99･4･25 K-1 REVENGE'99

　K-1にとってしばしば問題になるのが選手の顔ぶれの不足という問題である。K-1はヘビー級の立ち技格闘技に於いて世界最高峰の位置にある。そのため出場を希望する選手は多いが、余りにハイレベルであるためなまじの実力ではコンスタントな選手の枠内に入ることが出来ない。サッカー、テニス、F-1、ボクシング...、現代においては、そのスポーツがメジャーであればあるほどトップテンあたりのメンバーは固定する傾向が強い。K-1トップ陣の顔ぶれがほぼ安定している現状はいわば彼らの実力が本物であること、K-1がジャンルとして整った体裁を持つに至ったことの証明なのだが、その結果メインイベントクラスの試合となるとこうした"お馴染み"同士の対戦が増えてしまうのは、興業としては痛し痒しである。

　そこでプロデューサー石井館長が用いた戦略が"Revenge"。ある意味では格闘技興業の先達であるプロレスの手法を取り入れたこの「復讐劇」仕立ての演出によって、本来「再戦」「再々戦」と続くに連れて徐々に色褪せる同一カードに特殊な意味を含ませた。一度でも闘った選手同士が再び闘えばそこには必ず"Revenge"の要素が絡むことは考えてみれば当然の事情であったのだが、それに"Revenge"というテーマをわざわざ設定することで、大きな流れを持ったストーリーの一幕に化けさせたわけだ。

　しかし３年ぶりの今回のRevengeには、これまでとは一つ違う局面があるように思える。これまで固定したメンバー間で進行していたドラマに「世代闘争」の要素が入り始めているのだ。具体的に言えばアンディ・フグvsレイ・セフォーである。かつて"Revenge=フグ"と言えるほどにこの言葉と切っても切れない関係にあったフグは、しかし常に「Revengeする側」の人として存在していた。そのフグが「Revengeされる側」に回り、そしてその相手はキックボクサーとしては充分なキャリアを持っているがK-1にあってはまだどちらかというと「新興勢力」のイメージの強いセフォーである。K-1の常連になることは至難であるが、その壁を越えて更に"Revenge"の枠の中に入ってくるほどに、真の実力を備えた新たな顔ぶれが舞台に上がり始めている。

「怪物」マット・スケルトンの王者ピーター・アーツへの挑戦にしてもK-1世代闘争としての側面があり、しかもこの試合どちらが勝ってもその結果が新たな"Revenge"の布石になることは必至といっていい。更には３年前のK-1本戦で前年準優勝のジェロム・レ・バンナを敗って実力を証明したにもかかわらず、その後Kの舞台での活躍の場を得られずにいたミルコ・タイガー改めミルコ・"クロ・コップ"・フィリポビッチにとっては、今大会はK-1そのものに対する再挑戦="Revenge"と考えることが出来よう。

　斯くして既に舞台に出揃っていた熟練勢に新鋭達が加わって、それらのメンバーが総出で"Revenge"の死闘を繰り広げたこの大会は、K-1の新たな時代への胎動が垣間見える内容となった。

（高田敏洋 / E-Mail: tak@m78.com）