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和術慧舟會の碓氷、亡き師に捧げる勝利

TENKAICHI fight
2008年6月15日(日) 沖縄・天下一スタジアム
 和術慧舟會東京本部・守山竜介代表の急死から一週間後、遠い沖縄の地で一勝をあげた弟子の碓氷早矢手は「守山さんに言われた事は忘れない」と語り、バックステージで涙を浮かべた。


第9試合 メインイベント 総合格闘技ルール 65.8kg契約 5分2R
×熊澤伸哉(闘心)
○碓氷早矢手[うすいはやて](和術慧舟會RJW)
判定0-3
※碓氷が全沖縄ライト級MMA暫定王者に

 休憩までの六試合、いわゆる大会前半戦の総試合時間は、二十分強。

 キック戦こそ二試合がフルタイム判定となったものの、総合二試合はいずれも一分に満たない秒殺K.O.。大会前半戦は、よくも悪くもあっという間に終了した感がある。実力差の大きいマッチメイクにはしばしば生じてしまう、大味でゴツゴツした派手なK.O.劇が続くことになった。

 この日も天下一スタジアムをびっしり埋めたアメリカ軍関係の観客は、格闘技の細かい技術はあまり気にしない客層。むしろストリートファイトの延長線上で知り合いがリングに上がり、派手に勝つ姿を見てカタルシスを感じるタイプ。例えば第六試合のように、柔道着を着た日本人選手を、黒人のマッチョ兵士が完膚なきまでに叩きのめす展開では、さぞかし溜飲をさげたことだろう。しかし、技術のせめぎ合いや息飲むような緊張感——要するにどちらが勝つか判らないという、格闘技本来の“コク”を求める向きには、若干薄味が過ぎる展開であったとも言えよう。

 だが、後半戦に組み込まれたMMAマッチ二戦は、一転濃厚な攻防を織り込んだ、格闘技本来のファンむけの“旨味”あふれる試合となった。その「本格派」の空気感を持ち込んだのは、間違えなく和術慧舟會とコブラ会という本土の東西のMMA名門ジムから送り込まれた二人の選手の活躍が大きい。


 特に、メインを勤めた碓氷は、熊澤が遮二無二仕掛けてくる低空タックルを落ち着いて裁き、上のポジションをキープすると、パウンド、ハーフから肩固め、相手が亀になれば腹固めと切れ目無い攻撃を仕掛けて、見せ場を作っていく。普段なら、仲間の試合が終われば席を立ってしまうことも珍しくないアメリカ人観客にも、その切迫感が伝わったのだろう。ほとんどの客が固唾をのんでリングを見つめている。それらの技がどう利くのか理解はできなくても、熊澤の必死さや苦悶の表情から、碓氷の攻勢は十分理解できたにちがいない。ほとんど感情を表に出さない碓氷のクールな風貌と相まって、その攻撃がまるで闘牛牛を攻めたてるマタドールのようにも感じられるのも、観客にとって良かったのかもしれない。(事実、開始二分で、大会直前の練習で割ったと言う熊澤の側頭部の傷から大流血があり、さらにその印象は深くなった。)

 だが、地元の看板を背負った熊澤も、簡単に仕留められはしない。袈裟で組み敷かれながら、柔軟な関節と持ち前のパワーを利して碓氷の下を抜け出し、上下を転じて碓氷のバックに回りこみスリーパーを仕掛ける。碓氷はそのまま熊澤を背負って立ち上がり、自ら背中からマットへバスター。落とされた瞬間を突いて、熊澤はスリーパーを、碓氷は反転を狙うが、両者が向き合った瞬間に、熊澤は下からの腕十字を仕掛ける。前回のアレッシャンドル小川戦に続いて、カウンターサブミッションの一発逆転を狙った熊澤だったが、これは形にならず。ラウンド終了のゴングを聞く。


 お互いに牽制のハイを打ちあって開けた第二ラウンド。熊澤は再びタックルを仕掛けるが、倒しきれずバックに付いたままコーナーへ。コーナーに頭を付けて堪える碓氷を左右に振って、反動でテイクダウンに成功する熊澤。前ラウンドの続きのようにバックに張り付いて首を伺うが、碓氷に手首を掴まれてしまい締めにいけない。逆にパンチを振られて横ターン。再び上になった碓氷のパウンド攻撃が再開される。腰を引いて横へ抜けだそうとすると、パスされ腹固め、単体のアームロックと、再び1R前半の碓氷の極め攻勢が再現。なかなか熊澤は思う試合をさせてもらえない。ようやく、終了一分前にバックを奪い返してスリーパーを狙うが、極らないまま試合終了。判定は三者を碓氷を支持。今大会から天下一スタジアムでの試合に運用されることとなった、全沖縄MMAランキングでは、この試合結果を受けて、碓氷を暫定王者に。そして熊澤のこれまでの実績を加味して一位に認定する事になった。





 さて、純粋な試合レポートとしてはこれで幕となるが、この日は、思わぬカーテンコールがあった。ぞろぞろとアメリカ人観客が立ち去る中、普段寡黙な碓氷が珍しくマイクを取ってこんな言葉を口にしたのである。

 「僕に総合格闘技を教えてくださった、守山さんと言う方が先日亡くなりました。そのためにも今日はどうしても勝ちたかったので、勝てて良かったです」と。本誌でも既報ではあるが、この大会の丁度一週間前、和術慧舟會のコーチとしても知られる、守山竜介氏が不慮の事故で亡くなっている。沖縄への移動時も、特にその影響を感じさせず、極々平静に準備をこなしていた碓氷であるが、実はこの試合を亡き師に捧げる試合と位置づけていたらしい。

 そう言えば、判定結果が告げられた直後、碓氷は天を仰ぎ、祈るようなポーズを見せていた。バックステージで、その件について聞くと、碓氷は最初軽く笑った。

 「あれはカッコつけです。カッコつけました」
 だが、すぐ真顔に戻って、こんな言葉がこぼれて来た。

 「でも守山さんに言われた事は忘れないですよ。まあ細かい技術的な事が残ってるますけど…それはあんまり言いたくないけど。でも『いつも動き続けろ』とか、基本的な事は染み付いてるし、なにより守山さんに褒められた事とかは忘れないです」

 語るうちに、いつもは無表情な彼の目から涙がこぼれ、まだ吹き出して止まらない頬の汗と混じり合う。

 「この涙もカッコ付けっぽいんですけど…」
 そんなシニカルな言葉で、自分の涙を笑い飛ばそうとしながら、まだ流れる涙を我慢できず、碓氷は一瞬天を睨み、そして静かに手で顔を覆った。
 
「みんなそうだと思うんですけど、まだ実感持てないんじゃないですか? …こういうのって(嗚咽しつつ)…こういうのってクサいのかもしれないけど…もう会えないかもしれないんだけど…守山さんに言われた事は忘れないんですよ。ホントに守山さんに褒められた事とかって、うれしくて。それがうれしいから慧舟會に通ってたってのがあって…。褒められたいから、僕は練習できたってのがあるんですよ。…でも良かったです。こういうの喋れるのも、勝ったからっていうのがあるからだし。本当に沖縄に呼んでもらってよかったです」

 人は死を境にして否応無しに引き裂かれる。
 その離別を、“運命”のひと言で片付けるのは容易い。
 
 時間の否応ない奔流の中で、生者はただ先へ進むしか道を持たない。歩みを止めるのは死者のみだ。別れも告げずに消えた死者を記憶の彼方に葬るか、あるいは「記憶」という形で活かし続けるのか——その欠落の処理法は、常に生者の課題である。

 めまぐるしい攻防の連続となったこの試合中、碓氷は亡き師の「動け、動け」という声を幻聴し、背中を押されていたはずだ。碓氷が、そして多くの守山氏の弟子たちが、その声に従って闘い続けるかぎり、彼は見えないセコンドとして、いつもリングのコーナーに立ち続けるのだ。


第8試合 キックルール ミドル級 3分3R(延長1R)
×TIM CID KRUREX(神風塾/全沖縄ミドル級4位)
○神山真人(赤雲会)
判定0-3 (28-29/26-28/26-28)

※1R、TIMにダウン2回あり
※神山は全沖縄ミドル級キック2位にランクイン

第7試合 総合格闘技ルール 65.8kg契約 5分2R
−田上洋平(闘心)
−尾松 賢(総合格闘技道場コブラ会)
判定0-1 (20-20/18-20/19-19)
※判定内容は主催者預かりで審議中



第6試合 総合格闘技ルール 95kg契約 5分2R
×神風リュウ(神風塾奄美支部)
○MIKE(TENKAICHI stadium)
1R 0'10" TKO (レフェリーストップ)
※MIKEは全沖縄ヘビー級MMA5位にランクイン

第5試合 キックルール ウェルター級 3分2R
○JUICY(WILD SEASAR)
×イナズマトオル(多和田道場)
判定3-0 (20-19/20-19/20-19)

第4試合 総合格闘技ルール 70kg契約 5分2R
○阪本洋平(闘心)
×ILL WILL(Team Dynasty)
1R 0'54" TKO (レフェリーストップ:スタンドパンチ連打)
※阪本は全沖縄ミドル級MMA5位にランクイン

第3試合 キックルール 60kg契約 3分2R
×司(WILD SEASAR)
○メウ・デン(赤雲会)
2R 2'42" KO (ローキック)
※メウ・デンが全沖縄フェザー級キック5位にランクイン

第2試合 キックルール 70kg契約 3分2R
○Jeke(Tenkaichi stadium)
×よっかー(公民館)
1R 2'31" KO (パンチ)

第1試合 キックルール 75kg契約 3分2R
△MICHIO(WILD SEASAR)
△CHRIS(赤雲会)
判定1-0 (17-17/18-18/20-18)

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