Home > REPORTS > Elite > キンボ、代役ペトルゼリに14秒TKO負け

キンボ、代役ペトルゼリに14秒TKO負け

HEAT (CBS EliteXC Saturday Night Fights)
2008年10月4日(土/現地時間) 米国フロリダ州サンライズ・バンクアトランティックセンター
 YouTube生まれの喧嘩屋・キンボのKO負けは、その後のペトルゼリの爆弾発言も含め、全米で大きな話題に。気になるアフリクションとの協力関係、高橋洋子の好勝負が日本の女子シーンに及ぼす影響についても分析した。
  • report by Fernando Avila (BoutReview USA)
  • photo by Tomi Casino / Elite XC


第10試合 ヘビー級 5分3R
×キンボ・スライス
○セス・ペトルゼリ
1R 0'14" TKO (レフェリーストップ:グラウンドパンチ)

 試合当日正午少し前に、ケン・シャムロックが、宿泊先のクラウン・プラザ・ホテルに設置された仮設トレーニング上でウォームアップ中、バッティングで目の上をカット。それでもシャムロック本人は試合出場を希望したが、6針縫われた左まぶたをみてフロリダ州ボクシング・コミッションのドクターが「本来ならば45日の出場停止」の負傷とみなしストップ。シャムロックにとっては無念の欠場となった。

 代わって第4試合に出場予定だったセス・ペトルゼリがキンボと対戦。開始すぐ、いつものように突進してきたキンボを、ペトルゼリが前蹴りで突き放しつつ右フックでダウンさせると、上からパウンドを連打して簡単にキンボを料理した。喧嘩屋キンボはMMA 4戦目にして、あまりにもあっけなく初黒星を喫した。

 ペトルゼリは04年にK-1参戦で来日し、ボブ・サップからダウンを奪いながらも負傷によるTKO負け。だがその後は名門のATTで力をつけ、TUFシーズン2に抜擢されてUFC参戦も果たしていた実力選手だ。オクタゴンの中で揉まれて、バリバリの現役ファイターとなったペトルゼリは、今は総合の試合でもキックで学んだ回し蹴りなどが自由に出せる器用な選手。ライトヘビーではトップ戦線にそろそろ喰い込めるのでは、という位置まであがってきていた。シャムロックの代わりにペトルゼリがで出ると発表されたとき、控え室にいる多くの関係者たちが「シャムロックよりも勝てる可能性あるのではないか?」と話していたが、その通りの結果となった。

 この試合、キンボのファイトマネーは50万ドル(勝利賞は10万ドルだった)で、ペトルゼリは5万ドルに勝利賞1万5000ドル。急遽キンボと試合をしたにしてはちょっと少ないのでは、という声があがっていた。すると週明け月曜の朝、フロリダ州オーランドの104.1FMの「Monsters in the Morning Show」に出演したペトルゼリが、「グランドにはいかないで打撃で勝負する」という条件でエリートXCからエキストラのフィーを貰ったと暴露した。しかしエリートXC側はそれを全面否定した。

 今回の“番狂わせ”は、ESPNニュースのその日のトップ・プレー・ベスト10で、プレーオフ真っただ中のMLBの多くのファインプレーを押さえて6位にランクされるほど、アメリカの一般スポーツファンの注目を集めた。本来なら解説のフランク・シャムロックが言っていた「これがMMAだ!」というすっきりとした結末でなくてはいけないのに、後味の悪い展開がいまでも舞台裏では続いているようだ。

 さて、ケン・シャムロックの方は、CBSでオンエアされたインタビューでは「計量のときに背中を向けるという無礼なマネをしたキンボと本当に闘いたかった」と話していたが、エリートXCでの今後については、大会後の記者会見でファイト・オペレーション担当のジェレミー・ラッペン氏は「いまの所はどうするかは考えていない」と発言。44歳のシャムロックにとって、今回のキンボ戦以上に露出度の高い試合が今後組まれることがあるのか。それを考えると、今回の怪我は、シャムロックのこれからの残り少ないプロファイターとしてのキャリアを考えると、大きなターニングポイントになってしまったように思える。


第8試合 ヘビー級 5分3R
○アンドレイ・アルロフスキー
×ロイ・ネルソン
2R 3'14" TKO (レフェリーストップ:右ストレート)

 元UFC世界ヘビー級王者アルロフスキーと、今年活動停止に追い込まれたIFLの世界ヘビー級王者ネルソンとの対戦は、アフリクション提供試合。というと、いかにもエリートXCとアフリクションが大掛かりな「反UFC連合」を組んだかのようにみえるが、その見方はまだまだ時期尚早だ。
 そもそも、過去数年のアメリカのMMA業界をみても同じような前例がいくつかある。UFC以外のアメリカのメジャー団体は、ストライクフォースとエリート、またはストライクフォースとボードッグファイトといったように、所々でゆるやかな共同作業を行うことは多い。
 アルロフスキーもネルソンも、「今年中に試合を組まないと選手側が一方的に契約を解除できる」という項目が、アフリクションとの契約にあるという。10月大会を来年の1月に延期したアフリクションにとって、エリートXCは二人の試合を消化し契約を続行する場としても、自社のアパレルブランドの宣伝の場としても、格好の舞台だった。
 CBSの中継にもアフリクションのテロップが入り、ケージのポスト、そしてキャンバスにもアフリクションのロゴが入っていたが、これはただ単に、アフリクション・エンターテイメントがこの試合の両選手のファイトマネー(アルロフスキー50万ドル、ネルソン8万ドル)を全額負担し、バーターで求めた広告スポット露出にすぎない。
 前回7月のCBS中継の視聴率がよくなかったプロ・エリート社にとって、ファイトマネーを一銭も出さずに、元UFC王者と元IFL王者の闘いがエリートXC大会で実現するのだから、決して悪くないディールだ。試合後エリートXCのファイト・オペレーション担当のジェレミー・ラッペン氏が「MMAのプロモーションはお互いに協力しあい成長していくべきだと思う」と明言していたように、今回はプロ・エリートとアフリクション両社の利害が一致したから実現した提携試合であって、今後どのように両プロモーションの関係が発展していくかは「我々プロ・エリート側もまったく読めない」という状況なのだ。
 アメリカの一般社会での知名度という点ではほとんど無名のジョシュ・バーネットやベン・ロスウェルのような選手に出しているファイトマネー(それぞれ30万ドルと25万ドル)を、5500万ドルの赤字を抱えているプロ・エリート社が出すとは思えない。つまりWFAの選手契約をUFCが買収したようなディールもあり得ないと断言してもいい状況なのだ。

 さて、肝心の試合だが、元UFC王者・アルロフスキーの強さだけが印象に残る圧勝劇となった。元々レスリング出身のネルソンの得意分野はもちろん寝技である。1R、胴タックルでネルソンが組み付いた所にアルロフスキーは反り投げを仕掛けるが、グラウンドに行った瞬間、トップをとったのはネルソンだった。そこからサイドポジションをキープするとアームロックを仕掛けるが、これはアルロフスキーが体を動かして防御。それでもハーフガードからアームロックにこだわるネルソンだが、なかなか極められず、ポジションもパスガードをすることができないので、レフェリーががブレイクを命じる。
 スタンドで再開後もネルソンはアルロフスキーをケージに押し込みテイクダウンを狙うが、アルロフスキーはボディへの膝蹴り、そして離れたところで左右のパンチをヒット。ネルソンがフックを放ちながら再び組み付いたところでラウンド終了。
 2Rも同じように組み付き、ケージにアルロフスキーを押し込むが、ネルソンの攻撃はここまでだった。首を切ったアルロフスキーはそこから体勢を入れ替えるとハイキック、ストレートを放ち、首相撲からの左膝蹴り、そして左右のフック、アッパーと一気にラッシュをかける。ネルソンはこの猛攻は凌いだが、次にアルロフスキーが出した右のストレートをもろに喰らいダウン。すぐさまレフェリーが試合を止め、アルロフスキーの完勝に終わった。


第5試合 女子148ポンド契約 3分3R
○クリスチャン・サイボーグ
×高橋洋子
判定3-0 (30-26/30-26/30-27)

 日本人としてShoXCではなくエリートXCに初出場を果たした高橋洋子。対するクリスチャン・サイボーグは、前回7月26日のCBS中継大会で、シャイナ・バズラーをボコボコにして衝撃のエリートXCデビューを飾った、いまの世界女子総合ではジーナ・カラーノに続いて一番注目されいている選手だ。現在戦極に参戦しているエヴァンゲリスタ・サイボーグの妻でもある。
 試合前「サイボーグの試合は観たけど、一回だけです。一度観たら、あ、技術うんぬんよりも気持ちで負けてはいけない相手だと思ったので」と語っていた高橋は、初っ端から打撃戦を挑む。シュートボクセを象徴するかのようなファイトスタイルのサイボーグもこれには真っ向から応戦。試合はいきなりパンチとキックが交錯する激しい打撃戦となった。

 正確さとパワーで勝るサイボーグは1R序盤から右左の強烈なフックを高橋の顔面にヒット。試合後「星がみえた」と語っていた高橋だが、一歩も下がらずにパンチとキックで応戦する。それでもパワフルに攻めてくるサイボーグ。強烈なフックでダウンを奪うと上からパウンドの嵐。しかし高橋もこれを耐えると足関を取りにいき、そこから何とかスタンディングに戻す。

 その後もパワーと手数で押され気味だった高橋だが、サイボーグの強烈なハイキックを顔面に喰らい、倒れながらもタックルにいく。もつれるようにサイボーグの足をとると何とかグラウンドで上になり、ここからパウンドを数発落とすが、サイボーグは下からの腕十字を仕掛ける。これを上手く防御した高橋はスタンディングに戻ると、再びパンチとキックで前に出る。もちろんサイボーグもこれに応戦。男子顔負けの大打撃戦だ。1R終了時、この日バンククアトランテックセンターに集まった9000人近いファンは総立ち。殴られても蹴られても決して怯まずに前に出る高橋をファンは支持する。

 2Rも同じ展開が続く。サイボーグの荒っぽい右左のフック、そして強烈な右のハイキックを顔面に貰いながらも前に出る高橋。このラウンドもサイボーグがパンチとキックで高橋を圧倒していたが、どんなに打撃を貰っても喰らいついてくる高橋に対して、いつになったら倒れるんだ!?という焦りがサイボーグの表情にみられるようになる。3Rに入ると大きく肩で息をしだしたサイボーグ。高橋は距離を詰めて、パンチ、裏拳などをヒットさせるが、サイボーグも負けじとパンチで応戦。高椅はそれを受けながらも前に出る。最後はケージにサイボーグを押し込み手刀なども繰り出したが、ここで試合終了。サイボーグの大差の判定勝ちとなった。

 この日文句なしのベストバウト演じた二人の女子選手たちにはファンはスタンディングオベーション。しかもどちらかというと、ファンの声援はサイボーグの打撃をもろに喰らいながらも常に前にでて攻撃し続けた高橋に集中。その「ハートの強さ」をアメリカのファンが認めた瞬間だった。マスコミも大絶賛し、CBSのブログでも「真のウォリアーだ」と絶賛されるなど、この一戦でその名はアメリカのMMAファンの知るところとなった。

 世界のMMA業界は物凄いスピードで進化しており、それは男子だけでなく女子も同様だ。しかし、パイオニアである日本の女子MMAは、業界が停滞状況にある影響で、優秀な選手達がその実力を存分に発揮する機会が減っている。そんなタイミングで、1996年に初めて総合の試合を行った大ベテランの高橋が、アメリカのファンのハートをがっちりと掴んだのは特筆に値する。コンピュータに例えれば、興行という「ハード」が苦境でも、選手という「ソフト」の優秀さがアメリカでも認められたようなものだ。

 これまで、アメリカでジーナ・カラーノがブレイクしたと言っても、FFFのようなローカル大会が定期的に開催されていると言っても、しょせん海の向こうの話題ということで済んでいた。しかしエリートXCというメジャーの舞台で、日本でお馴染みの高橋が、野茂やイチローのようなパイオニアになれば話は違ってくる。さらに高橋がアメリカの興行で重宝されるようになれば、「よし、私も」と触発される日本の女子選手が増えるだろう。

 今後、日本の女子MMA興行が活力を取り戻すには、単に大会という場を維持するだけでなく、人材流出を防ぐための対策も、これまで以上に必要となる。日本国内のマーケットだけ意識していても何とかなった以前とは、確実に時代が変わりつつある。その分岐点として、高橋対サイボーグが後々評価されたとしても不思議ではない。


◆主な結果

第9試合 EXC世界ウェルター級タイトルマッチ 5分5R
○ジェイク・シールズ(王者)
×ポール・デイリー(挑戦者)
2R 3'47" 腕ひしぎ十字固め
※シールズが防衛



第7試合 女子140ポンド契約 3分3R
○ジーナ・カラーノ
×ケリー・コボルト
判定3-0 (29-28/30-27/30-27)



第6試合 ミドル級 5分3R
×ムリーロ・ニンジャ
○ベンジー・ラダッチ
2R 2'31" TKO (レフェリーストップ:グラウンドパンチ)

Home > REPORTS > Elite > キンボ、代役ペトルゼリに14秒TKO負け

 - PR - Martial World presents Gym Village
Gym Village でジムを探そう!
Gym Village おすすめジム

府中ムエタイクラブ
京王線「東府中」徒歩30秒
見学、無料体験歓迎!

さらに詳しく

おすすめジム欄へのジム広告掲載について