聴かせる本格派だと噂は聞いていたので、一回生で聞いてみたかったシンガー。デビュー当時、天才高校生としてかなり話題になって、たしかデビュー曲はラジオとかでかなり耳にした記憶があるのだが、実は一枚もCDは持っていない。

実際、ライブで初体験してみて、自分の不明を恥じる気になった。
「しっとりとした」というよりは「彩りのある」声。
その声が中心にあって、高低/太細のグラマラスな波の満ち引きにただ乗せられているだけで、ぐっと引き込まれる。童話的な柔らかい表現の端々に、おおっと思う大胆な言葉があって瞬間我に返るのだが、また濃密な声の波のウネリに引き込まれて、無抵抗に海中を浮遊しているような感覚に揺られる。

矢野顕子系列でもっと陰影の濃い感じのシンガーって言えばいいか…むしろピアノを弾くUA。いや、声はそんな低くないけど。バネッサ・カールトン? んー、もうちょい深い。

会場の売店に彼女のCDが無かったのが少し残念。
古明地氏の唄は、セットチェンジの間にちょっとのつもりで受けた電話が長引いて聞けなかった。これも残念。

そしてメインの山口だけは聞き逃せないので、強引に電話を片付けて会場に戻る。「今日のキーワードは、俺の気分もあって“情けない”でまとめてみました」といきなりカマして、曲は「Happiness」。

例のライナーでの軸に使った曲でもある。ストーリーのある曲を書かせたら、冴えてる時の泉谷しげるとデッドヒートを演じるであろう山口洋。その中でも、一二を争う名作だ。

都会暮らしの人間のすり切れた日常の疲労感や無力感を、あえてそれすらも生きる上での“Happiness”ではないかと包み込む、シニカルで深い情感に満ちた曲。昨今の自分に相当思い当たる部分もあり、山口の陰影の満ちたゆったりとした歌いっぷりもあって、すごく沁みた。

あえてアコースティックライブのお約束でもある“枯れ具合”を受け入れない、意地っ張り具合もこの人ならでは。ガットギター一本でもロックにしてしまう我の強さ、それでいて「スリーコードかき鳴らしの生き様俺様ロック大魔王」でもない、非常に上質な音楽性も兼ね備えている。ギターの響きのなんと色っぽい事よ。

なんでこういうシンガーをちゃんと王道として受け入れる地盤が無いかな、この国は。ディランがノーベル賞どうよ? ぐらい評価されてるなら、山口洋には野口英世賞ぐらいあげてほしい(あるのか? 国民栄誉賞とかじゃないしさ)。それぐらい評価されるべきシンガーだと思うんだけどな。

※ちなみに、このイベント『唄聴』は27日には大阪でもあるらしいので、チャンスのある人は「心斎橋CLUB QUATTRO」まで。(この際、大阪も行っちゃうか…でも前日のThe SUZUKIとの競演も捨て難いような…29は後楽園で修斗だし…ああっ(悶))




『LONG WAY FOR NOTHING』
Heatwaveの最新作。オープニングの「Still Burning」は、横四方固めで押さえ込んで、無理矢理特大カレースプーンで耳をかっぽじって、耳たぶに洗濯バサミでイヤホンを固定してでも、強制的に聞かせたい人間が数名が頭に浮かぶ名曲。ちょっと負けが込んだぐらいでしょぼくれてんなよ、ボケ!ぐらいの勢いで。

投稿者 井田英登 at 06:27