- Category: TENKAICHI fight
- update: 2008-08-18 (月) 02:09:23
- by: 井田英登
2008年8月17日(日)Tenkaichi Fight〜Okinawa All sters
沖縄・天下一スタジアム
今年43歳の格闘技界現役最高齢のチャンピオンMr.神風が、27歳の若き挑戦者HIROYAを、有無を言わせぬ一方的な攻撃と鬼神の表情で返り討ちに仕留めた。圧倒的な存在感を見せつけた中年ファイターの闘いぶりに、大会ゲストの伊藤隆氏も『年齢差を知っていただけに、こんなすごい試合をするとは思わなかった。心臓が震えた』と絶賛。賞金目当ての米兵相手に十年間闘い続けた、“琉球鉄拳王”の頑固オヤジファイト開花に魅了された。
一方、神風と並ぶ沖縄のキック界のヒーロー屋比久タケツグは、タイで修行を積んだ新鋭の西村介佑の重爆ローキックに、王座陥落。全沖縄バンタム王者のローズ達也が、J-Netフライ1位の薩摩サザ波を撃破するなど、多くの波乱もあった。
沖縄・天下一スタジアム
今年43歳の格闘技界現役最高齢のチャンピオンMr.神風が、27歳の若き挑戦者HIROYAを、有無を言わせぬ一方的な攻撃と鬼神の表情で返り討ちに仕留めた。圧倒的な存在感を見せつけた中年ファイターの闘いぶりに、大会ゲストの伊藤隆氏も『年齢差を知っていただけに、こんなすごい試合をするとは思わなかった。心臓が震えた』と絶賛。賞金目当ての米兵相手に十年間闘い続けた、“琉球鉄拳王”の頑固オヤジファイト開花に魅了された。
一方、神風と並ぶ沖縄のキック界のヒーロー屋比久タケツグは、タイで修行を積んだ新鋭の西村介佑の重爆ローキックに、王座陥落。全沖縄バンタム王者のローズ達也が、J-Netフライ1位の薩摩サザ波を撃破するなど、多くの波乱もあった。

第10試合 キックルール 全沖縄ヘビー級タイトルマッチ 3分5R
○Mr. 神風(神風塾/王者)
×HIROYA(WILD SEASAR/1位)
3R 終了時 T.K.O.(試合続行不可能)
※神風が王座防衛
『鬼気迫る』という言葉が、この日の神風には一番相応しいのではあるまいか。
彼が本土でこれまで公式に闘ったーーコウイチ・ペタス、アレックス・ロバーツ、岩下雅大らとの三戦では、ガードの手堅さばかりが目立ち、これといった攻撃力を見せる事の出来なかった印象が有る。かつてAll Aboutのコラム用に語ってくれた過去十年間喧嘩自慢の米軍兵相手を毎週のようにリングに上げ、脅威の“200戦無敗”を誇ったという“琉球鉄拳王”時代の逸話も、そうした中央での試合の後ではどこか色褪せた部分があるのを、正直感じていた。
だが、この日の神風にはそんな幻想感ではなく、現役格闘技選手としてリアルに強く、そしてなにより“怖さ”を感じさせる威圧/威厳があった。
口を真一文字に引き絞り、静かな狂気すら感じさせる思い詰めた眼光が、花道の奥を歩んで来る段階からオーラのように発散される。己の王座を奪い取りに来た、親子程も歳の違う若い挑戦者に対する反感か。あるいはこの試合の前に“討死”した弟分の敵討ちの想いか。心に秘めた思いが毛穴から立ち上って来るような、濃厚な空気感となって神風を包み込んでいた。
事実、この日の試合では、これまでの彼が見せて来たスタイルとは一転したものを見せてくれた。
以前は、沖縄の格闘技イベントの大半を占める基地のアメリカ兵を意識して、“やられ役”的な場面を作るのが、彼の試合のスタンダードであった。そして、ある程度不利な空気感を作ってからカウンターで応戦→逆転K.O.という、カタルシスを人為的に作ろうとするのだ。また、その“ストーリー”が、格闘技に疎い米兵には一番ウケるのだと、当人も確信犯的に語って来たものである。
無論、ショーマンシップ的要素が強すぎて、真剣勝負としてはリスキーなスタイルではある。また、中央に進出して、テクニックの高い選手相手にした場合、このスタイルでは通じない部分も出て来る。特に“後半の反撃”の部分を封じ込まれてしまい、“ただタフなだけ”と思われてしまったのも事実。
だが、この日の神風の姿勢は、180度逆のベクトルを志向していた。本土での三戦の“負け戦”を経て、かなり思う所があったのだろう。相手の攻撃を徹底して“受ける”のスタイルはすっかり鳴りを潜め、まったく新しい“神風スタイル”が姿を現していた。
彼が新たに選んだ“型”は、徹底して武道的で攻撃型、かつ客に媚びる要素は微塵も見られないストイックなものだった。グローブ位置は胸元のクラウチング。まったく表情の失せた、冷酷な眼光で相手を睨めつけ、丸太を叩き付けるようなローキックを放つ。びしん、と肉の爆(は)ぜる音が場内に響き渡る。コンビネーションやステップワークを一切考えない、一発一発に渾身の力を混めたーーキックと言うより生足同士のフルコンタクト空手のような、武骨で生々しい蹴り。
小賢しい技術論で解剖して行けば、ムエタイ流の柳のようにしなる蹴りの方が利く。腰の回転を十分に活かしていないから、無駄な力が入っていて“ダメな蹴り”だなどと、言われかねないような一発だが、そんな小理屈はゴミ箱に捨ててしまいたくなるような、“人間力のこもった”一発一発が、客席を自然とヒートアップさせて行くのが判る。
思わず気圧されたか、HIROYAは巨体を揺らしてステップを使い逃げにかかるが、ぐいぐいと押し迫る神風の“闘気の壁”が、それを許さない。 善くも悪くも、一発のパンチの威力でこれまでK.O.を積み重ね勝ち進んで来たHIROYAだが、これだけ徹底的に“怖さ”を全面に押し出した神風の攻撃を前に、完全に“飲まれた”感がある。正直、挑戦者として“役者が違う”という感は否めない。3R中盤に見せたヒザへカウンターの右フックなど、単発のクリーンヒットはあったものの、神風の攻勢を削ぐまでには至らなかった。
しかし、勝負を決めたのは、そんな武骨な一撃の積み重ねではなく、相手の隙をついた切り返しの一撃だった。嵐のような攻勢の最中、ロープ際でHIROYAの退路が失われた瞬間、くるりと神風の体が沈む。後ろ回転蹴りだ。剛剣をかいくぐったと思えば、その影からすっと小太刀が突き出されるような、油断のならない鋭さで神風の踵がHIROYAを襲う。
剛と思えば柔、生真面目で居ながら繊細、そして不器用を押し通すようでちょっとしたスマートな遊び心をポケットの奥に忍ばせる、Mr神風という選手の不思議な二律背反性(アンビバレンツ)を象徴する技かもしれない。腹への決定打は免れたものの、ガードした左の二の腕に良い角度で食い込む。たまらず、マットに崩れたHIROYAは、四つん這いで痛みをこらえる。カウントアウトこそ免れたものの、結果論で言えば、この奇襲攻撃でHIROYAの腕は戦闘不能に追い込まれることになる。
結局、HIROYAは、3R終了時に自軍コーナーに戻ると左上腕部に痛みを訴え、ドクターチェックの後、試合続行不可能でT.K.O.負けとなった。
王者へのベルト返還の後、リングサイドでこの試合を見守ったスペシャルゲストの伊藤隆氏が、神風の防衛を祝福しリングに上がる。写真撮影の後、あの普段クールな伊藤氏が、まるでロックフェスティバルに初めて参加した十代の若者のように、興奮冷めやらぬ様子で絶賛の言葉を連ねたのが、筆者には非常に印象的だった。
「大会が始まる前に神風選手と話したんですけど『まだまだ若い奴には負けないところを見せますよ、見ててください』って言ってて。正直、神風選手の年令は知ってたし、相手はひとまわり以上若いって聞いてホントに大丈夫かなとも思ったんですけど…こんなすごい試合をするとは思わなかった。心臓がバクバク震えましたね。ああやって攻め続けるのは、年齢的にスタミナの問題もあって絶対シンドイはずなんだけど、少しも集中力が切れた感じも無かったし、なんかオーラがありました。今の格闘技って、みんな技術的には上手いんだけど、技術技術って言っても、こういう強い気持ちで、どんな事があっても負けないぞ、どうやっても相手を叩き潰すんだ、みたいな試合はなかなか出来ないじゃないですか。格闘技の芯にあるのは、やっぱり喧嘩魂みたいなもので、そう言うものを見てファンはみんな力づけられるものだから。今日みたいな試合を東京でもやってくれたら、きっと同じ世代のひとたちがなんか感じるんじゃないですか。僕も38歳で選手復帰はもう無理ですけど、選手育てるのとかでまだまだがんばらなきゃと思いましたね。勇気をもらった気がします」
まさに、この試合が伝えたものをすべて言い表した発言だったと思う。
テレビでも放映されない、日本の南端の島のたった400人の観客の前だけで公開され、そのまま消え去ってしまうには惜しい試合だった。中央の格闘技界では、既に“消費期限切れ”の烙印を押された形の、この中年格闘家にもう一度その本領を発揮するチャンスを与えるプロモーターは居ないのだろうか? もし、そんな“神風”が吹く機会が訪れたら、この恐るべき43歳は、何か今の格闘技界から抜け落ちた、大事で、そしてとんでもない光景を見せてくれるのではないか、そんな新たな“神風幻想”がむくむくと膨れ上がってならないのだが。
第9試合 キックルール 全沖縄ミドル級タイトルマッチ 3分5R
×屋比久(陽明館/王者)
○西村介佑(Tenkaichi Stadium/ウェルター級1位)
判定0-3 (46-50/46-50/46-50)
※西村が新王者に

メインで闘ったMr.神風と並んで、沖縄を代表するキック選手として活躍して来たのが、屋比久タケツグだ。アウトボクシングと切れのいい蹴りを武器に、天下一武道会はもちろん、同じ沖縄を舞台にする『かきだみし』『沖縄格闘技連盟』、あるいは遠く神戸の『Accel』などにも登場。一昨年には『RISE』のDOAトーナメントにもエントリーされ、一回戦敗退となったものの、優勝者の龍二に「一番厳しかったのは、一回戦の屋比久選手」と言わしめた実力の持ち主。またルックスも、東京在住の選手であったなら、おそらくファッション雑誌が飛びつかずにはいられないようなクールなイケメンでもあり、長く沖縄で抜群の存在感を放って来た。
対する西村は、長期タイのKRSジムに住み込み30戦ものムエタイ経験を重ねて来た若き実力者。178センチの身長に、屋比久と並ぶと同階級には見えない程の筋肉の厚みをかねあわせており、ビジュアル的に屋比久が華麗な闘牛士なら、こちらはそれを突き殺さんと猛る“猛牛”の精気を放っている。王座を脅かすには十分の挑戦者といえるだろう。
序盤から屋比久は体格差を考慮して、得意のアウトボクシングで相手を翻弄しようとする作戦を伺わせたが、この日の彼は通常からすると明らかにスピードがなく、アッパーやボディ打ちを織り交ぜた一見多彩なパンチも、正確さに欠けており、体重の乗り切らない半端な踏み込みが目についた。またパンチ偏重のコンビネーションもバランスが悪かったことは否めない。結局、その不調を立て直せず、これといったダメージを与えられないまま、ラウンドが進む。その間ひたすら打ちつづけられた西村のローが、王者の左腿に確実にダメージを刻んで行く。あのクールな屋比久がローを貰うたびに端正な表情を苦痛にしかめるようになり、その左足が次第に身体を支えられ無くなっていたのは、誰の眼にもあきらかであった。
スリップとはいえ尻餅をついたまま、しばし立ち上がれなくなった姿を見て、これがあの屋比久タケツグかと、我が眼を疑ったファンも居ただろう。実質、西村の方は、そうした屋比久の自滅を他所に、強烈無比な右のミドルとローだけで王座をもぎ取った形だ。タイ仕込みの切れとパワーを兼ね備えた蹴りは、鉈の威力を思わせる。今後、彼に対する挑戦者は、皆この蹴りに苦しめられることになるのではないか。
一方、王座陥落した屋比久にも同情すべき点はないではない。実はつい一ヶ月前の7月13日『かきだみし』で、難敵三苫純次を相手に3Rを戦い抜いた直後でもあり、その疲労とダメージを持ち越してしまったのかもしれない。いずれにせよ、これまでの輝かしい実績がかすんでしまうような、醜態を演じることになってしまったのは事実。このまま“ガラスの王子”として砕け散ってしまうのか、それとも今回の敗戦を払拭してみせる活躍をみせるか。今後真の力量が問われる事になる。
スペシャルエキシビションマッチ キックルール 2分2R
−我龍真吾(ファイティングマスター/M-1&WMAFミドル級王者)
−MINOタイガー(多和田道場/全沖縄ミドル級5位)
勝敗無し

第8試合 MMAルール 65.8kg契約 5分2R
○田上洋平(闘心/全沖縄MMAライト級3位)
×Suspect(Tenkaichi Stadium/全沖縄MMAライト級5位)
1R 2'15" 腕ひしぎ十字固め
第7試合 キックルール スーパーフライ級 3分3R(延長1R)
○ローズ達也(WILD SEASAR/全沖縄バンタム級王者)
×薩摩サザ波(TARGET/J-NETWORKフライ級1位)
4R 判定2-1(10-9/9-10/10-9)
3R 判定0-0 (30-30/29-29/29-29)
第6試合 キックルール 全沖縄ウェルター級次期王座決定トーナメント準決勝 70kg契約 3分3R(延長1R)
×神谷 勲(ファイティングマスター/全沖縄ウェルター級2位)
○クレイジーテル(WILD SEASAR/全沖縄ミドル級3位)
3R 2'31" KO
※勝者テルがウェルター級1位にランクイン、決勝進出
エキシビジョンマッチ MMAルール 3分1R
−風間一太郎(闘心/全沖縄MMAミドル級1位)
−熊澤伸哉(闘心/全沖縄MMAライト級1位)
勝敗無し
第5試合 MMAルール 65kg契約 5分2R
○MASAFUMI(チーム仲村)
×SOARES (Team Dynasty)
1R 0'42" フロントチョ—ク
第4試合 キックルール 階級差スパーリングマッチ 3分3R(延長1R)
×神風シン(神風塾/全沖縄ヘビー級5位)
○MATT(WILD SEASAR)
判定1-2 (20-19/19-20/19-20)
第3試合 キックルール 57kg契約 3分3R
×友麻(ファイティングマスター)
○櫻木(Tenkaichi Stadium)
2R 2'07" TKO (レフェリーストップ)
第2試合 キックルール フェザー級 3分2R
○松山リキヤ(赤雲会)
×武貴(Tenkaichi Stadium)
判定2-0 (20-19/19-19/20-18)
第1試合 キックルール 68kg契約 3分2R
×名嘉リキ(赤雲会)
○マッハサトシ(多和田道場)
判定0-2 (19-20/20-20/19-20)
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