再加速する才能。 その天賦の才を誰しも認め、間違いなくフェザー級のトップとしての地位を認められた小野寺選手。流麗なコンビネーションで勝ち星を重ね、勢いに乗ってきたところに対ムエタイ2連敗。そして出場停止処分と、思わぬ失速を余儀なくされた。ようやくリングに復活してからも、フェザー級ではNJKFの鈴木秀明選手が一気に台頭、現役ランカーをTKOで破り、ルンピニーでも堂々のKO勝利を上げた。フェザー級の話題が小野寺選手から鈴木選手にシフトしていったことは否めない。 しかし、小野寺選手も前試合ではアタル選手を、スピードあるパンチで見事なKO葬。再び以前の勢いを取り戻しつつある。 そして、今日、現役ランカーのアピワット選手を迎える。ラジャダムナンフェザー級8位の肩書は、再加速するための踏み台としては十分以上。この試合に勝って、鈴木選手に奪われていたフェザー級のイメージリーダーとしての地位も取り戻したいところ。 果たして、スピード豊かなコンビネーションは、現役ランカーをとらえられるだろうか。
果たして、スピード豊かなコンビネーションは、現役ランカーをとらえられるだろうか。
アピワットの回転バック肘。タイ人がこの手の技を使う時は相手を舐めている時だそうだが
そして又ミドル、小野寺完封負
消されてしまった輝き。 やはり、現役ランカーの壁は厚かったのか。左ミドルを中心に、距離をとっての闘いを狙ったアピワット選手の術中に、小野寺選手は見事にはまってしまった感がある。 もちろん、小野寺選手としては、パンチの距離に入ってショートの連打とローのコンビネーションを狙いたかったことだろう。だが、試合では常に後手に回ってしまった小野寺選手。ミドルを腕で受けてから返しの攻撃を出そうとしたが、このタイミングでは、アピワット選手の方は、ほぼ十分な体制が整ってしまっていた。 二人のスピードを比べれば、小野寺選手の方が速いと思うのだが、そのスピードがあってもスタートが切れないから、十分に活かしきれない。距離をとってロングレンジで勝負しようとする相手に対しては、いささか出入りが正直すぎたのかもしれない。 どうも、この一年、小野寺選手の真の輝きが見られなかったような気がする。この試合で、一気に輝きを取り戻したかったところだが、逆に光を消されてしまった。ムエタイへのリベンジは、先送りとなったが、気落ちしていられない。次は、前回引き分けたマサル選手とのタイトルマッチだ。ここで下手な試合をしてしまえば、小野寺選手の前途はますます厳しくなるだろう。願わくば、次こそは、再加速を期待したい。 文 片岡