空道 5.26 愛知県武道館(レポ):全日本体力別選手権。宮原穣が260+クラス優勝。柔道出身キックボクサー・鈴木浩佑が-250クラス決勝の大混戦制す。目黒雄太が-230クラス8連覇
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全日本空道連盟「2024 北斗旗全日本空道体力別選手権大会」
2024年5月26日(日)愛知県武道館
レポート提供:編集スタジオとのさまがえる 写真提供:牧野壮樹 朝岡秀樹 全日本空道連盟
空道(くうどう)とは、「空手+柔道」、あるいは「ムエタイ+ブラジリアン柔術」的な着衣総合格闘技。道着と顔面防具を着用し、顔面への頭突きや肘打ち、掌底を含む打撃、投げ、寝技が認められる。例年、春には体力別と呼ばれる、身長センチと体重キロを足した数値によってクラスを分ける階級別大会が、秋には階級無差別の大会が開催されている。この競技においては、この競技のための練習をメインに行う団体「大道塾」の選手が各クラスの優勝を独占するケースが多いが、今回は大道塾以外の団体の所属選手やプロMMA現役選手の優勝あり、極真空手(の一派閥の)全日本王者vs日本拳法出身者の決勝あり……と、バラエティーに富んだ結果となった。
◆260+クラス
極真館主催大会はじめ、極真の名を冠したフルコンタクト空手の全日本大会で、複数回の優勝経験をもち、KWUの世界選手権では、2019年に準優勝している(階級は無差別や85キロ級、80キロ級など)宮原穣(大道塾東中野支部)が空道においても全日本優勝を遂げた。2年前に大道塾での稽古を始めた宮原は、1回戦・石川貴浩(大道塾安城同好会)戦の序盤、テイクダウンに成功した段階で左肩を脱臼したものの、そのまま試合を続け、本戦は効果を1つずつ奪い合って引き分け、延長で旗判定3-2で薄氷の勝利。左腕が使えないまま、決勝では、日本拳法出身の山田泰輔(大道塾仙台西支部)ので直突きと組み技を凌ぎ距離を取ると、強烈な下段蹴りで畳みかけ、下段に意識を向けさせてからの上段回し蹴りで大の字に寝かしつけた。下段の強さと、折れない精神力……フルコンタクト空手を極めることによって得られる成果が総合格闘技系競技において活きることを証明した一戦であった。
左上段回し蹴りで山田を昏倒させ、担架に乗せた宮原。
◆-260クラス
21歳にして12年の空道歴をもつ林洸聖(大道塾佐久支部)と、前回大会(2022年)のこの階級の準優勝者であり、2023年世界選手権同クラス4位の麦谷亮介(大道塾行徳支部)の決勝戦。林は、ジュニアクラス(少年部)出身者にしては珍しく蹴りを多用せず、パンチや頭突きの乱打戦のなかで相手をマットに沈める好戦的スタイル。両者の闘いは延長が終わった時点で、旗2本が麦谷に、旗2本が林に挙がり、主審は引き分けを宣告、大会唯一の再延長戦へ。再延長で右パンチのクリーンヒットとテイクダウンの印象点ですべての旗を得た林が3分×3回の激闘を制した。麦谷はキックボクシング出身ゆえ打撃が巧い分、組み技に穴のある選手だったが、この試合では林洸聖のテイクダウンからキメ突きへの流れをインバーテッドガードで切り抜け、オモプラータに繋ぐなど、トータルファイターへの成長ぶりを感じさせた。「組み技はAACCに出稽古に赴き強化した」と本人。数々のMMAファイターを育てたAACC代表の阿部裕幸氏は大道塾総本部や、大道塾から独立した和術慧舟會グループの道場に在籍し、技を磨いた人物である。一方の林の父親は、90年代前半、“我流”の喧嘩師として空道(北斗旗)に挑み、その時代の王者たちにボコボコに打ちのめされ続けながら挑戦を続けた選手であった。歴史や縁、輪廻といった繋がりを感じる試合であった。
◆-250クラス
昨年、世界選手権でこの階級を制した小野寺稜太(大道塾総本部)の出場がなき中、本命・対抗と目された両者が共に準決勝で敗れる波乱があった。同世界選手権4位の寺阪翼(大道塾総本部)は、アマチュアボクシング出身の中村凌(大道塾日進支部)の右ストレートによって担架に乗せられ、現MAキックボクシング連盟日本ウェルター級王者の小川悠太(誠真会館所沢道場)は、キックボクシングと柔道の実績を併せ持つ鈴木浩祐(格技会)にテイクダウンを奪われ、本戦旗判定4-1で惜敗。ダークホース同士の対戦となった決勝は、打撃においてはパンチで中村、蹴りで鈴木がクリーンヒットを重ねる一進一退の展開の末、延長終了間際、タックル気味に組みつきにいったところを引き落とされ亀状態になった中村に鈴木がキメ突きを放ち、勝負を決めた。
鈴木(青)が下段を効かせれば、中村がカウンター右ストレートで顎を捕える。6分にわたるシーソーゲームが展開された。
◆-240クラス
準決勝。昨年の世界選手権ではー230クラス3位入賞、公務員(消防士)であるためファイトマネーを辞退してMMAプロ競技「修斗」にも参戦、さる4月7日にも勝利を収めたばかりの33歳・谷井翔太(大道塾横須賀支部)は、家弓慎(誠真会館東小金井道場)に膝十字固めで一本勝ち。前回大会22年全日本のこのカテゴリーの優勝者である27歳・伊東宗志(大道塾日進支部)は、U19(高校)全日本優勝を経て北斗旗(一般の)全日本に昇格してきた20歳、佐々木惣一朗(大道塾仙台東支部)から本戦で右ストレートで効果を奪われながら、右ストレートで効果を奪い返し、延長では、再び右ストレートで効果を奪われつつ、左フック、さらに連打で計2つの効果を奪い返す。U19全日本優勝経験のある4名を含め出場選手の過半数が21歳以下というトーナメントにおいて「10年早い!」と言わんばかりに決勝に駆け上がった両者。打ち合い上等の伊東に対し、谷井は離れて中段サイドキック→上段内回し蹴り、時には飛び膝蹴りで奇襲し、タックルで間合いを潰してテイクダウン……と肩透かしを喰らわせるかたちで、ゲームコントロール。延長戦を旗判定5-0で制した。
◆-230クラス
準決勝。2015、2016、2017、2018、2019、2021、2022年と全日本‐230クラス7連覇を達成しV8に挑む目黒雄太(大道塾長岡支部)は、2019U19 全日本優勝の中川昇龍(大道塾岸和田支部)に本戦旗判定5-0で完勝。昨年の春の世界選手権決勝で目黒に敗れたものの、秋の全日本無差別選手権で決勝進出を果たし、成長ぶりを大いにアピールした佐々木龍希(大道塾総本部)は、田中脩斗(大道塾日進支部)との旗の割れる接戦を制す。迎えた決勝、遠くから飛び込んで打ち下ろす大胆なハイキックで先制した目黒は、佐々木が右ストレートで逆襲した瞬間、その勢いに合わせた腰車を決め、佐々木を試合続行不能に追い込んだ。これで目黒は全日本-230クラスV8。開催がない年が2度(2020年=コロナ問題、2023年=世界選手権)あったことを考えれば、10年間、タイトルを保持していることとなる。いったいどこまで記録を延ばすのか?
目黒は、ボクシングでインターハイ出場チームのキャプテンであった佐々木の右ストレートを被弾するや、次の瞬間には首投げ一閃! この技で勝敗が決まった。
◆女子-220クラス
22年全日本選手権決勝では、大倉萌(大道塾吉祥寺支部)が小野寺玲奈(大道塾帯広支部)を下して優勝。23年世界選手権決勝では小野寺が大倉にリベンジを果たし、世界王者に。1勝1敗同士のラバーマッチとなった決勝戦は、ドン・フライvs高山善廣よろしく道着を掴んでの頭突き&右パンチが乱れ飛ぶ、女性の先輩後輩(小野寺が3歳で大道塾に入門したとき、大倉は同じ道場に通う8歳年上の小学生)が争うスポーツの試合としてはあまりに過激な展開となった。大倉は丁寧に前蹴りや右ストレートをヒットさせるが、小野寺は音を立てての左右の掌底フックで効果を奪い、組んでの膝、内股でのテイクダウンで一気に優位に立つ。延長に入っても、襟を掴み遠心力を掛けて相手を振り回してからハイキックを放つなど、豪快な攻めを見せ続けた小野寺が勝ち越しを決めた。
小野寺のプレスを上段前蹴りのカウンターで止める大倉。小野寺はそれでもまったく怯まず、前へ出る。
入賞者、各賞受賞者
◆2024 全日本空道体力別選手権大会
男子
230以下
優勝 目黒雄太 大道塾長岡支部
準優勝 佐々木龍希 大道塾総本部
240以下
優勝 谷井翔太 大道塾横須賀支部
準優勝 伊東宗志 大道塾日進支部
250以下
優勝 鈴木浩佑 挌技会
準優勝 中村凌 大道塾日進支部
260以下
優勝 林洸聖 大道塾佐久支部
準優勝 麦谷亮介 大道塾行徳支部
260超
優勝 宮原穣 大道塾東中野支部
準優勝 山田泰輔 大道塾仙台西支部
女子
220以下
優勝 小野寺玲奈 大道塾帯広支部
準優勝 大倉萌 大道塾吉祥寺支部
最優秀勝利者賞(北斗旗授与):宮原穣
道場別獲得ポイント順位
1位:大道塾日進支部 2位(同点):大道塾岸和田支部 大道塾総本部
◆2024 全日本空道シニア選抜選手権大会
軽量級
優勝 水野栄治 大道塾多賀城支部
準優勝 大貫浩治 大道塾仙台東支部
中量級
優勝 菅剛志 大道塾横浜北支部
準優勝 田中成生 大道塾富田林同好会
軽重量級
優勝 小川哲朗 大道塾筑紫野支部
準優勝 藤原一弘 大道塾名古屋北道場
重量級
優勝 小林悟 大道塾帯広支部
準優勝 江本孝弘 大道塾広島中央支部
超重量級
優勝 平山修 大道塾筑紫野南支部
準優勝 齋藤翼 大道塾多賀城支部
マスターズ
勝利者賞 糸永直樹 大道塾草加支部