ムエタイ 9.4 ルンピニー:石井寿来、縦肘で切り裂くも判定負け
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格闘技医学会
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スックギャットペット
2019年9月3日(火) タイ・バンコク・ルンピニースタジアム
記事提供:早田寛 Photo & Text Hiroshi Soda
第9試合 100ポンド契約 3分5R
×ジュライ・エクシンディコンジム[石井寿来](エクシンディコンジムJAPAN)
○ヨードブアトン・ラムナムムンムエタイジム(タイ)
判定
石井寿来がウォーワンチャイプロモーションよりルンピニースタジアム、スック・ギャットペットに参戦した。石井はそれまでタイ2連敗中だったところを、7月30日に参戦したルンピニースタジアムで細かくパンチをまとめ4RTKO勝ちしたばかりだ。そこにルンピニーのギャットペットプロモーションより声がかかり同興行への出場となった。
相手のヨードブアトンは、ウボン県ピブン出身の16歳。現在約40戦の戦績がある。今年よりギャットペット系列のテレビマッチの出場が多く、試合前から「ここで日本人には負けられない」と言った表情を見せた。石井も念入りにウォーミングアップを済ませ気合十分でリングインした。
試合は初回、右ミドルキックを多発するヨードブアトンに、石井は右ローからのパンチで応戦。いつもながら右のローが冴える。
2ラウンド、初回と同じくヨードブアトンは右ミドルしか出してこないが、石井はこれまでの右ローに加え、右ミドルも多用し距離が詰まったところにパンチをまとめた。そんな石井にヨードブアトンは距離を詰め組んできた。
3ラウンド、石井のローが加速し、ヨードブアトンの立ち方が怪しくなってくる。このまま蹴りこめばKO勝ちに繋ぐことはできるのか。だがここで、ヨードブアトンが一気に距離が詰め、首相撲の展開に。膝合戦では互角だったが、石井は首を取られたときに、頭を傾けてしまった。
4ラウンド、このままヨードブアトンの首相撲のペースになってゆくのか…それとも石井のローキックが、さらにヨードブアトンの足を効かせてゆくのか。この第4ラウンドは組んだ時間が長かったが組み合うまでの一瞬の隙に、石井はヨードブアトンの額に縦肘をヒットさせると、ヨードブアトンの額が縦にパックリと切れた。この傷はかなり大きく大出血状態だったものの、組んだ時の体勢の取り合いでは、ヨードブアトンが優勢だったか。この4ラウンドは、どの部分を評価するかによって判定時への優劣も大きく変わってくるが、ムエタイの場合では、組んだ時の流れを通して勝っていたヨードブアトンに分があるだろう。
最終5ラウンド、石井はローキックやパンチで圧し、再度、縦肘打ちを繰り出しヨードブアトンの額をさらに大きく切り裂くことでTKO勝ちを狙った。この最終5ラウンドの流れだけをみれば、試合は石井の優勢にもみえたが、組んだ状態での体勢の取り合いのポイントが重視されやすいムエタイでは、ヨードブアトンが圧勝していた状態だった。石井はヨードブアトンの額を大流血させるも、判定で負けてしまう。
石井の打撃の破壊力や、その精度は既に本場のムエタイでも申し分ない武器として脅威となっているものの、今後、ムエタイでの距離感を掴んでいければ、その後の石井の勝率はさらに伸びてゆくだろう。是非ともこの距離感を身に着け、本来の蹴りやパンチとともに、その強さを見せつけてほしいものだ。
石井より、試合後の声が届いている。「今回の試合は練習でやってきたことを、あまり出せないまま終わってしまい悔しいです。また強くなって次は勝ちます。チャイプロモーター、チャイ会長、日本の所属ジム会長、先生、応援してくださった皆様、ありがとうございました。」